紫音の少女

柊 潤一

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ゾロの登場

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「この指輪は、本来ハシバ家の血を引く男性が身に付ける物です。封じ込めた力は、もうほんの僅かしか残っていませんが。ですからこれは・・・」

 紫音は、ゼルダに向き直った。

「ゼルダ、あなたが身に付けて。いまもう一度、私の力を石に込めるから」

 紫音はそう言って目を閉じ、石にゼルダの身を守る力と、能力を引き出す力を封じ込めた。

 そしてゼルダに渡し、ゼルダはそれを左手の薬指にはめた。

「それでは、紫音には改めて妻の物から選んで貰うとするか。妻のお古ではお嫌かな?」

「いえ、とんでもない。私には勿体無い位ですわ」

「そうか、貰ってくれるか。妻も喜んでくれるであろう。それからゼルダよ・・・」

 ゼルダは、紫音をじっと見つめていて、ハシバの呼びかけに答えなかった。

 紫音は、不思議に思って横を向き、ゼルダを見た。

「紫音・・・紫音じゃないか!」

 それは、確かにゼルダだった。

 しかし何かが違っていた。

「俺だよ。ゾロだよ」

「ゾロ?ゾロなの?」

「久し振りだなぁ、紫音。会いたかったぞ」

「この指輪を俺に渡してお前が去ってからな、俺はする事なすことが、全部上手くいったんだ。
あの暴君を倒して、新しくイシュタル国を作って、さぁ、のんびり暮らそうと思ったら、国王にされてしまったよ。
まぁ、苦労もしたけどな。いい国が作れたと思ってる。全部、紫音のくれた指輪のお陰だぜ」

「ゾロ、あなた国王になっても、少しも変わらないわねぇ」

「当たり前だ。俺は元々、貧乏農家の小倅だぜ?必要な時は国王らしく振る舞うが、堅苦しくっていけねぇや。」

「紫音、俺はお前を探し回ったんだぜ。俺が国王になってからすぐ家内が死んでな。お前を妻にしようと思ったが、何処にもいなかった。」

「そうだったの」

「で?紫音はこいつと一緒になったのかい?」

「うん、式はまだだけどね」

「そうかい。どうやらこいつは、俺の生まれ変わりらしいからな。可愛がってやってくれ。まぁ、これで俺も、紫音を妻にする願いが叶ったわけだ」

「うん。私の願いもね」

「ん?紫音、お前も?・・・そうだったのか。まぁ、昔の事だ。ところで、そなたが今の国王か?」

 ゾラがハシバに向かって言った。

 ゾロに威圧感が漂い、体がひと回りもふた回りも大きくなって見えた。

「はい、さようです・・・」

 ハシバ国王は体を固くして答えた。

「我が家の家訓は、守っておるか?」

「はい、民は国のいしずえであり国の宝だと、常々戒めております」

「うむ、ならば良い。民の為に働くからこそ、王の喜びもあると思え。権力は、己の為にあらず。民の為にあるのじゃ、良いな」

「はい、心得ております・・・」

 ハシバの額に、じっとりと汗が浮いた。

「うむ、ならば良い。じゃ紫音、幸せになれよ」

 そう言うと、ゼルダは気を失った。

 紫音が、慌てて抱き抱えると、ゼルダは目を覚ました

「ん?俺は・・・寝ていたのか?」

「ゼルダ、あなたね」

 紫音は、今起こった事をゼルダに話した。

「へぇ、俺はその人の生まれ変わりなのか」 

「そうらしいな。わしに説教をしていった」

「父上にですか?」

 ゼルダは豪快に笑った。

「うむ、豪放らいらくだが、恐ろしい方だった。ゼルダ、お前があの方の生まれ変わりなら、末恐ろしいな。」

「いやとんでもない。僕は僕ですよ」

「ところでな、ゼルダ」

「はい?」

「今日から、わしと妻が使っていたあの部屋を使うとよいぞ」

「えっ、いいのですか?でも、父上それは・・・」

 その部屋は王と妃の為の部屋で、他の部屋と違い調度品も豪華にしてあったが、今は空き部屋になっていた。 

「うむ。イシュタル国は、お前と紫音に任せる。わしはバルカ国を作り直す為に暫く向こうに移るが、落ち着けばここに戻って隠居したい。結婚式と同時に即位式をしようと思う。」

「父上、まだ時期尚早だと思いますが」

「いや、お前ももう一人前の男だ。一人立ちをせねばならん。わしも付いておるから安心せい。」

「わかりました」

「さて・・・後は、メイチをどうするかだな。これから会いに行くが、紫音も来てくれるか?」

「もちろんまいります」

「よし、それじゃ行くとするか」
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