46 / 53
番外編 君の可愛さ ニコラside
しおりを挟む
俺の恋人は朝が弱い。
夜遅くまで曲を作っていたり、ギターをいじったりしているかわりに、どうにも朝早く起きるのが苦手なようだ。
でも、今日は確か…カレンダーを確認するとチハルの予定は朝9時半にスタジオ集合となっている。今の時刻は8時。もう起きないと間に合わなくなるだろう。
まだベッドの住人の彼を起こしに、俺は寝室のドアを開けた。
「チハル、もう起きないと遅刻するよ」
声をかけながらカーテンをさっと開けるとチハルはんー、と可愛く唸りながら布団へ潜り込んでいく。
「ほら、起きて」
ベッドのはしに腰かけて少しだけのぞいた額に軽く口づける。さらさらの黒髪をすくように撫でるとチハルはそろそろと顔を出した。
「おはよう」
まだ半分眠りの世界にいるチハルの開き切らない目尻をそっと撫でて、唇にキスを落とすとだんだん覚醒してきたのか、ゆっくりと身を起こそうとする。腕を回して支えるとチハルはふにゃっとした笑みを浮かべた。
「んーニコラおはよう」
「おはよう」
「なんかいい匂いする」
「朝ごはん、今日はフレンチトーストにしてみた」
「道理で」
ニコラからも甘い匂いがする、とまた柔らかく笑ったチハルがあまりにも可愛すぎて朝から深めのキスを落としてしまった。
「んっ、ふ、ちょっニコラ!」
「ん、ごめん」
さすがにすっかり目が覚めたチハルに抗議されて唇を離すと、そこに真っ赤な顔があってまたキスをしたくなるのを必死に堪えた。
ばっちり開いた綺麗な黒い瞳。普段は真ん丸なそれは今はじとっと細められている。
俺はそれに笑ってベッドから立ち上がった。
「さ、ほんとに遅れちゃうね。フレンチトーストも冷めるし。食べよっか」
「ん。顔洗ってくる」
チハルも1つ大きな伸びをしてからベッドから降りる。乱れた黒髪をくしゃっとしながら俺の横に並んだ。ドアの前からすっとよけて先をゆずるとチハルが立ち止まった。
「ん?どうしたの?」
「…いつもありがと」
若干目をそらしながら、唐突に言われたその言葉に俺が虚を突かれていると、チハルは少し背伸びをして俺の頬にキスを落とした。そして、してやったりという風に、にやっと笑うと今度こそ洗面所に歩いていった。
残された俺は一人で悶絶するしかない。
「っだから可愛すぎ…」
俺の恋人は、超有名アーティストで、綺麗な黒髪を持っていて、中性的なとんでもない美人で、普段はシャイなのに時々とても大胆で、そして世界一可愛い。
夜遅くまで曲を作っていたり、ギターをいじったりしているかわりに、どうにも朝早く起きるのが苦手なようだ。
でも、今日は確か…カレンダーを確認するとチハルの予定は朝9時半にスタジオ集合となっている。今の時刻は8時。もう起きないと間に合わなくなるだろう。
まだベッドの住人の彼を起こしに、俺は寝室のドアを開けた。
「チハル、もう起きないと遅刻するよ」
声をかけながらカーテンをさっと開けるとチハルはんー、と可愛く唸りながら布団へ潜り込んでいく。
「ほら、起きて」
ベッドのはしに腰かけて少しだけのぞいた額に軽く口づける。さらさらの黒髪をすくように撫でるとチハルはそろそろと顔を出した。
「おはよう」
まだ半分眠りの世界にいるチハルの開き切らない目尻をそっと撫でて、唇にキスを落とすとだんだん覚醒してきたのか、ゆっくりと身を起こそうとする。腕を回して支えるとチハルはふにゃっとした笑みを浮かべた。
「んーニコラおはよう」
「おはよう」
「なんかいい匂いする」
「朝ごはん、今日はフレンチトーストにしてみた」
「道理で」
ニコラからも甘い匂いがする、とまた柔らかく笑ったチハルがあまりにも可愛すぎて朝から深めのキスを落としてしまった。
「んっ、ふ、ちょっニコラ!」
「ん、ごめん」
さすがにすっかり目が覚めたチハルに抗議されて唇を離すと、そこに真っ赤な顔があってまたキスをしたくなるのを必死に堪えた。
ばっちり開いた綺麗な黒い瞳。普段は真ん丸なそれは今はじとっと細められている。
俺はそれに笑ってベッドから立ち上がった。
「さ、ほんとに遅れちゃうね。フレンチトーストも冷めるし。食べよっか」
「ん。顔洗ってくる」
チハルも1つ大きな伸びをしてからベッドから降りる。乱れた黒髪をくしゃっとしながら俺の横に並んだ。ドアの前からすっとよけて先をゆずるとチハルが立ち止まった。
「ん?どうしたの?」
「…いつもありがと」
若干目をそらしながら、唐突に言われたその言葉に俺が虚を突かれていると、チハルは少し背伸びをして俺の頬にキスを落とした。そして、してやったりという風に、にやっと笑うと今度こそ洗面所に歩いていった。
残された俺は一人で悶絶するしかない。
「っだから可愛すぎ…」
俺の恋人は、超有名アーティストで、綺麗な黒髪を持っていて、中性的なとんでもない美人で、普段はシャイなのに時々とても大胆で、そして世界一可愛い。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる