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Risoluto 〔決然と〕
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「あーやばいかも」朝、目が覚めたその瞬間。奏始は自分の体の熱っぽさを感じて一人ごちた。抑制剤を使わないヒートは人生で2回目のことだ。初めてヒートを経験して以来になる。市販の薬では発情期のフェロモンや性衝動を完全に抑えることはできない。だからこれまで行きずりの関係に頼ってきたわけだが、今回は話が違う。奏始は初めて、自らの意思でαに体を差し出す。
のろのろと準備をしている間にも、体内にこもる熱はひどくなる。「こんなにきつかったっけ」と初めてのヒートを思い返しながら、奏始は家を出た。
この状態で電車に乗るわけにはいかない。Ω専用のタクシーを呼んで、真尋の家まで乗車することにした。Ω専用タクシーはヒート時など、公共交通機関を使用できない時に使える交通手段だ。奏始も何度か利用したことはある。料金は通常に比べて高いが、その分、運転手は必ずΩであることや、緊急抑制剤が常備されていること、またシートは多少汚れても大丈夫な仕様になっている。タクシーに乗ってすぐ、奏始は己のαに連絡を入れた。太陽が高く昇り始めた時間。すでに起きていたのだろう、真尋は1コールで通話に応じた。
「何かあったか?」
「ふふ、一言目がそれ?」
「朝弱いお前がこんな時間に連絡してくるのが異常だろ」
「確かに」
「で? どうした?」
「ヒート始まったから今すぐそっち行くね。というかもう向かってる」
「は!? お前、いや、向かってる? どうやって? まさか電車じゃないだろうな」
「まさか。Ωタクシーに乗ってる。後20分くらいで着くから」
「……わかった。待ってる」
常に無い焦った声を出す真尋に笑いながら通話を終える。こんなにも自分を案じてくれる存在がいることがくすぐったい。
ずっと迷っていた。想いを伝えて、通じ合って、その先は? αとΩである以上、番になるのが自然なんだろう。互いのバース性の相性も良いという確信もあった。初めて会ったときにそのフェロモンを不快に感じなかったことが何よりの証拠。でも、と臆病な自分が囁く。
真尋は本当は自分なんかが関わり合えないような地位のαだろう。ちょっと調べればわかることだ。宮瀬真尋。日本屈指の医療系グループの御曹司。家を飛び出して音楽に進んだと語るインタビュー記事も読んだ。だからといって親兄弟との交流が途絶えているということもなく、時折食事しに帰ったりもしているようだ。
じゃあ自分は? 父親が誰かもわからない。母親ももういない。高卒でΩ雇用の工場働き。奏始には何もない。
端的に言えば奏始は怯んでいた。偶然、あの夜真尋が奏始のピアノを聞いた。そこから余りにも自分に都合の良いように何もかもが進んでいっている。上手くいっているのに、こんなことを考えるのはわがままだと思う。勝手に卑屈になって、勝手に怯えている。番というのはΩにとって一生に一度の契約だ。αが多数のΩと契約できるのに対して、Ωからは唯一無二。破棄されれば気が狂う苦しみを味わうし、破棄されなくてもヒートを慰められるのは番のαだけになるから、冷遇されればそれもまた苦しむことになる。真尋がそういうことをする人間だとは思っていない。でも、どこかで信じ切れていなかったのかもしれない。自分の音楽に自信はある。でもそれを失くせば、奏始はそこらにいる人間と大差ない。いや、それよりも、もっと、何も持たない人間で。それが露わになることが怖いのだ。でも、真尋はそんな奏始を急かすことなくじっと待っていてくれた。慈しみ、ゆっくりと愛を与えてくれた。αにとってΩなんか取るに足らない存在なはずなのに。でも、真尋はそんな奏始に選択権をくれた。
だからもういいかと思ったのだ。自分の音楽を見つけてくれて、自分のことも愛すると言ってくれた。そんな真尋に返せるものはなんだってあげたい、なんて考えた時点で奏始もきっと真尋を手放す気なんてなかった。
見慣れたマンションの外には真尋が立っていた。タクシーを降りて、人目も気にせずその胸に飛び込む。息を吸い込むと、体の中に真尋の香りが広がった。白檀のような少しオリエンタルな匂い。うっとりと目を細めると、それに呼応して自らのフェロモンが濃くなったのがわかった。真尋が一つ舌打ちをする。
ほとんど抱えられるようにして、真尋の部屋までたどり着き、そのままベッドに放り込まれた。
「お前な、全部急すぎるんだよ。準備ギリギリだったぞ」
「準備?」
「ヒート中は何もできなくなるだろ。すぐに食べれるものとか、タオルとか、必要なもの揃えずにおっぱじめて見ろよ。死体を二つ作りたいか?」
「……何か詳しいね」
「調べたんだよ。言っとくけど、ヒート中のΩを相手にすんのは俺も初めてだからな。自分がどうなるかなんてわからん」
仰向けの奏始に覆い被さる体勢の真尋の顔は、暗がりになってよく見えない。でも目がギラギラと光っているのはわかって、奏始はごくりと唾をのみ込んだ。
「俺も。抑制剤無しにヒート過ごすの初めてだから。……引かないでね」
奏始の気弱な付け加えを鼻で笑って、真尋の唇が降ってくる。額に、頬に、鼻先に、唇に。いつの間にか服が取り払われ、剥き出しなった肩に、鎖骨に。触れられるたびにそこがじんと熱くなる。でも決定的な刺激は与えられない。 ベッドの上でもどかしく身をよじる奏始に覆いかぶさってくる真尋の体から、むせ返るようなフェロモンが発されて肺に染み込んでいく。冷たいシーツの感触が気持ちいい。でも、足りない。
「まひろ」
「噛んでいいか?」
項に指が這わされて、何度もそこもなぞる。その感覚がたまらなくて、もうそれだけでイッてしまいそうだ。前戯も何もない。キスだってまだ。でも早く噛んでもらわないと気が狂いそうだ。お互いにお互いを番にしたくて、もう限界だった。
「はやく、はやくして」
言い終わるや否や、唇が項に触れた。熱い舌が、一度そこを舐めて、そして鋭い犬歯が深く突き立てられた。
「っっっぁッ」
声にならない声を発して、のけ反る。体が作り変わる感覚が気持ち良すぎて、それから逃れたいのに更に深く項を差し出すような格好で自分を無意識に苦しめる。真尋が噛み跡に滲む血を丹念に舐めとる度に、そこがピリピリと痛んで、その痛みが否応なしに番になったのだとに奏始に伝えた。
「っは、ん、これで、もう真尋は俺のものだな」
「ふ、そうだな。まあ、お前も俺のだけどな」
頭の芯がじんと痺れる。いろんな感情が溢れて、入り混じって、ぐちゃぐちゃになった。なんだかわからないのに、涙が止まらない。
「なんで泣くんだ」
困ったように笑って、真尋が俺の涙に唇を寄せる。
「だって、だってぇ」
一層止まらなくなって子どものように泣きじゃくる奏始を、力強い腕があやすように抱き寄せる。肌と肌が重なるのが気持ちよくて、思わず声が漏れた。
「泣くのか感じるのかどっちかにしろ」
ふ、と真尋が笑って、俺の肌に手を這わせ始めた。首から始まり、背を通り、いたずらに胸の尖りをくすぐり、腰を撫で、先走りを零すモノの先端を掠めて、足まで余すことなく撫で下ろされる。骨ばった手の感触に、体が震えた。
「ふ、あ」
「奏始」
熱の籠もった声で名前を呼ばれる。唇にキスが降ってきた。食むように何度も重ね合わされて、そのうちに熱い舌が割り入ってくる。我が物顔で口内を蹂躪して、歯列をなぞり、舌を吸われる。体を這っていた指が、しとどに濡れた秘所へ至った。つぷりと指が侵入する。入り口を広げるようにかき回してから、内壁をなぞって奥へ奥へ、長い指が進む。器用な指はすぐに感じるしこりを探り当てて、重点的にそこを擦った。その刺激に背がのけ反る。
「ぅあ、は、まひろ」
「ん?」
「もっと。ね、はやく」
ヒートで高まった体には、指一本の感覚はもどかしい。もっと激しく。強烈な快感が欲しい。
漏れ出る声の合間で強請れば、指がもう一本増やされた。でも足りない。
「煽るな。優しくしたい」
「やだ、もっと強くして、まひろ」
優しい刺激がもはや辛い。ぐずぐずと溶けた声で何度も名前を呼べば、覆い被さった真尋がぐっと息を詰めたのがわかった。フェロモンが密度を増して奏始を包む。窒息しそうなくらい、甘くむせ返る。
「馬鹿だな。もう知らないぞ」
腰を強く掴んで、真尋が熱を俺の中に押し込んだ。待ちわびた刺激に、喉を曝け出して身をよじる。掴まれた手に逃げは許されない。
「っあ、ん、ひぅ」
馴染ませるようにゆっくりと腰が動かされて、そうかと思えば、急に奥まで突き入れられる。
「ん、あ、あ」
壊れたおもちゃのように、掠れた声がひっきりなしに出る。前立腺を突かれれば、その刺激は耐えられるものではなくて、真尋の背中に縋り付いた。そうすれば一層深く自分から引き寄せることになって、より快感を拾ってしまう。こんこんと最奥を突かれるのも気持ち良すぎて、もう訳がわからない。
「っふ、あ、んン、や」
熱の先端が降りてきた子宮の入り口を破って、先へ進もうとする。頭のどこかではダメだと言っているのに、溶けた思考はそれに酷く喜んで、きゅうきゅうとナカが収縮する。
「や、だめ、ぅぁあ、ん」
「気持ちいいな」
「ぁ、や、きもち、きもちからだめ」
「ダメじゃないだろ」
もうただ快感を求めて喘ぐ事しかできない。涙が滲んで霞む視界に、歪んだ表情の真尋が映る。掠れた声と、荒い呼吸を零す軽く開いた唇に、視線が囚われる。ダメだ、どこもかしこも気持ちがいい。「だめになる」なんて無意識に発していたらしい。「ダメになればいい。時間はたっぷりあるんだから」という真尋の言葉を最後に、奏始の思考は完全にヒートに飲まれた。
のろのろと準備をしている間にも、体内にこもる熱はひどくなる。「こんなにきつかったっけ」と初めてのヒートを思い返しながら、奏始は家を出た。
この状態で電車に乗るわけにはいかない。Ω専用のタクシーを呼んで、真尋の家まで乗車することにした。Ω専用タクシーはヒート時など、公共交通機関を使用できない時に使える交通手段だ。奏始も何度か利用したことはある。料金は通常に比べて高いが、その分、運転手は必ずΩであることや、緊急抑制剤が常備されていること、またシートは多少汚れても大丈夫な仕様になっている。タクシーに乗ってすぐ、奏始は己のαに連絡を入れた。太陽が高く昇り始めた時間。すでに起きていたのだろう、真尋は1コールで通話に応じた。
「何かあったか?」
「ふふ、一言目がそれ?」
「朝弱いお前がこんな時間に連絡してくるのが異常だろ」
「確かに」
「で? どうした?」
「ヒート始まったから今すぐそっち行くね。というかもう向かってる」
「は!? お前、いや、向かってる? どうやって? まさか電車じゃないだろうな」
「まさか。Ωタクシーに乗ってる。後20分くらいで着くから」
「……わかった。待ってる」
常に無い焦った声を出す真尋に笑いながら通話を終える。こんなにも自分を案じてくれる存在がいることがくすぐったい。
ずっと迷っていた。想いを伝えて、通じ合って、その先は? αとΩである以上、番になるのが自然なんだろう。互いのバース性の相性も良いという確信もあった。初めて会ったときにそのフェロモンを不快に感じなかったことが何よりの証拠。でも、と臆病な自分が囁く。
真尋は本当は自分なんかが関わり合えないような地位のαだろう。ちょっと調べればわかることだ。宮瀬真尋。日本屈指の医療系グループの御曹司。家を飛び出して音楽に進んだと語るインタビュー記事も読んだ。だからといって親兄弟との交流が途絶えているということもなく、時折食事しに帰ったりもしているようだ。
じゃあ自分は? 父親が誰かもわからない。母親ももういない。高卒でΩ雇用の工場働き。奏始には何もない。
端的に言えば奏始は怯んでいた。偶然、あの夜真尋が奏始のピアノを聞いた。そこから余りにも自分に都合の良いように何もかもが進んでいっている。上手くいっているのに、こんなことを考えるのはわがままだと思う。勝手に卑屈になって、勝手に怯えている。番というのはΩにとって一生に一度の契約だ。αが多数のΩと契約できるのに対して、Ωからは唯一無二。破棄されれば気が狂う苦しみを味わうし、破棄されなくてもヒートを慰められるのは番のαだけになるから、冷遇されればそれもまた苦しむことになる。真尋がそういうことをする人間だとは思っていない。でも、どこかで信じ切れていなかったのかもしれない。自分の音楽に自信はある。でもそれを失くせば、奏始はそこらにいる人間と大差ない。いや、それよりも、もっと、何も持たない人間で。それが露わになることが怖いのだ。でも、真尋はそんな奏始を急かすことなくじっと待っていてくれた。慈しみ、ゆっくりと愛を与えてくれた。αにとってΩなんか取るに足らない存在なはずなのに。でも、真尋はそんな奏始に選択権をくれた。
だからもういいかと思ったのだ。自分の音楽を見つけてくれて、自分のことも愛すると言ってくれた。そんな真尋に返せるものはなんだってあげたい、なんて考えた時点で奏始もきっと真尋を手放す気なんてなかった。
見慣れたマンションの外には真尋が立っていた。タクシーを降りて、人目も気にせずその胸に飛び込む。息を吸い込むと、体の中に真尋の香りが広がった。白檀のような少しオリエンタルな匂い。うっとりと目を細めると、それに呼応して自らのフェロモンが濃くなったのがわかった。真尋が一つ舌打ちをする。
ほとんど抱えられるようにして、真尋の部屋までたどり着き、そのままベッドに放り込まれた。
「お前な、全部急すぎるんだよ。準備ギリギリだったぞ」
「準備?」
「ヒート中は何もできなくなるだろ。すぐに食べれるものとか、タオルとか、必要なもの揃えずにおっぱじめて見ろよ。死体を二つ作りたいか?」
「……何か詳しいね」
「調べたんだよ。言っとくけど、ヒート中のΩを相手にすんのは俺も初めてだからな。自分がどうなるかなんてわからん」
仰向けの奏始に覆い被さる体勢の真尋の顔は、暗がりになってよく見えない。でも目がギラギラと光っているのはわかって、奏始はごくりと唾をのみ込んだ。
「俺も。抑制剤無しにヒート過ごすの初めてだから。……引かないでね」
奏始の気弱な付け加えを鼻で笑って、真尋の唇が降ってくる。額に、頬に、鼻先に、唇に。いつの間にか服が取り払われ、剥き出しなった肩に、鎖骨に。触れられるたびにそこがじんと熱くなる。でも決定的な刺激は与えられない。 ベッドの上でもどかしく身をよじる奏始に覆いかぶさってくる真尋の体から、むせ返るようなフェロモンが発されて肺に染み込んでいく。冷たいシーツの感触が気持ちいい。でも、足りない。
「まひろ」
「噛んでいいか?」
項に指が這わされて、何度もそこもなぞる。その感覚がたまらなくて、もうそれだけでイッてしまいそうだ。前戯も何もない。キスだってまだ。でも早く噛んでもらわないと気が狂いそうだ。お互いにお互いを番にしたくて、もう限界だった。
「はやく、はやくして」
言い終わるや否や、唇が項に触れた。熱い舌が、一度そこを舐めて、そして鋭い犬歯が深く突き立てられた。
「っっっぁッ」
声にならない声を発して、のけ反る。体が作り変わる感覚が気持ち良すぎて、それから逃れたいのに更に深く項を差し出すような格好で自分を無意識に苦しめる。真尋が噛み跡に滲む血を丹念に舐めとる度に、そこがピリピリと痛んで、その痛みが否応なしに番になったのだとに奏始に伝えた。
「っは、ん、これで、もう真尋は俺のものだな」
「ふ、そうだな。まあ、お前も俺のだけどな」
頭の芯がじんと痺れる。いろんな感情が溢れて、入り混じって、ぐちゃぐちゃになった。なんだかわからないのに、涙が止まらない。
「なんで泣くんだ」
困ったように笑って、真尋が俺の涙に唇を寄せる。
「だって、だってぇ」
一層止まらなくなって子どものように泣きじゃくる奏始を、力強い腕があやすように抱き寄せる。肌と肌が重なるのが気持ちよくて、思わず声が漏れた。
「泣くのか感じるのかどっちかにしろ」
ふ、と真尋が笑って、俺の肌に手を這わせ始めた。首から始まり、背を通り、いたずらに胸の尖りをくすぐり、腰を撫で、先走りを零すモノの先端を掠めて、足まで余すことなく撫で下ろされる。骨ばった手の感触に、体が震えた。
「ふ、あ」
「奏始」
熱の籠もった声で名前を呼ばれる。唇にキスが降ってきた。食むように何度も重ね合わされて、そのうちに熱い舌が割り入ってくる。我が物顔で口内を蹂躪して、歯列をなぞり、舌を吸われる。体を這っていた指が、しとどに濡れた秘所へ至った。つぷりと指が侵入する。入り口を広げるようにかき回してから、内壁をなぞって奥へ奥へ、長い指が進む。器用な指はすぐに感じるしこりを探り当てて、重点的にそこを擦った。その刺激に背がのけ反る。
「ぅあ、は、まひろ」
「ん?」
「もっと。ね、はやく」
ヒートで高まった体には、指一本の感覚はもどかしい。もっと激しく。強烈な快感が欲しい。
漏れ出る声の合間で強請れば、指がもう一本増やされた。でも足りない。
「煽るな。優しくしたい」
「やだ、もっと強くして、まひろ」
優しい刺激がもはや辛い。ぐずぐずと溶けた声で何度も名前を呼べば、覆い被さった真尋がぐっと息を詰めたのがわかった。フェロモンが密度を増して奏始を包む。窒息しそうなくらい、甘くむせ返る。
「馬鹿だな。もう知らないぞ」
腰を強く掴んで、真尋が熱を俺の中に押し込んだ。待ちわびた刺激に、喉を曝け出して身をよじる。掴まれた手に逃げは許されない。
「っあ、ん、ひぅ」
馴染ませるようにゆっくりと腰が動かされて、そうかと思えば、急に奥まで突き入れられる。
「ん、あ、あ」
壊れたおもちゃのように、掠れた声がひっきりなしに出る。前立腺を突かれれば、その刺激は耐えられるものではなくて、真尋の背中に縋り付いた。そうすれば一層深く自分から引き寄せることになって、より快感を拾ってしまう。こんこんと最奥を突かれるのも気持ち良すぎて、もう訳がわからない。
「っふ、あ、んン、や」
熱の先端が降りてきた子宮の入り口を破って、先へ進もうとする。頭のどこかではダメだと言っているのに、溶けた思考はそれに酷く喜んで、きゅうきゅうとナカが収縮する。
「や、だめ、ぅぁあ、ん」
「気持ちいいな」
「ぁ、や、きもち、きもちからだめ」
「ダメじゃないだろ」
もうただ快感を求めて喘ぐ事しかできない。涙が滲んで霞む視界に、歪んだ表情の真尋が映る。掠れた声と、荒い呼吸を零す軽く開いた唇に、視線が囚われる。ダメだ、どこもかしこも気持ちがいい。「だめになる」なんて無意識に発していたらしい。「ダメになればいい。時間はたっぷりあるんだから」という真尋の言葉を最後に、奏始の思考は完全にヒートに飲まれた。
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