17 / 41
17 基地長とシグルド?
しおりを挟む
シグさんと外に出てすぐに騎馬の一団が到着した。
「おう、シグルド!留守番ご苦労さん」
いかつい貫禄のあるおじさんが声をかけてくる。シグルドって…誰だ?
不思議に思っていると何故かシグさんが口を開いた。
「お疲れ様です、カデナ基地長」
え、え?シグさんってもしかして本当はシグルドさん…!?
心の中で思わず叫んだ。するとシグさんがぶっと吹き出した。そのまま肩を震わせている。どうやらこれは笑っているようだ。
『おまえほんとに、くくっ』
念話でも笑っている。え?私なんかしたっけ?
『くくっ、さっきから念話が繋がりっぱなしなんだよ。全部聞こえてるぞ。基地長をいかついとか、俺をシグだと思ってたこととか』
そう言ってまたくくっと笑った。
え、嘘だ!なんで!?
『念話は一回一回繋げたり切ったりっていう意識が欲しいんだよ。お前はそれがないから常に繋がってるんだよ』
私はその新事実に驚愕して目を見開いた。
『なんで言ってくれなかったの!!!』
シグさんがうおっと声を出した。
『お前叫ぶなよ!念話は声のようすとか全部反映されるんだぞ!』
『シグさんのせいです!!!』
頭の中で言い争っているため突然黙り込んだシグさんにカデナ基地長は不思議そうだ。
「おい、シグルド?どうした?」
「あ、いえ。なんでもありません」
そうか?とまだ訝しげながらも受け入れた基地長は視線を私に動かした。
「シグルド、その猫はなんだ?」
「拾ったんです。リツカです」
「拾った?お前の猫か?」
「はい、そうですが」
基地長が心底驚いたという表情になる。
「なんだお前にも小動物を愛でる感情があるんだな」
「…俺をなんだと思ってるんですか」
シグさんが眉を寄せて顔をしかめた。
と、基地長が手を伸ばしてきた。
「リツカ、だっけか?ほーらおいでー」
ごつい手が私に伸びてくる。
…ちょっと猫なで声なのが不気味なんだけどな…しょうがない。
「にゃーん」
返事をしてそのまま抱かれてあげる。嬉しそうな表情をしていて私も嬉しくなった。猫好きなのかなー。なんか近所のおっちゃんみたいだ。大きな手でわしわしと頭を撫でられる。ちょ、強い強い!首もげる!力加減の調節っ…!
「くっ」
とシグさんがまたもや吹き出した。
『お前なぁ!駄々漏れなんだよ!』
あっ、またやっちゃった!これほんとに意識しないとだめだ。このままだと考えていることが全部シグさんにばれてしまう。
でもその前に…このままだと死んじゃう!と身を捩ってカデナ基地長の腕から抜け出した。
少し残念そうな表情をしているカデナ基地長。
『そんな顔してもだめです。力加減を勉強してからにしてくれないと命に危険が及びます』
あえて念話を使ってみるとまたシグさんが必死に笑いを堪えている。あれ、これちょっと面白いかも。
でもこれはわざとだとわかったのかすごい目で睨まれた。
「さてシグルド。中に入って報告会だ」
「はい」
カデナ基地長は後ろの部下たちに合図してシグさんと並んで歩きだした。私は置いていかれないように慌ててシグさんに向かってジャンプした。シグさんがタイミングよく腕を伸ばしてくれたのでそこに一旦飛び乗ってそこから肩に飛び移った。
「おぉ。すごいな」
カデナ基地長が感心している。うん、今のは私もすごいと思った。シグさんとの息がぴったりだ。こんなことやったことなかったけど、シグさんならなんとかしてくれるって思ったんだよね。
『やるな』
シグさんもそう思ったらしく念話で話しかけてきた。
『シグさんのタイミングばっちり!あ、…シグルドさん?』
『ふっ、シグでいいぞ』
そうやっているうちにいつのまにかいつもの部屋の前だった。
あ、また道覚えるの忘れた!今度は迷子にならないようにしようと思ったのに!
ふっと笑ったような声がすぐ側から聞こえてはっとする。
あ、もしかしてまた念話繋げたままだった…?
『ばーか』
シグさんから言われて私は完全に沈黙した。
「おう、シグルド!留守番ご苦労さん」
いかつい貫禄のあるおじさんが声をかけてくる。シグルドって…誰だ?
不思議に思っていると何故かシグさんが口を開いた。
「お疲れ様です、カデナ基地長」
え、え?シグさんってもしかして本当はシグルドさん…!?
心の中で思わず叫んだ。するとシグさんがぶっと吹き出した。そのまま肩を震わせている。どうやらこれは笑っているようだ。
『おまえほんとに、くくっ』
念話でも笑っている。え?私なんかしたっけ?
『くくっ、さっきから念話が繋がりっぱなしなんだよ。全部聞こえてるぞ。基地長をいかついとか、俺をシグだと思ってたこととか』
そう言ってまたくくっと笑った。
え、嘘だ!なんで!?
『念話は一回一回繋げたり切ったりっていう意識が欲しいんだよ。お前はそれがないから常に繋がってるんだよ』
私はその新事実に驚愕して目を見開いた。
『なんで言ってくれなかったの!!!』
シグさんがうおっと声を出した。
『お前叫ぶなよ!念話は声のようすとか全部反映されるんだぞ!』
『シグさんのせいです!!!』
頭の中で言い争っているため突然黙り込んだシグさんにカデナ基地長は不思議そうだ。
「おい、シグルド?どうした?」
「あ、いえ。なんでもありません」
そうか?とまだ訝しげながらも受け入れた基地長は視線を私に動かした。
「シグルド、その猫はなんだ?」
「拾ったんです。リツカです」
「拾った?お前の猫か?」
「はい、そうですが」
基地長が心底驚いたという表情になる。
「なんだお前にも小動物を愛でる感情があるんだな」
「…俺をなんだと思ってるんですか」
シグさんが眉を寄せて顔をしかめた。
と、基地長が手を伸ばしてきた。
「リツカ、だっけか?ほーらおいでー」
ごつい手が私に伸びてくる。
…ちょっと猫なで声なのが不気味なんだけどな…しょうがない。
「にゃーん」
返事をしてそのまま抱かれてあげる。嬉しそうな表情をしていて私も嬉しくなった。猫好きなのかなー。なんか近所のおっちゃんみたいだ。大きな手でわしわしと頭を撫でられる。ちょ、強い強い!首もげる!力加減の調節っ…!
「くっ」
とシグさんがまたもや吹き出した。
『お前なぁ!駄々漏れなんだよ!』
あっ、またやっちゃった!これほんとに意識しないとだめだ。このままだと考えていることが全部シグさんにばれてしまう。
でもその前に…このままだと死んじゃう!と身を捩ってカデナ基地長の腕から抜け出した。
少し残念そうな表情をしているカデナ基地長。
『そんな顔してもだめです。力加減を勉強してからにしてくれないと命に危険が及びます』
あえて念話を使ってみるとまたシグさんが必死に笑いを堪えている。あれ、これちょっと面白いかも。
でもこれはわざとだとわかったのかすごい目で睨まれた。
「さてシグルド。中に入って報告会だ」
「はい」
カデナ基地長は後ろの部下たちに合図してシグさんと並んで歩きだした。私は置いていかれないように慌ててシグさんに向かってジャンプした。シグさんがタイミングよく腕を伸ばしてくれたのでそこに一旦飛び乗ってそこから肩に飛び移った。
「おぉ。すごいな」
カデナ基地長が感心している。うん、今のは私もすごいと思った。シグさんとの息がぴったりだ。こんなことやったことなかったけど、シグさんならなんとかしてくれるって思ったんだよね。
『やるな』
シグさんもそう思ったらしく念話で話しかけてきた。
『シグさんのタイミングばっちり!あ、…シグルドさん?』
『ふっ、シグでいいぞ』
そうやっているうちにいつのまにかいつもの部屋の前だった。
あ、また道覚えるの忘れた!今度は迷子にならないようにしようと思ったのに!
ふっと笑ったような声がすぐ側から聞こえてはっとする。
あ、もしかしてまた念話繋げたままだった…?
『ばーか』
シグさんから言われて私は完全に沈黙した。
0
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる