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しおりを挟む1月3日の神社は初詣に来る人々で賑わっている。
今日は真貴さんに誘われて、初詣に来ていた。どちらも帰省していたのだが、今日からまた寮に戻る予定だ。戻る前にということで、デートがてらの初詣だ。
それにしても、どこにいても人目を惹く人だ。女性からの熱い視線が刺さる。そう嫉妬混じりに溢すと、「そのセリフそのままそっくり返してやるよ。半分はお前のせいだ」と言われた。自分の容姿も悪くはないという自覚はあれど、真貴さんほどではないと思う。だがこう言っても堂々巡りになるだけなので、首を竦めてマフラーに口元を埋めると、真貴さんがふっと笑った。解けかけていたそれを、ふわりと巻き直してくれる。首元にその指先が触れて、マフラーの下にあるチョーカーを撫でていった。細いが、しっかりとした黒い革紐のチョーカー。1つだけついている青い石をはめ込んだチャームが揺れて、肌の上で跳ねた。
このチョーカーはクリスマスに真貴さんからもらったものだ。
冬が近づいてくる頃、真貴さんは卒業に向けて忙しくしていた。風紀委員の引き継ぎや、進学の準備。受験はないと言えども、しなければならないことはたくさんある。そんな真貴さんを見ていると、不安に駆られた。
真貴さんが卒業してしまえば、ご飯を食べたり、一緒に過ごしたりすることが難しくなる。
今までだって毎日会っていた訳じゃない。それでも同じ空間にいるという安心感、望めばいつでも会えるという距離感は大きかったのだと自覚した。
そんな感情を抱えてのクリスマスだった。
行き先を言わない真貴さんについていくと、そこはcollar専門のショップだった。collarとは俗に言う首輪のことだ。DomがSubにパートナーになった証として送るものだ。Subにとっては精神安定剤になったりもする。しかしcollarはパートナー契約のようなものなので、校則で禁止されている。だから今はこれな、と言って真貴さんはこのチョーカーをくれたのだ。
「これ、ほんとにいいの?」
「他に誰にやるんだよ。もらってくれるか?」
collarではないと言いつつも、首に巻くものだ。それは大きな意味を持つ。真貴さんが半端な想いでこれをくれたのではないことは確かで、その意味が心に迫ってきて泣きそうになった。涙を堪えて何度も頷くと、真貴さんがチョーカーを俺の首に巻いてくれた。留め金がかかった途端、ずっと心にあった不安が霧散するのがわかった。首に触れるそれから、真貴さんが傍にいてくれるような錯覚を得る。慣れないものの筈なのに、それは違和感なく俺の感覚に馴染んだ。
クリスマスのことを思い出していたら、ふらふら歩いていたらしい。真貴さんに手を繋がれた。誤魔化すように、話を振って見る。
「帰ったら何する予定ですか?」
「ん、特に考えてなかったな」
「三咲が鍋パしようって言ってました」
「あー、それは俺も結城に言われてた」
「ははっ、じゃあ早いとこ開催しないとですね」
「あいつらも寮にいるんだったか」
「今日帰るって言ってました。連絡しときます?」
「そうするか。材料も買って帰ろう。欲しいもの聞いてみてくれ」
さっそく三咲に電話すると、すぐさま了承の返事が返ってきた。材料を買って帰るというのも伝えると、チョコレート!と返ってきた。あいつは何を入れるつもりなんだ。
「三咲は闇鍋をご所望ですよ」
「ははっ、マシュマロとか買ってくか」
「溶けてなくなりません?」
結城先輩も真貴さんもノリがいいので、今日の鍋は大変なことになりそうだ。
知らず、口元が緩んでいたらしい。楽しみだな、とそれを見た真貴さんに言われて、素直に頷いておく。
冬が過ぎて春がやって来る。でももう不安はない。指でチョーカーをなぞって、その存在を確かめた。
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