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夏休みが終わっていく。
結局あれから委員長にはあまり会えていない。自分の気持ちに整理がつかず、ずるずると結論から逃げてしまっている。自分の中で決定打を打ちたくないのだ。委員長に対する独占欲に、知らぬ間に芽生えていた執着に、気づいてしまったから。俺は委員長が好きなんだ。ここからはもう逃げられない。ただ、それはいったいどこからくるものなんだろうか。俺自身の気持ちなのか、それともSubだからなのか。俺がSubとしてDomの委員長を求めているのだとしたら、それはなんておぞましいことなんだろう。あれだけ痛い目を見たのに。そのせいで今でも声が出ない。それなのに自分の中でどうしても無視できないSub性がおぞましくて、怖い。自分の中にコントロールできないものがあること、そしてそれが他人によっていとも簡単にコントロールされてしまうことが恐ろしい。
日々鬱々と過ごしている中で、自分がそう感じていたことに気づいて更に俺の気持ちは沈んだ。生徒会長にあんな啖呵をきったくせにと自嘲する。結局俺はあの日から何も進めていない。
一人でいてもこのままでは落ちていくだけだ。三咲が遊びに誘ってくれたこともあって、俺は久しぶりに学園を出た。
会うのは学校近くの繁華街。昼前に出発したら、太陽に焼かれて早々に死にそうになった。
久しぶりに会ったように思える三咲は、相変わらずはつらつと元気だった。
「やっほー木南!ちゃんと毎日ご飯食べてる?」
開口一番にそう言われて、即答できずに苦笑する。三咲がいればきちんと3食取っているが、最近は朝食を抜くことも珍しくない。そんな俺の反応を見て、三咲は顔をしかめた。
昼食のためにファミレスに入ったのだが、メニューをぐいぐい押し付けられる。
「だめだよちゃんと食べないと、育ち盛りなんだからさー」
『はいはい、わかったよ母さん』
「こら!茶化さない!」
このままだとお説教タイムに入りそうなので、俺は話を反らしにかかる。
『結城先輩とはどう?』
とたんに三咲が緩んだ表情になる。
「んー?昨日も先輩と会ったよ」
『へぇ?で?どこまでいったの?』
直接的に話を向けてやると、三咲は真っ赤に顔を染めた。わかりやすいやつだ。ニヤニヤしていると三咲がうぅーと唸る。
「なんで!そんなこと聞くの!」
『いや、気になるし。したんだろ?セックス』
「ねえ!」
耳まで真っ赤にして三咲が叫ぶ。シたんだな。やっぱりわかりやすすぎる。
『やっぱ命令込み?どうだった?』
「うぅぅ……セクハラ……」
テーブルに撃沈した三咲に、これ以上は可哀想かと手を緩める。興味はあるが問い詰めるつもりはない。熱くなった頬を、グラスで冷やした手のひらで覆う三咲を笑う。そんな俺をチラッと見て、三咲が俯かせた顔を上げて、首を傾げた。
「でもそんなこと聞くなんて珍しいね、木南」
図星をさされた。普段俺からこんな話を振ることはあまりない。三咲の鋭さにたじろぐ。
『いや、ちょっと興味?』
「ふーん?……なんか内心の変化でもあった?」
形勢逆転。返答を詰まらせた俺を三咲がニヤッと笑う。気遣いが上手い三咲は、人の気持ちを察するのも上手い。俺が内心に消化し切れていないものを抱えていることをあっさり見抜かれた。
『……今回は聞いてくるんだ?』
以前、俺のDomへの悪感情を知りながら踏み込んでこなかった三咲。意地が悪いと思いながらそう返答すると、三咲がまた笑う。
「だって今回は話したいって顔してるよ?」
『お前凄いよほんと…』
叶わないなぁ。思わず苦笑する。話したくないようで話したい。聞いてもらいたい。どうやら俺の気持ちは三咲にはバレバレだったようだ。
『聞いてくれるか?』
「木南にはさんざん恋愛相談に乗ってもらってたしね。なんでも聞きますよ」
自分で考えていてもぐるぐる同じところを回るだけ、か。三咲になら話せる。それだけ俺はこいつを信頼しているし、三咲もそうだろう。しょうがない、腹を括るか。どう言おうか迷いつつ、俺は画面に指を滑らせた。
結局あれから委員長にはあまり会えていない。自分の気持ちに整理がつかず、ずるずると結論から逃げてしまっている。自分の中で決定打を打ちたくないのだ。委員長に対する独占欲に、知らぬ間に芽生えていた執着に、気づいてしまったから。俺は委員長が好きなんだ。ここからはもう逃げられない。ただ、それはいったいどこからくるものなんだろうか。俺自身の気持ちなのか、それともSubだからなのか。俺がSubとしてDomの委員長を求めているのだとしたら、それはなんておぞましいことなんだろう。あれだけ痛い目を見たのに。そのせいで今でも声が出ない。それなのに自分の中でどうしても無視できないSub性がおぞましくて、怖い。自分の中にコントロールできないものがあること、そしてそれが他人によっていとも簡単にコントロールされてしまうことが恐ろしい。
日々鬱々と過ごしている中で、自分がそう感じていたことに気づいて更に俺の気持ちは沈んだ。生徒会長にあんな啖呵をきったくせにと自嘲する。結局俺はあの日から何も進めていない。
一人でいてもこのままでは落ちていくだけだ。三咲が遊びに誘ってくれたこともあって、俺は久しぶりに学園を出た。
会うのは学校近くの繁華街。昼前に出発したら、太陽に焼かれて早々に死にそうになった。
久しぶりに会ったように思える三咲は、相変わらずはつらつと元気だった。
「やっほー木南!ちゃんと毎日ご飯食べてる?」
開口一番にそう言われて、即答できずに苦笑する。三咲がいればきちんと3食取っているが、最近は朝食を抜くことも珍しくない。そんな俺の反応を見て、三咲は顔をしかめた。
昼食のためにファミレスに入ったのだが、メニューをぐいぐい押し付けられる。
「だめだよちゃんと食べないと、育ち盛りなんだからさー」
『はいはい、わかったよ母さん』
「こら!茶化さない!」
このままだとお説教タイムに入りそうなので、俺は話を反らしにかかる。
『結城先輩とはどう?』
とたんに三咲が緩んだ表情になる。
「んー?昨日も先輩と会ったよ」
『へぇ?で?どこまでいったの?』
直接的に話を向けてやると、三咲は真っ赤に顔を染めた。わかりやすいやつだ。ニヤニヤしていると三咲がうぅーと唸る。
「なんで!そんなこと聞くの!」
『いや、気になるし。したんだろ?セックス』
「ねえ!」
耳まで真っ赤にして三咲が叫ぶ。シたんだな。やっぱりわかりやすすぎる。
『やっぱ命令込み?どうだった?』
「うぅぅ……セクハラ……」
テーブルに撃沈した三咲に、これ以上は可哀想かと手を緩める。興味はあるが問い詰めるつもりはない。熱くなった頬を、グラスで冷やした手のひらで覆う三咲を笑う。そんな俺をチラッと見て、三咲が俯かせた顔を上げて、首を傾げた。
「でもそんなこと聞くなんて珍しいね、木南」
図星をさされた。普段俺からこんな話を振ることはあまりない。三咲の鋭さにたじろぐ。
『いや、ちょっと興味?』
「ふーん?……なんか内心の変化でもあった?」
形勢逆転。返答を詰まらせた俺を三咲がニヤッと笑う。気遣いが上手い三咲は、人の気持ちを察するのも上手い。俺が内心に消化し切れていないものを抱えていることをあっさり見抜かれた。
『……今回は聞いてくるんだ?』
以前、俺のDomへの悪感情を知りながら踏み込んでこなかった三咲。意地が悪いと思いながらそう返答すると、三咲がまた笑う。
「だって今回は話したいって顔してるよ?」
『お前凄いよほんと…』
叶わないなぁ。思わず苦笑する。話したくないようで話したい。聞いてもらいたい。どうやら俺の気持ちは三咲にはバレバレだったようだ。
『聞いてくれるか?』
「木南にはさんざん恋愛相談に乗ってもらってたしね。なんでも聞きますよ」
自分で考えていてもぐるぐる同じところを回るだけ、か。三咲になら話せる。それだけ俺はこいつを信頼しているし、三咲もそうだろう。しょうがない、腹を括るか。どう言おうか迷いつつ、俺は画面に指を滑らせた。
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