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午後の授業ってなんでこんなに眠いんだろう。春真っ盛りの陽気に爽やかな風。窓際の席は眠気を誘う。
授業も本格的に始まって、内容を聞いておかないといけないのにどうにも気がそれる。俺は成績上位をキープしないと特待生の立場を失ってしまうから尚更だめなのに。
「それじゃあペア作ってー」
若い先生の明るい声にはっと意識が戻される。
「周りの人と誰とでもいいよ」
ちらっと隣を見ると、そいつは前の席のやつと組むみたいだ。それなら俺はどうしようか、いや端っこの1番後ろだから選択肢なんか横か前しかないんだけど。残った選択肢の抹茶くんを窺おうとすると、抹茶くんがくるっと俺のほうを振り返った。
「お前俺とペアでいいか?」
淡々と感情を乗せないその言葉に頷く。
『ありがとう』
と打ち込むと抹茶くんは唇の端を軽く上げてみせた。
「一応言っとくけど俺は木島翔太な」
『俺は木南灯李』
初めて喋る抹茶くんもとい木島くんは自己紹介してくれた。
今日はこの後ずっとペアで問題を解くらしい。渡されたプリントは結構量が多くてげんなりした。
「さっさと終らそう」
他のペアが賑やかに喋る中、俺と木島くんは淡々と問題を解いていく。
木島くんは英語が得意なようだ。俺も英語は好きなほうだから、二人で分担すればすらすら進む。一通り解き終わってお互いの分を交換する。こうやって確認しておけば間違いも減るだろう。2、3問お互い指摘しあって、残り時間の半分ほどを残して課題は終了。俺たちのペアが1番早かった。
提出すると、残り時間は自由にしてていいよとのことだった。なんとなくペアワークをしていた向き合った形のまま座っている木島くんにスマホを向けてみる。
『英語得意なんだな』
「そうか?」
『うん。読解問題解くの速かったし』
「あー、洋楽聞くのに歌詞分からないのが嫌で調べたりするから」
『なるほど』
「お前も英語苦手じゃないだろ」
『洋書を翻訳なしで読みたくて』
「なるほどな」
余計な感情なしに淡々と進む会話が好きだ。
『どんな曲が好き?』
「基本なんでも好き。ロックとか。…でも1番はジャズだな」
きっと俺が驚いた顔をしたからだろう。木島くんはふっと笑った。
「意外か?まあこんな髪の色してるしな」
意外かと言われれば確かに驚いたけれど、でも木島くんの雰囲気とジャズは妙にしっくりくるように感じた。
そのまま伝えると今度は木島くんが少し驚いた顔をする。
「そうか?初めて言われた」
『だってジャズってかっこいいじゃん。それに派手な曲も静かなのもある。木島くんみたいだ』
見た目は緑アッシュのヤンキー。だけど一緒にいてみると落ち着いた雰囲気の居心地のいい人。うん、なんとなくジャズっぽい。
「…そうか」
『うん。木島くんは何か楽器してるのか?』
「木島でいいよ」
『じゃあ俺も木南で』
「ん。俺はギターやってる。ジャズギター」
『ジャズギターってエレキ?それとも違うの?ごめん、俺あんまり詳しくなくて』
「俺がやってるのはアコギ。アコースティックな」
それから授業が終わるまで俺と木島はずっとジャズや音楽の話をしていた。木島の話すペースはどこか緩くて居心地がいい。三咲とはまた違った居心地の良さを感じた。
俺が荷物を詰めていると、木島がさらっと「また明日」と言って片手を上げて教室を出ていった。
思わずふっと唇が弛んだ。
教室内の視線がやたらと俺と木島に集まっていたような気がしたが気にならなかった。
授業も本格的に始まって、内容を聞いておかないといけないのにどうにも気がそれる。俺は成績上位をキープしないと特待生の立場を失ってしまうから尚更だめなのに。
「それじゃあペア作ってー」
若い先生の明るい声にはっと意識が戻される。
「周りの人と誰とでもいいよ」
ちらっと隣を見ると、そいつは前の席のやつと組むみたいだ。それなら俺はどうしようか、いや端っこの1番後ろだから選択肢なんか横か前しかないんだけど。残った選択肢の抹茶くんを窺おうとすると、抹茶くんがくるっと俺のほうを振り返った。
「お前俺とペアでいいか?」
淡々と感情を乗せないその言葉に頷く。
『ありがとう』
と打ち込むと抹茶くんは唇の端を軽く上げてみせた。
「一応言っとくけど俺は木島翔太な」
『俺は木南灯李』
初めて喋る抹茶くんもとい木島くんは自己紹介してくれた。
今日はこの後ずっとペアで問題を解くらしい。渡されたプリントは結構量が多くてげんなりした。
「さっさと終らそう」
他のペアが賑やかに喋る中、俺と木島くんは淡々と問題を解いていく。
木島くんは英語が得意なようだ。俺も英語は好きなほうだから、二人で分担すればすらすら進む。一通り解き終わってお互いの分を交換する。こうやって確認しておけば間違いも減るだろう。2、3問お互い指摘しあって、残り時間の半分ほどを残して課題は終了。俺たちのペアが1番早かった。
提出すると、残り時間は自由にしてていいよとのことだった。なんとなくペアワークをしていた向き合った形のまま座っている木島くんにスマホを向けてみる。
『英語得意なんだな』
「そうか?」
『うん。読解問題解くの速かったし』
「あー、洋楽聞くのに歌詞分からないのが嫌で調べたりするから」
『なるほど』
「お前も英語苦手じゃないだろ」
『洋書を翻訳なしで読みたくて』
「なるほどな」
余計な感情なしに淡々と進む会話が好きだ。
『どんな曲が好き?』
「基本なんでも好き。ロックとか。…でも1番はジャズだな」
きっと俺が驚いた顔をしたからだろう。木島くんはふっと笑った。
「意外か?まあこんな髪の色してるしな」
意外かと言われれば確かに驚いたけれど、でも木島くんの雰囲気とジャズは妙にしっくりくるように感じた。
そのまま伝えると今度は木島くんが少し驚いた顔をする。
「そうか?初めて言われた」
『だってジャズってかっこいいじゃん。それに派手な曲も静かなのもある。木島くんみたいだ』
見た目は緑アッシュのヤンキー。だけど一緒にいてみると落ち着いた雰囲気の居心地のいい人。うん、なんとなくジャズっぽい。
「…そうか」
『うん。木島くんは何か楽器してるのか?』
「木島でいいよ」
『じゃあ俺も木南で』
「ん。俺はギターやってる。ジャズギター」
『ジャズギターってエレキ?それとも違うの?ごめん、俺あんまり詳しくなくて』
「俺がやってるのはアコギ。アコースティックな」
それから授業が終わるまで俺と木島はずっとジャズや音楽の話をしていた。木島の話すペースはどこか緩くて居心地がいい。三咲とはまた違った居心地の良さを感じた。
俺が荷物を詰めていると、木島がさらっと「また明日」と言って片手を上げて教室を出ていった。
思わずふっと唇が弛んだ。
教室内の視線がやたらと俺と木島に集まっていたような気がしたが気にならなかった。
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