ラブミーノイジー

せんりお

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重いバッグをどすっと床に下ろした。殺風景な部屋を見回して一つ息をつく。
ここがこれから3年間の俺の部屋だ。



両親が「ほんとに行くのか?」と心配そうに声をかけてきたのを、笑顔で、でも意志は変わらないと告げて家を出たのが今日の朝の出来事。

俺はこの春からここ、久我山高校で3年間を過ごす。久我山学園は全寮制の男子校だ。金持ちの息子が多く通うこの高校に、特待生として通えることになったのだ。家から出ることも無理を言ってのことなので、余りお金を使いたくない俺としては、学費から生活費まで保証してくれる特待生の立場はありがたい。自分の頭の出来にこの時ばかりは感謝した。


オートロックの部屋に専用の個人カードキーで入ってみると部屋はなかなかに広い。 
部屋の奥には左右に扉があった。試しに片方開けてみるとそこは寝室になっていた。左右に扉があるのはきっともう1人のための寝室だろう。寮は基本二人部屋だと聞いている。まだ俺の同室者は姿を見せていないが。
部屋の中にはある程度の家具は揃っていて生活にはまったく困らなさそうだ。さすがだな…。感心半分、呆れ半分に内心で呟く。
バッグを引きずりながらさっき開けた左側の寝室に足を踏み入れる。まだ何も私物らしきものが置かれていないので俺が使ってもいいはずだ。
生活感のないそこに、明日には段ボールが届くだろう。
勢いよくベッドに腰を下ろすと、そこは軋みもせずにふわっと沈んだ。高校生には贅沢過ぎるそれを少し呆れた目で見てしまった。
まあ今日から俺もそんな所で過ごすのだ。有り難いとだけ思おう、そうしよう。
一人頷いて、俺はそこに寝転んだ。暖かいクリーム色の天井を眺めながら、明日から本格的に始まる寮生活を思って一つため息をついた。同室者とはうまくやっていけるだろうか。俺は人付き合いがとても苦手だ。


住んでいた場所を離れたくて俺は遠方の高校を選んだ。
と、いうのもそれは俺の厄介な事情のせい。


ここでは上手くやっていけるといいな、そう願って俺は静かに目を閉じた。


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