余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人

文字の大きさ
上 下
52 / 93
2章

お姫様は頑張りたい!

しおりを挟む


 「と、取り乱して悪かったわね。その……実は、親しくなりたいって言うのはカインなの」


 フローラは改まった様子で話し出す。
 徐々に声が小さくなっていくフローラの様子は、恥ずかしさに押しつぶされそうになっている乙女そのもの。

 だからアンジェは直ぐにフローラのカインへの想いを悟った。
 それと同時に身分違いの恋、と言う言葉がアンジェの頭の中に駆け巡った。


 「私からしたらもうお二人はとても親しい間柄のように感じましたが…」


 「そ、そう? ま、まぁ? 私とカインだもの、当たり前よね…。けど、それは昔の話よ。もう長くカインとは会ってないわ。だから…会いたいの。そして昔みたいに戻りたいのよ! けど…」


 「けど?」


 フローラの言葉にアンジェが首を傾げた。

 そしてベッドに蹲る人影が突如ベッドへと潜り込み、今にも消えてしまいそうな小さな声で呟いた。


 「今の私じゃ会えないのよ……!!」


 「えっと…何故でしょう?」


 アンジェの言葉にフローラは黙り込む。
 それから暫く沈黙が続いた後、フローラが意を決してた様に語り始める。


 「私はもうずっと部屋に篭り続けてた。だから勿論、お話する相手はベルだけ。お父様もお母様も兄様も…皆、こんな私を嫌ってるわ。でもね、貴方はこんな私に嫌な顔せず接してくれた。ほんとはね、…嬉しかったの。そんな貴方だから真実を話すわ…!」


 「は、はい…!」


 改まった様子で言うフローラに、思わずアンジェは背筋をピンと伸ばして、姿勢を正す。

 ゆっくりと閉まっていたカーテンが開く。
 そしてそこに居た人物にアンジェは一瞬目を見開いた。


 「驚いたでしょ? お姫様がこんな白豚なんて」


 フローラはそう言うと、大きく息を吐いた。

 部屋に篭り続ける生活を送っているせいか、彼女の肌はとても白い。
 そして何よりふっくらとした体型。
 どうやらこの二つの要素を合わせてフローラは、自身を白豚と称したのだろう。


 「が、がっかりしたでしょ? 正直に言っていいのよ?」


 「確かに驚きはしましたけど…。こうして姿を見せてくれたこと、とても光栄に思っていますよ? だって、それだけ私はフローラ様に信頼して貰えている…と言う事だと思いますので。それと…そう自分を卑下しないでください。フローラ様はフローラ様です。お姫様のイメージに囚われなくていいと思います」


 アンジェがニコリと微笑んでそう告げれば、フローラは一瞬瞳を潤ませた。

 フローラがこうして部屋に篭もり始めたのはある出来事が切っ掛けだった。
 まだアンジェに話す勇気は無いけれど、フローラは真っ暗だった暗闇世界に、一つの光を見つけた気がした。


 「何でかしら。まだ出会って間もないのに貴方のこと、凄く信頼してるみたい」


 「そう言って頂けて大変嬉しいです。私、フローラ様のお力になれるように精一杯頑張りますね。と言うことで……早速なのですが、フローラ様がカインさんに会えない理由。それは今の体型が気になっているから…で合っていますか?」


 「そうね…。それと、噂のせいも、ある、わね…」


 「噂ですか?」


 「えぇ。私、色々噂がたってるのよ。中には本当に酷いものがあるわ。だから……カインに失望されてないか不安なのよ」


 フローラはそう言うと、ベッドから降り締め切ったカーテンを開けて窓の外を見つめた。
 その視線の先は宮廷図書館。
 切なさと悲しみに溢れたその瞳に、アンジェの胸が苦しくなった。


 まるで……昔の自分みたいだ。



 「そうだ、アンジェ。もしこの件、成功したら貴方には膨大な報酬をあげるわ! 私に出来ることなんて僅かだろうけど……」


 「報酬は要らない。そう言いたい所ですが、一つお願いがあります」


 「えぇ。何かしら?」


 「容姿、技能、性格、人脈。全てにおいて完璧なご令嬢を探して欲しいんです」


 「それは構わないけど……まぁ、深くは追求しないわ。聞くな、って貴方の顔に書いてあるし。けど……話したくなったら話して頂戴ね」


 フローラはそう言うと、もう一度カーテンを閉めた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

処理中です...