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1章
続編の行方は⇒
しおりを挟む「あぁぁ…つ、疲れた」
パーティーが始まって一時間が経過した頃、アンジェはバルコニーに誰も居ない事を確認するや否や疲労の末、声を上げた。
今回のパーティーでは、多くの貴族達が招待されており、パーティー開始からずっと続いた招待客との顔合わせから漸く解放され、現在は休憩時間としてバルコニーで夜風を浴びていた。
(そう言えば、ノーニアスさん主催のパーティーでもこうやってバルコニーで休憩してたっけ。そしてその時に色々大変だったなー)
アンジェはノーニアス主催のパーティーで起こった出来事を思い出していると…
「あら? お久しぶりね、グレジス夫人」
「……げっ!」
「ちょっと!? げっ! って何です!? 失礼過ぎない!?」
フラグを見事に回収したと言うべきだろうか。
今アンジェの前に居る人物。
それは、ノーニアス主催のパーティーにて出会ったエリーゼだった。
何故此処にエリーゼが居るのだろうか。
アンジェは顔が引き攣るのを感じながらも、彼女は侯爵家の人間なのだからパーティーに招待されていても可笑しくない事に気付く。
「……その、この間のパーティーでは…悪い事をしてしまったわね。謝罪させても?」
「え……あの、変な物でも食べましたか?」
「人が素直に謝ろうとしているのに貴方、失礼過ぎません!?」
エリーゼが心外だと言わんばかりに声を上げる。
しかし、アンジェからしたらプライドの塊の様な女性で、そして挙句の果てにはルーンを侮辱した相手である。
そんな相手が謝罪したいと述べてきたのだ。
怪しむのも無理はない。
咄嗟にエリーゼとの距離をあけるアンジェ。
また飲み物を掛けられたら大変だからだ。
「……まぁ、私があの時あんな事をしてしまったのが原因ですもの。けど……どうか謝罪の言葉だけは耳に入れて欲しい」
エリーゼはそう言うと、ゆっくりと話し出す。
「ルーンは、魔法学院時代の同期で皆の人気者だった。私も、そんなルーンに想いを寄せたわ。真っ直ぐ夢を追いかける姿にね。でも、どんなご令嬢が彼に想いを告げても綺麗に散っていった。だからある子がルーンに尋ねたの。心に決めた人でも居るのかって。だから皆の想いに答えないのかって。そしたら彼、なんて言ったと思う?」
突然の問い掛けにアンジェは戸惑う。
返事に困るアンジェに、エリーゼは小さく微笑むと告げる。
「彼ったら顔を赤くしながら、”あの子”は違うって言ったのよ? 可愛いわよね」
エリーゼは面白可笑しそうに笑った。
そして一方のアンジェは”あの子”の存在が気になって仕方なかった。
なにせ、アンジェはルーンに見合った女性を探している。けれど、中々ルーンに見合った女性が見つからない現状。
そんな中、突如現れたルーンに見合った女性候補。
気にならない方が無理な話だった。
エリーゼはゆっくりと目を細めると、アンジェを穏やかな瞳で見つめる。
「私、貴方に嫉妬してたのよ。まだちんちくりんで、女としても成長しきってない貴方が、ルーンを射止めたことが」
「ちんちくりんは余計です…」
「そう? なら、これから頑張って大きくなるのね。けど……フフ」
「な、何ですか?」
「漸くルーンが言ってた”あの子”が誰なのか何となくだけど分かった気がして」
エリーゼの言葉にアンジェはまるで玩具を与えられた子供のように無邪気な笑みを浮かべ、興味津々と言った瞳を向けた。
エリーゼは一瞬、なぜそんな瞳をアンジェが向けてきたのか理解出来なかった。
もっとここは、妻として旦那の気になる相手!? と顔を真っ青にさせて不安がる表情を見たかったのだが…。
「……まぁ、相手については本人に聞きなさい」
そう言ってエリーゼが視線を向けた。
アンジェもまた、エリーゼの見つめる先へ視線を投げる。
そこには少し頬を赤く染めたルーンの姿があった。
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