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2章
お姫様からのお願い
しおりを挟む「ベル。貴方は席を外してちょうだい。話が脱線するから」
「かしこまりました。けど、人とお話なさる時はちゃんと顔を出された方が宜しいかと」
ベルはそれだけ言うと部屋を後にした。
部屋に沈黙が流れる。
第一王女、フローラ。
名前を聞いたことはあるが、その姿をアンジェは一度たりとも見た事が無い。
パーティーはいつも欠席。
人嫌い、引きこもり、本当は存在するしていないのでは…? と様々な噂がある王女様である。
「……それで質問に答えてくれるかしら? 貴方、どうやって副団長と親しくなったの?」
「えっと…元々国王様主催のパーティーで一度会ったことがあったんです。とは言っても結婚してから暫くして親しくなった…と言った方が正しいかもしれませんけど」
「そう。で、因みに? どうやって親しくなったいったのかしら?」
「お互いの事を……知っていって…? でしょうか」
アンジェの言葉にフローラは表情を曇らせる。
とは言っても、彼女の姿はアンジェには見えないので勿論アンジェはそれに気付いていない。
何故フローラが自分にこんな質問するのか。
考えられる事は一つ…。
(もしかして旦那様狙い…!?)
ここまでしつこく親しくなった経緯等を聞いてくるし、何よりアンジェとルーンの関係が気に食わないと確かにフローラは言った。
それはつまり、フローラがルーンに想いを寄せており、そんな中でアンジェがルーンと結婚してしまった。
だから昔から想いを寄せていたフローラはアンジェが気に食わない……。
そんな想像を膨らませるアンジェ。
「言っておくけど、アンタが考えてる様な事じゃないからっ! ただ私はなかよくなりたい人がいるの。けど、どうやったら仲良くなれるか分からなくて…」
「…そ、そう言うことだったんですね。その、私に出来る限りならばお力になります。なのでその……頑張りましょう!」
そう言ってアンジェは拳を天へと突き上げる。
そんなアンジェの返答にフローラは安堵しつつも少し不安でもあった。
初対面にも関わらず、強く当たりすぎてしまった…。そう後悔していた。
けれど、これまで人と接すること自体を避けていたフローラにとってこうして人と接する事は大いに珍しく、また慣れないものだった。
だからこそ慎重に言葉を選んで、威圧的な態度をとらないようにと心掛けた。
自分を変えたい。
…想い人の隣に堂々と立てる様な存在になりたい。
そう考えたフローラは、アンジェに協力を求めたのだった。
「グレジス夫人。そろそろお仕事に戻らなくてはいけない頃合かと」
ベルの言葉にアンジェは壁に掛けられた時計に目をやる。
そして長い針が十二を示そうとしている事に驚き、慌てた。
どうやらかなり長居してしまったらしい。
もう昼休憩は終了間近。
早く持ち場に戻らなければならない。
「私が転移魔法……って貴方に魔法を掛けるのは駄目なんだった。この魔法道具で図書館まで行きなさい」
フローラの言葉に、ベルがネックレスを差し出した。
ネックレスとは言っても、お洒落なネックレス…と言う訳では無い。
茶色の紐に、魔法陣が彫られた丸い木の板が着いたものだ。
アンジェはネックレスを身につける。
「身につけたらその木の板を握って行きたい所を思い浮かべて。そしたらひとっ飛びだから」
「はい。分かりました」
アンジェは頷くと木の板をギュッと握り締める。
そして図書館司書の控え室を思い浮かべれば、気付けばアンジェの思い描いていた通りに図書館司書の控え室にアンジェはいた。
突如現れたアンジェに、その場にいたシオは手に持っていた本を床に派手に落とした事で、控え室は大パニックになった。
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