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結婚式まであと7日③
しおりを挟むルカがチラリとイレーナを見つめる。
その視線に頷けば、ルカが扉を開けた。
そうすれば、美しい銀色の髪をした麗しい女性が扉の前には居た。
女性は青いドレスを翻し、優雅にニコリと微笑みを向けた。
「お疲れのところ、突然ごめんなさいね」
「いえ。この度は結婚式にお呼び頂き誠にありがとうございます。エリ様」
イレーナがソファーから立ち上がりそう挨拶をすればエリは再び微笑んだ。
「今少しお時間いいかしら?」
「はい、構いませんよ」
承諾すればエリはイレーナと向かい合うようにソファーへと腰を下ろした。
「ルカ。お茶の支度をお願いできるかしら?」
「かしこまりました」
ルカは頭を下げるとお茶の支度をしに部屋を後にした。
そうなれば、部屋はイレーナとエリのみ。
こうして2人きりで話すのは初めてで、妙な緊張感が部屋に走る。
「こうしてお話するのは何度目かしら?」
「そう、ですね…。1度学祭の実行委員でその打ち合わせをした時以来でしょうか」
「そう考えるとかなり前になるわね。本当は貴方とセシルの婚約が破棄された時に挨拶に向かうつもりだったのだけど…」
目をゆっくりと細め、白い頬に手を添えるエリ。
「挨拶に向かった時にはもう貴方はお屋敷に居なかったわ。何でも体調不良で田舎へ療養に向かったって聞いたわ。それで体調の方はどうなの? もう大丈夫なの?」
体調不良なんて元々崩してなんかいない。
そう言ってやろうかと口を開いた……が、それを遮るかのように扉がノックされた。
「エリ様。そろそろお時間が…」
「あら?もうそんな時間なのね…。ごめんなさい、イレーナさん。これからパーティーがあるの。友人達が結婚祝いにって。また日を改めてさせて貰うわ」
この感じどこかであったような…。
なんてデジャブ感を感じていると、エリと目が合った。
エリはニッコリと笑うと言った。
「本当にごめんなさいね、イレーナさん。そうだわ。明日は私もセシルも特に用事は無いし、一緒に食事でもいかが? その時またゆっくり話しましょう。では、御機嫌よう」
何とも一方的な約束の取り付けだろうか…。
嵐のように現れ、そして去っていったエリにポカーンとイレーナは唖然とする。
断る権利など無い。
そう思わされる程の一方的な会話だった。
「…い、行きたくない」
そして零れた本音。
なぜ元婚約者(セシル)とその新たな婚約者(エリ)と食事などしなければいけないのだ。
拷問か何かか?
イレーナはゴロリとソファーに身を委ねる。
今から断れないだろうか。
いや、今からなら間に合うだろう。
そう思い、ソファーから立ち上がれば後方から声が聞こえてきた。
「残念。食事会の準備は既に執り行われてる。恐らく……無理矢理引きずってでもイレーナさんを招待する気だ」
そこにらお茶の支度を終えたらしいルカが居た。
紅茶の心地よい香りが部屋へ広がる。
「…そんな事をして何の意味があるの?」
震えた声でイレーナが尋ねれば、ルカは御盆の上からカップとティーカップを机の上へと並べた。
……お盆の上には元々1つのティーカップしか無かった。
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