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街にて再会
しおりを挟む馬車に揺られながらルカとたわいも無い話をしていると、気づけば空はオレンジ色に染まっていた。
「もう夕方かぁ。時間の流れって早いなー」
「そうだな。もう少しで街に到着するから、今日はその街の宿で休んで……明日の朝出発。って事になってるけど……大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ」
そう答えれば、ルカは手帳にサラサラと書き記していく。
相変わらず几帳面な性格だな…と学生時代の事を思い出し、頬が緩む。
移動中は、思い出話に花が咲いた。
学生時代、2人は1度も同じクラスになった事は無かったが、昼休みや放課後よく図書館で顔を合わせる事が多く、気づけば親しくなっていた。
身分など関係ない。
そう学園は掲げているものの、貴族から平民に対する態度は学園の方針とは違う者が多い。
平民だからと蔑まれるのは当たり前だった。
ルカ自身も学園生活の中で、何度貴族に罵声を浴びせられたかは分からない。
教室に居ては冷たい視線と陰口。聞きたくもない自慢話を聞かされ、最終的には平民は可哀想だととか哀れだとか口々に言い捨てて高笑いしながら去っていく。
そんな時間があまりにも無駄に感じて、ルカは図書館に籠るようになった。
図書館には勉学に励む為に皆真剣に学習に取り組んでいる。そんな場でルカに絡んでくる者は居ないだろう。
そんな思惑で図書館に通うようになれば、思惑通りに誰もルカに絡んでくる事は無くなった。
……ただ1人を除いては。
「にしても、本当にあの時は驚いたよ。突然声掛けられて」
「だって貸出予約に名前があったから…」
「話した事も無かったのに名前を知ってるのも驚いたっけ」
「ルカくん有名人だったから」
確かにルカは良い意味でも悪い意味でも目立つ人物だった。
まず平民での入学生。
イレーナの学年では、ルカとあと数人は居たはずだが、そんな彼らの中でも一際目立つ存在だったのは、試験後に張り出される成績表で常に5位以内に名を連ねていた。
そしてその容姿。
整った端正な顔立ちもまた、良い意味で悪い意味でも目立っていたからだろう。
しかし、やはりそんな成績優秀なルカがましてや伯爵家の使用人を勤めているというのがどうしてもイレーナの中で引っ掛かっていた。
けれど、買いかぶり過ぎだとルカは言った。
____あまり踏み込まれたくない事なのかな?
もしそうだとしたら何故なのだろう?
特に就職先に大きな希望は抱いている様子は無かったが、それでも良い所に就職出来た方がいい…とは言っていた気がする。
しかし、イレーナはルカが過ごした残りの1年の学生生活を知らない。
もしかしたらそこで何かルカを変える事があったのかもしれない。
街に着けば、まずは宿へと向かった。
用意してあった宿はこれまた豪勢な……物では無く、今にも崩れそうな……正に今は我が子のように愛おしい我が家の昔の姿を彷彿とさせる様な宿だった。
「もう空いてる宿がここしか無かったらしい。本当はもっといい所を取るはずだったんだが……」
「私は大丈夫だから!わざわざ宿を用意して貰えただけで嬉しいよ。ありがとう」
せっかく用意して貰った宿なのだ。
不満を垂れては失礼だろう。
そう言い聞かせ、用意された部屋へと向かった。
そして……用意された部屋に入るなりイレーナは手にしていたトランクを落とした。
「イレーナ。久しぶりだな」
「セシ…ル?」
そこにはソファーに腰をかけ、笑みを浮かべたセシルの姿があった。
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