女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人

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「失礼します、プレセアです」

 プレセアは今日もまたリヒトの研究室にやって来た。
 相変わらず部屋の片隅に丸くなって眠るリヒトを見て、せめて保健室のベッドを借りるなどして眠って欲しいものだとプレセアは何度目かも分からない思いを抱いた。

 取り敢えず窓を開けて換気をする。
 カーテンも開ければ陽気な日差しが研究室へと差し込んだ。
 そんな光が眩しかったのだろう。
 リヒトが小さく声を漏らすのが聞こえた。


「リヒト先輩、おはようございます」

「んっ……おは、よう」

「昨日も遅くまで研究されてたんですか?」

「いや、昨日は知り合いに付き合わされてあんまり眠れてなくて……」

 そう言えばリヒトがお城へ定期報告へ行ったあの日、夜は長くお世話になっている人と食事の用事があると話していたことを思い出した。
 あまり気乗りしない様子だったが。

「そう言えば……今日はいつもより来るの早いね」

 リヒトは壁にかけられた時計を見ながら尋ねる。
 確かにプレセアはいつも十時頃に顔を出すのだが、今日は九時と一時間も早い。

「その...一緒に朝食でも、と思って」

 プレセアは手に持っていたバスケットをリヒトへと見せる。
 実は早起きしてメイドと一緒に簡単な朝食を調理してみた。とは言っても、これまで料理の経験など令嬢にある筈も無く、メイドには多大なる迷惑をかけてしまった。

 そもそもこれまで何度かリヒトの食生活を心配し、メイドに軽食を作ってもらったことはあった。
 しかし、今回はディシアから「プレセアも作ってみたら?」なんてとんでもない提案をされた。これには最初、もちろん無理だと声を上げた。たたでさえ料理なんて経験はなく、見苦しい料理が完成してしまう事が容易に想像できてしまった。そんな料理をリヒトに食べてもらうなど......想像するだけでゾッとした。

 だが、一方で思った。
 もし料理をできるようになれば、リヒトのあの乱れに乱れた食習慣を整える事が可能になるのではないか、と。

 リヒトがとても熱心に研究に励んでいることは知っている。
 けど、やはり十分な栄養は摂って欲しい。
 そんな葛藤の結果。メイドに教えて貰いながら、挑戦してみることになった。
 __とは言っても、プレセアがしたのはパンに具材を詰めたりしただけなのだが。

 他にも野菜をきってみたりしたのだが、悔しくも包丁に惨敗。少し左手の薬指まできってしまう始末だ。


「わざわざありがとう。何だかごめんね。研究のお手伝いをお願いしたはずなのに......」

「私がしたくてしている事なので気にしないで下さい」

「ありがとう。けど、本当にしっかりしないとね。自炊始めてみようかな~。いや、その前に掃除からか」

 そう言ってあちこち散らかった部屋を虚ろな瞳で見つめるリヒト。
 気が遠くなるほどの散らかしようなので仕方ない気もする。

「そうだ。せっかくなら外で食べない?」

「え!」

 予想外のリヒトの提案にプレセアは目を丸くした。
 なにせ前一緒に居ると所を他の生徒に見られた際、ひどく慌てた様子だった。
 だからてっきりもうこの研究室以外で二人で過ごす事は出来ないのかもしれない。
 そう思っていたのだ。

「こんなに天気も良いし。こんな暗くて埃っぽい部屋で食べるには勿体ないと思って。実はいい場所知ってるんだ。もちろん、プレセアさんが良ければだけど」

「は、はい!行きます!私、行きたいです!」

 思わず前のめりになってしまう程にプレセアはリヒトからの提案を承諾した。
 一緒に朝食が摂れたら...なんて願いから一気に二人でピクニックという思いもしないイベントに変化してしまった。


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