女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人

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 時は戻り、夕刻。
 プレセアとリヒトは肩を並べながらオレンジ色に染まった廊下を歩いていた。
 

「すみません。私、寝ぼけていたみたいで。大変お見苦しい姿をお見せしてしまって……」

 すっかりオレンジ色に染まった空。
 そんな夕日に照らされた廊下を歩きながら、プレセアは羞恥と申し訳なさに押しつぶされそうになりながら謝罪の言葉を述べる。

 リヒトに頼まれたお使いはあっという間に終わった。
 エリンの優しさに甘え、結局迷いに迷った本を二冊とも頂いてしまった。
 その二冊の本を抱えながら歩くプレセアを横目にリヒトは微笑む。


「うんうん、全然。寧ろ、謝らないといけないのは僕の方だよ。随分と待たせてしまったみたいだし、それに……」


 瞬間、リヒトの頭の中に浮かんだのは、まだ思考があやふやなプレセアに対して行った自分の行いだった。
 幸い、プレセアはその事を覚えていない。

「それに?」

 丸い瞳がリヒトをとらえる。
 吸い込まれそうになる程に美しいその瞳に思わず魅入ってしまいそうになった。

「うんうん。何でもない」

「そう、ですか……」

 誤魔化された事に違和感を感じたものの、あまり踏み込みすぎては迷惑かと思い、踏み止まる。

『これから互いのことを知っていけばいいよ』

 そう言ってくれたエリンの言葉を思い出す。
 無理に距離を縮める必要は無い。

 しかし、そこでプレセアは気づいた。
 プレセアは今年入学したばかりの一年生だが、リヒトは四年生。来年で卒業してしまう。そうなってしまえば、会える機会も今よりもずっと減ってしまう。
 いや、そもそもの話だ。
 この長期休暇が終わったら……リヒトは会ってくれるのだろうか?

 そんな不安がプレセアの中に駆け巡った。

「どうかした?」

「え……?」

「なんだか、難しい顔してたから」

 どうやら表情に出てしまっていた様だ。

「いえ、ただ……長期休暇もあっという間に過ぎてしまうんだろうなと思うと寂しくて」

「それ分かる。学校生活とかけ離れた生活を送るから元に戻すのも大変だし。恋しくなるだよね」

「……リヒト先輩はもう少し御自身の身体のこと考えて生活すべきだと思いますけど?」

「ご、ご最もです……」

 しゅんと項垂れるリヒトを横目にプレセアは内心ホッとした。
 いつもと比べてどこか元気がない様に見えたが、どうやら杞憂だったらしい。

 





 __そんな仲睦まじげや二人を見つめる二つの視線。
 一つは信じられないものを見たかの様に目を大きく見開き、言葉を失っている。
 そしてもう一人は全てが気に食わないかのように鋭い目付きで二人を睨みつけていた。
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