女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人

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「……暇だわ」

 あれから早くも一週間がたった。
 絶賛学生が羽を伸ばしに伸ばす、最高の長期休暇。
 ……のはずだったが、如何せんプレセアには予定がなかった。

「課題はもう終わらせてしまったし、お父様の書斎にある本棚の本もあと少しで制覇してしまう勢いだわ」

 積み重なった読み終えた本たち。
 どれもこれも読み応えのある本だった。
 けれど、読書で時間を潰すには、この長期休暇はあまりにも長すぎる。

 それにあまりにも部屋にこもっている自分にメイドたちが心配そうな視線を向けてくるのだ。
【もしや……お嬢様にはお友達がいないのでは?】
 そんな視線を。

 プレセアにだって友人はいる。
 けれど、学校で顔を合わせれば話す程度の友達だ。
 いや……それはそもそも友達に値するのだろうか?

「……出かけようかな」

 気晴らしに出掛けよう。
 そろそろ外出をしないと家族にも更に心配をかけてしまいそうだ。

 ではどこに出かけようか。
 そう悩んでいると、視界にあのノートが入った。
 プレセアはノートを手に取ると少し考えた後、鞄にしまい、出かける支度を始めた。


 ◇□□


「まさか長期休暇中に学校に来ることになるなんて」

 廊下を歩きながらプレセアはそうこぼす。
 しかし、案外学校には生徒の姿をちらほらと見かけた。
 主に部活動の生徒がほとんどの様で、グラウンドからは活気に溢れた生徒たちの声が聞こえてくる。

 そんな生徒たちを見て、プレセアは眩しい。そう感じた。
 学生生活を満喫しているような。
 そうプレセアには感じたからだ。
 とは言っても、部活動に所属しないのはプレセアが決めたことだったのだが。

「そういえば、何で私部活に入らなかったんだろう....」

 父親に止められた...なんてことは絶対にない。
 なにせ父親は一番といっていいほどプレセアの学園生活を応援してくれている存在だ。
 寧ろ入らなくていいのか?と聞かれた様な気さえする。

 その時、プレセアの視界にある張り紙が入った。
【生徒会メンバー募集中】
 その張り紙から、プレセアは目が離せなくなった。

 そして分かった。なぜ自分が部活動には所属しなかったのか。

「....そうだ。私、生徒会に入りたかったんだ。けど....何で?」

 幼い頃から特に人前に出ることも、率先してリーダーをする様な人柄でもなかった。
 だからこそ、なぜ生徒会という言わば学校のリーダー的存在を目指していたのか全く分からない。
 まぁ、忘れてしまったのは仕方ない。
 所詮それほどの熱意だったのだと自己完結した。

「それ、気になる?」

「え!?」

 その時、突然後ろから声がし、プレセアは弾かれたように振り向いた。
 するとそこには、白衣に身を包んだリヒトの姿があった。

「ごめんね。驚かせた?」

「驚きはしましたが、大丈夫です。そもそもこんな廊下の真ん中に立っていた私が悪いので。通行の邪魔をしてしまって申し訳ありません」

 頭を下げて謝罪をすれば、リヒトは笑った。

「本当にプレセアさんは丁寧だね。けど、大丈夫。僕も別にここ通りたかったわけじゃないんだよ。プレセアさんを見かけたから珍しいなって思って。学校になにか用事?」

 どうやら気遣って声をかけてくれたらしい。
 本当に優しい人だと改めて実感しつつ、プレセアは学校にきた本来の目的を思い出し、ハッとした。

「あ、あの!これから時間ありますか?少し、お聞きしたいことがあって....」

 倒れたところを助けてもらい、少しお茶を共にしたあの日。
 この長期休暇の間、リヒトは学校の研究室にこもると話していたのだ。
 だからプレセアは学校に足を運んだのだ。

 プレセアの言葉にリヒトがチラリと壁にかけられた時計を見た。
 もしかしたこれから用事があるのかもしれない。
 また日を改また方がよさそうだ。

 と、思ったのだが。

「いいよ。話は研究室で聞いてもいいかな?」

「は、はい..!」

 承諾を貰え、プレセアは安堵した。


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