1 / 33
プロローグ
しおりを挟む
音で溢れていた世界が一気に静寂に包まれた様な気がした。
そして同時に頭が真っ白になっていった。
手にしていたノートを……思わずギュッと強く抱きしめる。
長期休暇が目の前までに迫ってきて……私はこの休暇の間、彼に少しでも会える時間が欲しかった。
三ヶ月前から考えていた数々のプラン。
商店街で食べ歩き。アクセサリーショップでお揃いのアクセサリーを買う。遠出して、観光地を回ったり……。
考えたプランは山のようにあった。
__貴方に楽しんでもらいたくて、笑ってほしくて。
__でも、やっぱり私では駄目だったみたい。
「俺、アリアの事が好きだ」
「ルイス様……」
婚約者のルイスの視線の先に居る人物は、友人のアリアだった。
二人の表情は何故かぼやけて見えなくて……けど、その声だけで痛い程よく分かった。
愛おしそうに彼女の名を呼ぶルイス。
そしてそれに答えるように、また彼の名を呼ぶアリア。
私は……彼にそんなふうに名前を呼ばれたことなんて一度も無いのに。
__羨ましい。とても……とても。
胸が張り裂けそう。
息が苦しくて、まるで水の中に居るみたい。
アリアにはよく、ルイスとの事で相談にのってもらっていた。
どこかよそよそしくて、避けれている様な気がして……。
不安になった私はアリアに相談をしていたのだ。
ねぇ、アリア。
私が相談をしている時、貴方は親身になって相談にのってくれていたわ。
けど、本当は心の何処かで私のこと、嘲笑っていたの?
絶対に叶うはずの無い、私の恋を、悩みを聞いて貴方は何を感じていたの?
答えなんて返って来ない事くらい分かっているのに、私はむしゃくしゃした気持ちを晴らすように問いかけていた。
……私はルイスを心から愛している。
彼と出会って十年が経ったが、初めて会ったあの日から、ずっとずっと……。
けど、ルイスは私と同じ気持ちでは無いというのは……何となくだけど、気づいていた。
だって、いつまで経ってもルイスは私に対して「友人」様に接してくるのだから。
でも……それでも良かった。
ルイスの隣に居られるのなら、何でも良かったの。
だから自分の思いに蓋をして、自分の気持ちを押し付けずに、彼の気持ちを尊重してきた。
けど……こうなるのなら少しでも我儘を言っておけば良かった。
もっと自分の気持ちに素直になっておけば良かった。
「私もルイス様の事をずっと……お慕いしておりました」
「アリア……。凄く、嬉しい」
喜びを噛み締めたようなルイスの声。
そんな声、久々に聞いたなぁ…。
きっと、私が見たことの無いような笑顔をアリアに向けているんだろうな……。
頬を伝う涙を拭う事も出来ないまま、声を押し殺しながら、私はその場に崩れ落ちた。
そして同時に頭が真っ白になっていった。
手にしていたノートを……思わずギュッと強く抱きしめる。
長期休暇が目の前までに迫ってきて……私はこの休暇の間、彼に少しでも会える時間が欲しかった。
三ヶ月前から考えていた数々のプラン。
商店街で食べ歩き。アクセサリーショップでお揃いのアクセサリーを買う。遠出して、観光地を回ったり……。
考えたプランは山のようにあった。
__貴方に楽しんでもらいたくて、笑ってほしくて。
__でも、やっぱり私では駄目だったみたい。
「俺、アリアの事が好きだ」
「ルイス様……」
婚約者のルイスの視線の先に居る人物は、友人のアリアだった。
二人の表情は何故かぼやけて見えなくて……けど、その声だけで痛い程よく分かった。
愛おしそうに彼女の名を呼ぶルイス。
そしてそれに答えるように、また彼の名を呼ぶアリア。
私は……彼にそんなふうに名前を呼ばれたことなんて一度も無いのに。
__羨ましい。とても……とても。
胸が張り裂けそう。
息が苦しくて、まるで水の中に居るみたい。
アリアにはよく、ルイスとの事で相談にのってもらっていた。
どこかよそよそしくて、避けれている様な気がして……。
不安になった私はアリアに相談をしていたのだ。
ねぇ、アリア。
私が相談をしている時、貴方は親身になって相談にのってくれていたわ。
けど、本当は心の何処かで私のこと、嘲笑っていたの?
絶対に叶うはずの無い、私の恋を、悩みを聞いて貴方は何を感じていたの?
答えなんて返って来ない事くらい分かっているのに、私はむしゃくしゃした気持ちを晴らすように問いかけていた。
……私はルイスを心から愛している。
彼と出会って十年が経ったが、初めて会ったあの日から、ずっとずっと……。
けど、ルイスは私と同じ気持ちでは無いというのは……何となくだけど、気づいていた。
だって、いつまで経ってもルイスは私に対して「友人」様に接してくるのだから。
でも……それでも良かった。
ルイスの隣に居られるのなら、何でも良かったの。
だから自分の思いに蓋をして、自分の気持ちを押し付けずに、彼の気持ちを尊重してきた。
けど……こうなるのなら少しでも我儘を言っておけば良かった。
もっと自分の気持ちに素直になっておけば良かった。
「私もルイス様の事をずっと……お慕いしておりました」
「アリア……。凄く、嬉しい」
喜びを噛み締めたようなルイスの声。
そんな声、久々に聞いたなぁ…。
きっと、私が見たことの無いような笑顔をアリアに向けているんだろうな……。
頬を伝う涙を拭う事も出来ないまま、声を押し殺しながら、私はその場に崩れ落ちた。
704
お気に入りに追加
3,423
あなたにおすすめの小説

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。


【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。
王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。
友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。
仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。
書きながらなので、亀更新です。
どうにか完結に持って行きたい。
ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

結婚しましたが、愛されていません
うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。
彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。
為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる