女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人

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プロローグ

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 音で溢れていた世界が一気に静寂に包まれた様な気がした。
 そして同時に頭が真っ白になっていった。

 手にしていたノートを……思わずギュッと強く抱きしめる。

 長期休暇が目の前までに迫ってきて……私はこの休暇の間、彼に少しでも会える時間が欲しかった。
 三ヶ月前から考えていた数々のプラン。
 商店街で食べ歩き。アクセサリーショップでお揃いのアクセサリーを買う。遠出して、観光地を回ったり……。
 考えたプランは山のようにあった。


 __貴方に楽しんでもらいたくて、笑ってほしくて。


 __でも、やっぱり私では駄目だったみたい。


「俺、アリアの事が好きだ」

「ルイス様……」


 婚約者のルイスの視線の先に居る人物は、友人のアリアだった。
 二人の表情は何故かぼやけて見えなくて……けど、その声だけで痛い程よく分かった。

 愛おしそうに彼女の名を呼ぶルイス。
 そしてそれに答えるように、また彼の名を呼ぶアリア。

 私は……彼にそんなふうに名前を呼ばれたことなんて一度も無いのに。


 __羨ましい。とても……とても。


 胸が張り裂けそう。
 息が苦しくて、まるで水の中に居るみたい。


 アリアにはよく、ルイスとの事で相談にのってもらっていた。
 どこかよそよそしくて、避けれている様な気がして……。
 不安になった私はアリアに相談をしていたのだ。

 ねぇ、アリア。
 私が相談をしている時、貴方は親身になって相談にのってくれていたわ。
 けど、本当は心の何処かで私のこと、嘲笑っていたの?
 絶対に叶うはずの無い、私の恋を、悩みを聞いて貴方は何を感じていたの?

 答えなんて返って来ない事くらい分かっているのに、私はむしゃくしゃした気持ちを晴らすように問いかけていた。


 ……私はルイスを心から愛している。
 彼と出会って十年が経ったが、初めて会ったあの日から、ずっとずっと……。
 けど、ルイスは私と同じ気持ちでは無いというのは……何となくだけど、気づいていた。
 だって、いつまで経ってもルイスは私に対して「友人」様に接してくるのだから。

 でも……それでも良かった。
 ルイスの隣に居られるのなら、何でも良かったの。
 だから自分の思いに蓋をして、自分の気持ちを押し付けずに、彼の気持ちを尊重してきた。

 けど……こうなるのなら少しでも我儘を言っておけば良かった。
 もっと自分の気持ちに素直になっておけば良かった。


「私もルイス様の事をずっと……お慕いしておりました」

「アリア……。凄く、嬉しい」


 喜びを噛み締めたようなルイスの声。
 そんな声、久々に聞いたなぁ…。
 きっと、私が見たことの無いような笑顔をアリアに向けているんだろうな……。


 頬を伝う涙を拭う事も出来ないまま、声を押し殺しながら、私はその場に崩れ落ちた。


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