女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人

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長期休暇を控えた学園はいつにもまして活気に溢れている様に感じられる。
友人たちと旅行の計画を立てるもの。
職員室へ赴き、疑問点を無くしていくもの。
そして……甘い雰囲気を漂わせ、デートのプランを企てている者も居た。

そして……子爵令嬢のプレセアもまたその一人であった。
とは、言っても彼女の場合は一人で模索し、最高のプランを練っている側であったが。

夜空のような紺色の二つに結った髪が、彼女が一生懸命に紙にペンを走らせる度にゆらゆらと揺れている。
そして星の様に鮮やかな金色の瞳は、文字を綴る度に輝きを増していく。

最後の文字を書き終えたあと、プレセアは意気込む様にもう一度目を通す。
長期休暇の始まる三ヶ月程前からひっそりと考えていた計画。
プレセアの婚約者であるルイスは今年で学園を卒業する。
つまり、最後の夏の長期休暇となる。
婚約者として最高の夏の思い出を贈りたい。
ルイスの喜ぶ顔が見たい。
彼と最後の思い出・・・・・・・・が欲しい。

そんな思いで作ったプランは気づけば山の様に完成した。
けれど、こんなに多くのプラン。幾ら長期休暇であったとしても全て行うのは難しいだろう。
だから欲張らずに一つだけにすることにした。

誤字脱字の確認を行った後、プレセアは髪を解く。
そして手鏡を見ながら容姿を整えた後、三年生の教室へと急いだ。

__突然行ったら困らせてしまうだろうか。

__いや。寧ろ、喜んでくれるかもしれない。

__長期休暇、一緒に過ごしてくれるだろうか。

__最近、お誘いしても中々都合が合わないことばかりだったからなぁ。

浮足立った足取りで、プレセアは三年生の教室へと向かっていると

「ルイスくんなら教室には居ないよ」

「え?」

「中庭に行くのをさっき見かけたから」

突然声を掛けられ、プレセアは目を見張る。

三年生の教室へ続く廊下を二年生を示す青いネクタイの生徒が歩いている事から誰かに用事がある……という想像はつくだろう。しかし、何故その人物がルイスだと分かったのだろうか。
そして何より、探し人の居場所を親切に教えてくれたその相手は、何故か白衣に身を包んでいた。
制服を着崩しており、ネクタイを身に着けていないため学年が分からない。
しかし、三年生の教室のある方向から歩いてきたことや、ルイスに対して親しい呼び方をしている事から三年生だと思われる。
何より雰囲気だろうか。
漆黒の髪色と、虚ろな灰色の瞳。
大人びて、少し気怠げな独特な雰囲気を醸し出した人物である。

親切な先輩にプレセアは感謝を述べる。

「教えて頂きありがとうございます。中庭に行ってみます」

プレセアは頭を下げると、中庭へと向かったのだった。



__その後の事は、あまり思い出したくない。


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