63 / 78
パン屋がやってきた編
61 いろいろ作ってみた
しおりを挟むルゲル村に帰ってきた私達。
あの後盗賊は遠くから駆け付けて来てくれた冒険者さんに預けたし、今頃街の人達は安心してのびのびと過ごせている事だろう。
何だか私まで嬉しくなってきちゃった。
「こんちは、エデン。何だか御機嫌だな」
「あ、ロキさん。こんにちは。分かります?」
鼻歌を歌っている私に声を掛けてきたのはロキさんだった。
小さな荷車を引いているロキさん。
その荷車の中には木材やペンキ、それからノコギリなどが入っていた。
「何か作るんですか?」
「あぁ。このルゲル村に繋がる入口の看板古くて全く使えないんだ。だから新しいのを作ろうかなって。あとベンチとか憩いの場も作れたらなーって思っててな」
確かに町長さんもルゲル村の名前は知ってるけど何処にあるかは知らないって言ってたっけ。もしかした看板が見えないのが原因なのかな?
それなら私がやる事は一つだ。
「あの、手伝わせて下さい!」
「え? でもエデン、お前忙しいだろう?」
「チラシ配りは終わりました。食材収集も終わりました。これからユウさんのお手伝いを……と思ってたんですけど私、料理出来ないし……」
パン作りのお手伝いをしたい所なんだけど、私は料理が一切できない。
一度だけ簡単な料理を作ってみたんだけど結果は最悪。丸焦げとなり何が何だか分からない物となりアンくんに叱られてしまった。あれから私は一度もキッチンには立ってない。そんな私が厨房に入っても邪魔なだけだ。ならばこうして体を張る仕事の方が得意なのでこちらをした方が良いに決まってる。
「じゃあお願いしようかな。頼めるか、エデン?」
「勿論です! 任せてください」
私が胸を張りそう言えばロキさんが笑った。
ロキさんの笑顔は何だか落ち着く。
長女の私だから感じる事かもしれないけどロキさんはお兄さんという感じがするのだ。兄貴肌の彼と一緒に居ると守ってくれそうな……簡単に言えば安心出来る人だ。
早速私達は看板作りに取り掛かった。
まずは看板の形を決めていく。
話し合いの結果細長い丸の看板を作る事にした。
ロキさんが細長の丸の形にノコギリで切っていく。
見ていてロキさんが相当器用な事が分かった。
だって鉛筆を忘れて型取りが出来なかったのをノコギリ一発で綺麗な細長の丸に切ってしたったのだから。
看板のデザインは私に任された。
私がデザインを考えている間ロキさんは次の作業に取り掛かっていてペース配分も完璧で本当に凄いと改めて思わされた。
私はペンキを取り、絵を描く。
この看板を見て思わずルゲル村に行ってみたくなるような……そんな看板になったらいいなと思いながら。
そして……
「出来ました~!」
私はペンキの入ったバケツを片手に座り込んだ。
やっと完成した看板。
そこには動物、人間が楽しそうにパンを頬張っているものだった。その周りにはルゲル村らしいものを描いた。自分で描いて言うのも何だけど、かなり良いものになったと思う。
ロキさんが看板を見るなり二っと歯を見せて笑った。
「エデンは絵が上手いな! うんうん……いい出来だ!」
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
素直に褒められ私は凄く嬉しくなった。
「あの、他にお手伝い出来ることは?」
「ベンチも色で……と思ったんだがルゲル村らしく木のベンチでいこうと思ってるんだ」
「確かにそうですね。私も賛成です」
「良かった。他にもテーブルもいくつか作ってみた。今から配置していこうと思うから手伝ってくれるか?」
ロキさんの後ろには五つの丸テーブルからベンチ、それと椅子が置いてあった。
まさかロキさん……私が看板を塗ってる間一人で作っちゃったの!?
思わず目を見張る私にロキさんが笑った。
「ま、器用だから」
「き、器用って問題を遥かに超えてますよ、これ……」
10
お気に入りに追加
5,662
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる