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パン屋がやってきた編
56 魅惑の蜜
しおりを挟む翌日私はユウさんに貰った取ってきて欲しいという食材のリストを片手に森の中をルカと探索していた。
ルカはくんくんと鼻を動かしながら、元気よく歩いている。
それに本当に鼻が効くらしく、次々に木の実を見つけてくれるのだ。
「エデンさん! 私、役に立ててますか?」
「うん。そりゃあ物凄く」
私の言葉に安心したのかルカは満足気に笑う。
あー……ほんと可愛い。
採取が終わったらいっぱい褒めてあげなきゃね。
「こっちに木の実があります!」
ルカはそう言うと、勢いよく駆け出して行った。
私は慌ててその後を追う。ランク替えがあって現在この森にいるのはBランクのモンスター。そんなモンスター相手にルカが対等に戦えるかとなれば不安だった。
「ひゃ!?」
小さな悲鳴が聞こえた。
それがルカのものだなんて直ぐに理解出来た私は急いでルカの元へと走った。そしてやっと先に行ったルカの姿を見つけたと思ったらルカが蔦に絡まれ、逆さになって宙に浮いている所だった。
「エデンさぁぁぁん!」
泣き目のルカ。
必死でスカートが下がらないようにしている。
「待ってて! すぐに助けるから!」
私はそう言いルカを安心させようと試みる。
ルカは小さく頷くと口を閉じた。
「ルカ、大丈夫?」
「は、はい……ありがとうございますエデンさん」
その後直ぐにルカを救出した私。
取り敢えず魔剣を出して思いっきり蔦を切り、その後に隠れていたモンスターを見つけ出し倒した。
モンスターの名前はクレージーフラワー。
Bランクのモンスターで、大きな花の顔に鋭い牙と長い蔦の手を何本も持っているモンスターである。
「でも、エデンさんはやっぱり凄いです! 私、感動しましたっ!」
「大袈裟だよ。けど、ありがと」
「はい!」
嬉しそうに笑うルカ。
あー、本当に可愛いなぁ。
そんな事を思いながらもルカに1人で先には言ってはいけないと強く言い聞かせた。またこうしてモンスターに絡まれたりしたら大変だし、何より私の身がもたないのだ。
「あの、エデンさん! このモンスターから甘い匂いがします!」
「確かに……なんか蔦のとこから何か液がしたってる……」
どうやらその液がこの甘い香りの正体らしい。
私はその液を指で救い、香りを嗅いでみる。
うん、やっぱりそうだ。
えっと……何なに?
_________________
名前 魅惑の蜜
品質 B
レア度 ☆☆
説明 クレージーフラワーなどから取れる蜜。
食べたら病み付きになるとされている。
_________________
鑑定眼のおかげでこんなにも詳しい情報が見れる。
獲得したばかりの時はランクぐらいしか分からなかったけど、どうやら私の成長と共にこの鑑定眼もレベルアップしたらしく、人間相手やモンスター相手だとなんとステータスとかも分かっちゃうようになった。
こうした物質に関しては品質と説明とかいろいろ分かるから便利である。
「ルカ。この蜜食べれるらしいよ」
「そうなんですか!? た、食べてみたいですっ!」
甘い香りに誘惑されていたのかルカの口からはヨダレが垂れていた。
私はくすくすと笑いながらも、「いいよ」と言った。
ルカは嬉しそうに頷くと、私の指についていた蜜をペロリと舐めた。
あ……そこの蜜舐めるのね。
ちょっとビックリしたけど可愛いからいいや。
「んんん!! お、美味しいです!!」
「どれどれ……おぉ……これは美味しい」
私も舐めてみる。
うん、凄く美味しい。
魅惑の蜜って言うのも分かるかも。
「これ、持って帰ろうかな。この蔦を絞ったら出てくるかな?」
「やってみましょう!」
私とルカはクレージーフラワーの蔦を絞ってみる。
すると
「おぉ!」
「はわわわ!」
大量の蜜が出てきた。
私は慌てて収納ボックスに入れていた瓶を取り出し、魅惑の蜜を入れる。
蜂蜜があればと思い持ってきた瓶だったけど、まさかここで使う事になるなんて……。
よし! どんどん採取していこう!
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