58 / 78
パン屋がやってきた編
56 魅惑の蜜
しおりを挟む翌日私はユウさんに貰った取ってきて欲しいという食材のリストを片手に森の中をルカと探索していた。
ルカはくんくんと鼻を動かしながら、元気よく歩いている。
それに本当に鼻が効くらしく、次々に木の実を見つけてくれるのだ。
「エデンさん! 私、役に立ててますか?」
「うん。そりゃあ物凄く」
私の言葉に安心したのかルカは満足気に笑う。
あー……ほんと可愛い。
採取が終わったらいっぱい褒めてあげなきゃね。
「こっちに木の実があります!」
ルカはそう言うと、勢いよく駆け出して行った。
私は慌ててその後を追う。ランク替えがあって現在この森にいるのはBランクのモンスター。そんなモンスター相手にルカが対等に戦えるかとなれば不安だった。
「ひゃ!?」
小さな悲鳴が聞こえた。
それがルカのものだなんて直ぐに理解出来た私は急いでルカの元へと走った。そしてやっと先に行ったルカの姿を見つけたと思ったらルカが蔦に絡まれ、逆さになって宙に浮いている所だった。
「エデンさぁぁぁん!」
泣き目のルカ。
必死でスカートが下がらないようにしている。
「待ってて! すぐに助けるから!」
私はそう言いルカを安心させようと試みる。
ルカは小さく頷くと口を閉じた。
「ルカ、大丈夫?」
「は、はい……ありがとうございますエデンさん」
その後直ぐにルカを救出した私。
取り敢えず魔剣を出して思いっきり蔦を切り、その後に隠れていたモンスターを見つけ出し倒した。
モンスターの名前はクレージーフラワー。
Bランクのモンスターで、大きな花の顔に鋭い牙と長い蔦の手を何本も持っているモンスターである。
「でも、エデンさんはやっぱり凄いです! 私、感動しましたっ!」
「大袈裟だよ。けど、ありがと」
「はい!」
嬉しそうに笑うルカ。
あー、本当に可愛いなぁ。
そんな事を思いながらもルカに1人で先には言ってはいけないと強く言い聞かせた。またこうしてモンスターに絡まれたりしたら大変だし、何より私の身がもたないのだ。
「あの、エデンさん! このモンスターから甘い匂いがします!」
「確かに……なんか蔦のとこから何か液がしたってる……」
どうやらその液がこの甘い香りの正体らしい。
私はその液を指で救い、香りを嗅いでみる。
うん、やっぱりそうだ。
えっと……何なに?
_________________
名前 魅惑の蜜
品質 B
レア度 ☆☆
説明 クレージーフラワーなどから取れる蜜。
食べたら病み付きになるとされている。
_________________
鑑定眼のおかげでこんなにも詳しい情報が見れる。
獲得したばかりの時はランクぐらいしか分からなかったけど、どうやら私の成長と共にこの鑑定眼もレベルアップしたらしく、人間相手やモンスター相手だとなんとステータスとかも分かっちゃうようになった。
こうした物質に関しては品質と説明とかいろいろ分かるから便利である。
「ルカ。この蜜食べれるらしいよ」
「そうなんですか!? た、食べてみたいですっ!」
甘い香りに誘惑されていたのかルカの口からはヨダレが垂れていた。
私はくすくすと笑いながらも、「いいよ」と言った。
ルカは嬉しそうに頷くと、私の指についていた蜜をペロリと舐めた。
あ……そこの蜜舐めるのね。
ちょっとビックリしたけど可愛いからいいや。
「んんん!! お、美味しいです!!」
「どれどれ……おぉ……これは美味しい」
私も舐めてみる。
うん、凄く美味しい。
魅惑の蜜って言うのも分かるかも。
「これ、持って帰ろうかな。この蔦を絞ったら出てくるかな?」
「やってみましょう!」
私とルカはクレージーフラワーの蔦を絞ってみる。
すると
「おぉ!」
「はわわわ!」
大量の蜜が出てきた。
私は慌てて収納ボックスに入れていた瓶を取り出し、魅惑の蜜を入れる。
蜂蜜があればと思い持ってきた瓶だったけど、まさかここで使う事になるなんて……。
よし! どんどん採取していこう!
13
お気に入りに追加
5,665
あなたにおすすめの小説
転生令嬢は腹黒夫から逃げだしたい!
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
華奢で幼さの残る容姿をした公爵令嬢エルトリーゼは
ある日この国の王子アヴェルスの妻になることになる。
しかし彼女は転生者、しかも前世は事故死。
前世の恋人と花火大会に行こうと約束した日に死んだ彼女は
なんとかして前世の約束を果たしたい
ついでに腹黒で性悪な夫から逃げだしたい
その一心で……?
◇
感想への返信などは行いません。すみません。
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです
もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。
この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ
知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ
しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる