烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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パン屋がやってきた編

55 収納ボックス

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 「エデンさん。俺、ルゲル村を表現できるようなパンを作りたいんですけど何かアイデアとかありますか?」

 ギルドにて新作のパンを考えていたユウさんが私にそう尋ねてきた。
 私は首を傾げながらその質問に答える。

 「そうですね……やっぱりこの村らしく木の実を使うとかでしょうか?」

 「確かにこの村には珍しい木の実が沢山ありますね」

 「はい。それとやっぱりインパクトが大切だと思うのでパンの見た目をちょっと工夫してみるのとかどうでしょう?」

 「可愛らしいものだったら女性のお客さんも喜んでくれそうですしね!」

 そうやって新作のパンについて話していく。
 話はどんどん盛り上がり、いろいろなアイデアが出た。
 例えば動物の顔のパンとか、健康的なサンドイッチを売るのはどうかとか、激辛パンなどなどアイデアは様々だった。

 「エデン ちょっといいか?」

 「村長! は、はい。今行きます!」

 ギルドの奥の部屋から顔を出した村長から突然呼ばれ慌てて向かう。
 私も村長に丁度聞きたい事があったんだった。
 村長に部屋へともてなされ、私はソファーに腰を掛けた。

 ここはギルドマスターの為の書斎である。
 あちらこちらに難しそうな本が沢山あって、思わず手を伸ばしたくなる衝動を必死で堪えた。

 「エデン。実は折り入って頼みがあるんだ」

 真剣な瞳でそう言われ、思わず力がこもる。
 何かあったのかな……?
 若干不安になってきた。

 「エデン宛に手紙が届いていたんだがその内容がエデンと手合わせしたいっていう冒険者からだったんど。何処から情報が漏れたのか差出人は君がSランクの冒険者である事を知っているらしい」

 「私、争い事は嫌いなんですけど……」

 「あぁ。本当に困った奴も居たもんだな」

 ほんと、その通りである。
 一体何処から情報が漏れてしまったんだろう?
 思い当たる節がいくつもあるけどあまり信じたくない。

 私は大きなため息を吐いた。
 
  「そうだ。実は私、収納ボックスを使えるようにしたいんですけど、コツとかありますか?」

 「コツも何もイメージと経験だよ。因みに俺は使えるようにはなれなかったな。数十年粘ったが無理だった。まぁ、そう簡単に出来てしまっても困るがな!」

 豪快に口を開け笑う村長。

 収納ボックスを使うにはイメージと経験が必要なのか……。

 取り敢えず、沢山のものが入れられて、尚且つ出し入れも可能。そして収納ボックス内で時間経過もしない完璧な収納ボックスがいいな。

 そんなイメージを浮かべていると……

 宙に魔法陣が突如現れた。

 「あの、これってもしかして……」

 「もしかも何も収納ボックスだっ! エデン。お前は本当に凄いやつだな! これはたまげたぞ! 」

 大きく目を見開き、大きな声を上げる村長。
 どうやらこの収納ボックスは魔法陣から出し入れ出来るらしい。
 まさかこんなにも早く習得しちゃうだなんて自分でもビックリした。

 試しにポケットに入れたハンカチを水に濡らし、収納ボックスへと入れてみた。

 「これは中々便利ですね」

 「まさか俺が数十年かけても出来なかった収納ボックスをこうも簡単に使えるようになってしまうとは……悔しいが才能だな! いやー! こりゃあ驚いたよ」

 村長の大きな声がまたまた書斎に響き渡った。
 この収納ボックスがあればきっと木の実の採取は楽になりそうだ。

 


 ***********


 

 「お師匠、おかえり!」

 「エデンさん。お帰りなさいです!」

 家に帰るなりアンくんとルカが笑顔で出迎えてくれた。
 私は2人にランク替えの事とユウさんの提案について話した。

 「私、鼻が効くんです! エデンさんと食材採取します! そしてエデンさんの役にたちたいです!」

 「俺はパン屋の人の手伝いしようかな。パン作ってみたかったし」

 「2人とも…………あ、ありがとぉぉぉ!!」

 勢いよく2人に飛びつきギュッと抱きしめれば、ルカの嬉しそうな声とアンくんの照れくさそうな声が聞こえてきた。
 私は料理が出来ない。だから厨房には立つことは出来ないけど、アンくんは料理が出来る。もしかしたらユウさんのパン作りの手伝いが出来るかもしれない。

 2人の優しさに感謝しながら私は宣伝用のチラシ作りを始めた。


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