烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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錬金術師と魔導師編

43 魔力を注ぐ仕事

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 クロートの家へと来てから3週間がたった。
 今日もいつも通り暇な時間を過ごすのだろうか?
 ゴロンとベッドの上に転がり天井を見つめているとコンコンと扉がノックされ、はーい、と返事を返せば扉越しからクロートの声が聞こえてきた。

「エデン。手伝って欲しいんだけど……」

「うん。今行くね」

 そう答えれば、リリアがぱあっと表情を明るくさせた。

 【さっきの声が冷徹の錬金術師ね!?】

 「うん。この家の主のクロートだよ」

 【光の精霊王としてどうしても御礼が言いたかったの! 仲間を助けてくれた冷徹の錬金術師に!】

 リリアはそう言うと、早く行きましょう! と私の肩にちょこんと座る。
 この三週間ずっとクロートは仕事場にこもっていたのでやっとクロートに会えることが嬉しかったのかリリアの表情はとても明るい。
 私は、はいはい、と答えながらクロートの仕事場へと向かった。





 ***********






 仕事場に着けばクロートが目を大きく見開き、唖然としていた。
 その視線は明らかに私の肩にいっていた。

 「えっと……クロート、この子ね」

 【初めまして、クロート! 私はリリア。光の精霊王よ! 貴方に会える事をとても楽しみにしていたわ。これからよろしくね!】

 「あ、あぁ。よろしく……て言うかエデンって精霊の加護貰ってたんだな……」

 「実は私もまだ知ったばかりなんだ。元々は持ってなかったものだから」

 私の言葉に益々クロートが目を見開く。
 まぁ、そうなるよねー……

 リリアが言うには精霊の加護とは生まれつき備わっているものらしい。だからクロートが驚くのも当然だ。
 だって生まれつき持ってたって訳じゃないのだから。
 全てのステータスが1000になった途端って訳でも無いけど、明らかにそれが関係しているようにしか私には思えない。

 クロートがジーッとリリアを見つめる。
 一方のリリアもクロートをジーッと見つめている。
 お互い全く視線を逸らさない。

「えっと……ねぇ、リリア。貴方、クロートに御礼を言いたかったんだよね?」

 【そうよ! 忘れかけてたわ! クロート、私は貴方に御礼が言いたかったの。私の仲間である光の精霊を助けてくれたことを】

 「…………あぁ」


 あれ?
 思わず私は2度見してしまった。
 だってクロートの表情が明らかに暗くなったから。
 それに何だかとても苦しそうに見えた。

 「多分、それ俺の事じゃない」

 【え?】

 「え?」

 クロートの言葉に私とリリアの声が重なった。

 「何の精霊かは忘れたけど、昔確かに精霊を助けたことはある。けど主に精霊達を助けたのは俺じゃなくて別の人だ」

 淡々と言うクロートに私とリリアは顔を見合わせる。
 何だか……訳ありみたい。

 少しの沈黙が走り、空気が重くなる。
 そんな空地を打ち消したのは勿論リリアだった。

 【いいえ! それでも助けてくれたことには変わりないわ! ありがとう、クロート! 感謝しているわ!】

 こういう明るくて元気なところ、私は良いなと思う。
 きっとこれからリリアのこういう明るい所に助けられていくんだろうな。
 何となくだけど私にはそう思えた。


 「まぁ、その話は置いといて……エデン。早速だけどこの間みたいにここにある瓶全部に魔力を注いでくれるか?」

 クロートが指を指す。
 私は指がさされた方を見つめる。するとそこには大量の瓶があった。ざっと見た感じで軽く100は超えてそうな数の瓶。これに全て魔力を込めるとすれば相当な時間が掛かるだろう。

 「普通の奴だったらこれ全てに魔力を注ぐ前に魔力が底尽きるだろうけど、出来るか?」

 「た、多分……出来る思う」

 そう私が答えれば、クロートは小さく微笑むと椅子を持ってきて私に勧めた。私はその椅子に腰を下ろし、瓶に手を伸ばす。

 中身はこの間の瓶と同じ色の液体。
 確か薬って言ってた気がするけど、何の薬なんだろう?

 いや、今はそんな事は考えずにさっさと終わらせてしまおう。そして早くここを飛び出して皆の元へ帰らなくちゃ。
 アンくん……元気にしてるかな?
 ルカ、泣いてないかな??
 ミレイはきっと怒ってるだろな……
 グランジュエには御礼を言わなくちゃ……

 あー……集中出来ない。


 【ねぇ、エデン。こんな話知ってる?】

 「何?」

 【昔、1人の女性がいました。彼女は精霊の加護を受けた特別な女性でした。でも彼女は病弱で、流行りの病気で命を落としてしまいした。そんな彼女を助けるべく、1人の青年はずっとずっと薬の研究を行ってきました。そう、死者を蘇らせる薬を青年は作ろうとしているのです…………というお話しよ!】

 「え、落ちは?」

 【無いわよ】

 「あ、そっか……」

 なんと言うか……よく分からない物語。
 て言うか落ちが無いから物語と言えるのかも謎だ。

 私はチラリとリリアの方を見つめる。
 でもリリアは鼻歌を歌って一向に目が合わない。
 やっぱりリリアは何かを隠しているの気がする。
 でもその隠し事をリリアが話しくれそうには無い。


 「……集中しよう」

 私は瓶を取り、仕事に取り掛かった。

 
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