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錬金術師と魔導師編
39 時間
しおりを挟む「今日からこの部屋があんたの部屋だから。部屋は好き勝手に使っていい。欲しいものがあったりしたら言って」
「は、はい」
「外にも行っていいけど、変なのに捕まらないように気を付けてね」
そう言うと、クロートは部屋から出ていってしまった。
まさか外にまで行っていいなんて言われるとは予想外だった。
逃げるかもしれないのにこんな野放しにしてて大丈夫なの?
それにこんなに良い部屋まで使っていいだなんて優しすぎる気がする。
私は部屋全体を見渡す。
大きなキングサイズのベッド。
それから可愛らしいドレッサーに、クローゼット。
家具は何から何まで揃っていて、尚且つ可愛らしいものばかりだ。
「でも……新品って訳じゃなさそう」
誰かが使っていたような形跡がある。
でも家具自体はどれも綺麗なものばかり。
ここは元は誰かの部屋だったらしい。
女の子の部屋っぽいし、クロートの妹さん、お姉さん。もしくは恋人かだと思われる。
気になるけど、気になってはいけないような気がした。
「皆、心配してるだろーな。はぁ、二人を逃がす事でいっぱいいっぱいだったから自分の事に気が回らなかったな……」
今頃後悔しても遅いってわかってるけど後悔せずにはいられない。
私は窓を開け、空気の入れ替えをする。
その時、視界に入った光景に思わず私は声を上げた。
「…………綺麗!」
目の前には緑いっぱいの木々と、色鮮やかな花達。
そして何より宙を舞うキラキラとしたシャボン玉のようなもの。
ルゲル村とはまた違った自然の良さがある。
まるで何かに見守られているような……そんな感じもする。
コンコン
扉がノックされ、返事を返せば扉が開きクロートが顔を出す。
「お昼にしようと思うんだけど、何か食べたい物ある? それなりに作れるけど」
「なら私も手伝うよ! 居候? の身なので!」
それにここで一人静かに待っていられる気もしない。
私はジーとクロートを見詰める。
すぐに視線は逸らされたものの、承認を得た。
料理は初めてだけど、頑張ってみよう。
気合い充分だった。
しかし、現実はそうは上手くいかないもの。
皿は割っちゃうし、包丁で指を切っちゃうし、料理は焦げ、もう最悪だった。
結局クロートが全部してくれた。
慣れた手つきで作られていくお昼ご飯。
私、手伝わない方が良かったのかもしれない。
ふわりと美味しそうな香りが漂う中、私はボーッと窓の外を見詰めるのだった。
***********
「寝てる……」
お昼を食べ終え少しの間仕事場にこもった俺。
皿洗いぐらいは出来ると言い張った彼女に皿洗いを任せ、気づけば四時間もこもってしまっていた。
慌ててリビングに戻ってくれば机に突っ伏して気持ちよさそうに眠っている彼女を見つけた。
俺は彼女にタオルを掛け、再び仕事場に戻る。
俺が彼女を買い取った理由はもちろん仕事の為でもある。
だけどもう一理由がある。
それは……
【郵便です! 郵便です!】
「げっ……」
突然窓から入ってきた羽の着いた手紙。
誰から送られてきた物かなんて嫌でもわかった。
手紙に手を伸ばし、手紙を握れば羽が消えた。
ほんと、魔法の手紙っていうのは凄いと思う。
俺は手紙の封を切り、中に入っていた紙を開く。
すると紙から青白い光が溢れ出す。
そしてその光がこの手紙を俺へと送った主を描き出す。
『クロート。頼みがあるんだ!』
「何だよ? まさかまた依頼? 勘弁しろよ。こっちはそれどころじゃないんだよ」
そいつは、そこを何とか! と両手を合わせて言った。
「で……何。レオン?」
「クロート! やっぱりお前は優しいな! ありがとう!」
「うるさい。何も無いなら破り捨てるよ」
「待て待て待て! 破り捨てるな! 只でさえお前の家まで手紙を送るのも難しいんだぞ!」
レオン・シグナリス
シグナリス王国の王太子にして、唯一俺が心を許した人間。
学生時代からの友人で、こうしてたまに連絡をとったりしている。(殆どが仕事の依頼)
相変わらずの騒がしい性格に、俺は大きな溜息を吐き捨てる。
「で? 何? 俺、忙しいんだけど」
「人を探していてな。お前にも協力して欲しいんだ」
「人? グランジュエにでも頼めばいい」
「それがあの人寝込んじゃってさ。いろいろ頑張りすぎたんだと思う」
あの人が寝込んだ??
俺は正直耳を疑った。
あの人の持つ魔力はい異状だ。
体調を崩したとなれば多分相当な魔力を使い、体に負担を与えた事になる。それかもしくは歳のせいだろう。
「で、探してる奴の見た目教えてくんない? 出来るだけ何とかしてやるから」
「……クロート。やっぱりお前は良い奴だな!」
「はいはい。そう言うのいいから」
適当にあしらいつつ、レオンに探し人の特徴を聞く。
ブロンドの髪に深い青の瞳。
魔法の才能があって、尚且つ美人。
そして名前が…………エデン。
「まじかよ……」
「どうした? クロート?」
俺は頭を抱えた。
まさかレオンの探し人が彼女だったなんて……。
まぁ、隠すのもなんだしな。
「レオン。お前の探してるエデンは俺の家にいる」
「は?」
「俺がオークションで買い取ったんだ」
「△〇#〇△▲◆◇#!?!?」
レオンが意味のわからない声を上げた。
まぁ、驚くのが普通だろう。
俺だって驚きしかない。
「だが……お前で良かったよ。変なやつに買い取られてないか不安で仕方なかったんだ。取り敢えず、彼女の身の安全も知れた事だし良かったよ。直ぐにでも迎えに行きたいんだが……お前が簡単に彼女を引渡してくれるようには思えない」
「当たり前だろ。時間が無いんだ。準備が整ったら彼女は解放する」
「……そうか。分かった」
そうだ。まだ彼女を解放する事は出来ない。
今の俺には彼女の力が必要なんだ。
俺の錬金術で作り上げた薬と、彼女の魔力を注いだ薬ならきっと…………。
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