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魔導師の集い編
33 皆の優しさ
しおりを挟む小さくなっていくディグラード公爵の背中を見送った後、グランジュエが私に深々と頭を下げた。
思わず目を見開く私に、そっとミレイが寄り添ってくれた。
グランジュエが頭を下げたまま話し出す。
「彼奴の頼みとは言え、貴方に私は酷いことをした。私に謝罪をさせてくれ!」
「あ、頭を上げてください! た、確かに脅された時は怖かったですけど……」
「くっ…………私はまんまんと彼奴の手口に引っ掛かり、家族の縁を戻す為と私は勘違いを起こし、こうして貴方達家族を引き合わせてしまいました…………本当に申し訳ございません」
一つ一つの言葉にこもる気持ちがよく伝わってくる謝罪。
父もこれくらい謝ってくれたらもしかしたら許していたかもしれない。
でも、あの人にはそんな気持ちは微塵も無さそうだった。
それと自分があんな父親の血をひいているのだと思うとゾッとした。
「えっと、グランジュエさん。私はもう怒ってないですし、取り敢えず頭を上げて下さい」
「な、なんとお優しい女性なんだ!! ぜひぜひ、私の実験の素材になりませんか?」
目をキラキラと輝かせ、私の手をギュッと握るグランジュエ。
私はビクッと驚き、反射的に1歩下がる。
今思えばこうして男性に手を繋がれたのは初めてかもしれない。
だけど驚いているのは私だけ。グランジュエは至って平然だ。
「ちょっとグランジュエさん! エデンに触らないでちょうだい!!」
「ミレイの言う通りですねー。 それと……次エデンさんに触れたらどうなるか分かってるよねぇ……?」
「グランジュエ。魔法を教わった師とは言えども、今の行動は目を潰れないな」
突然グランジュエの手が離れたかと思えば、何故かミレイ、ゼアさん、レオン殿下の三人に取り囲まれる私。
一体何が起こっているのやら……。
両隣をちらりと横目で何度も確認する。
そうすれば隣にはキラキラと光る美男美女の姿。
今思えば三人はとてもと言っていいほど似ている。
なのに今まで全く気づかなかった私は一体何なんだろう。
てか、観察力っていうユニークステータス1000とは思えない……。
私は自分のあまりの鈍さに呆れ果てるのだった。
「あの、グランジュエさん。アヤメさんは居ますか?」
「アヤメかい? アヤメなら久しぶりに兄に会えると言ってバルコニーの方に行きましたが……」
「ありがとうございます!」
私の言葉に首を傾げるグランジュエ。
私はミレイやゼアさん、レオン殿下にも御礼をつげ、また戻ってくるから! と言い残し、アヤメさんにそれからセリア様の元へと急ぐ。
後ろからミレイが「行ってきなさい! エデン!!」なんて言う応援の声が聞こえてきた。
私は後ろを振り返り、ニコッと笑いながら手を振る。
ここでセリア様に会えなかったら次は何処で会えるか分からない。
あの時森で言っていたアヤメさんの言葉が今ならよく分かる。
セリア様は家を守る為に、そして私の為に婚約破棄してくれたんだと。
父に頼みん混んだというセリア様の願い。
婚約破棄をする代わりに私を自由の身にしてほしいと言う願いを父が叶える事は無かったけど、セリア様の優しさには正直ジーンときていたりする。
人の波を掻き分けながらバルコニーへと向かう。
私……セリア様に伝えなきゃいけないことが沢山あるんだ。
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