烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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一緒にダンジョン編

24 達成報酬

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 「おいおい……まじかよ。あの大型モンスターが跡形も無く燃え尽くしたぞ」

 「これがSランクの実力か。やはり凄いな……」

 ひそひそと話す出す騎士団の人達。
 言っときますけど、丸聞こえですよ。

 でも、今回はいろいろ失敗したな。
 まず一つ目はあのパンチ。魔導師が拳で戦うなんて有り得ない。
 二つ目は観察眼。ユニーク要素がある事がバレてしまった。
 三つ目、ドラゴンの言葉が分かってしまた。これは巫女の力と言うらしく、これまた珍しい力。
 最後に四つ目は呪文無しで魔法を使用。そして何より高難易度のダンジョンのボスモンスターを跡形も無く燃やしてしまったということ。

 私、これから先大丈夫かな?

 不安が募り、私は大きなため息を吐きすてる。
 そんは私に気づいたのかいないのか……私の元へニックさんが満面の笑みを浮かべながら駆け足で近づいてきた。

 あ、これ……気づいてないやつだ。

 「エデン嬢! 是非とも魔術師団に入らなないか? エデン嬢ならばきっと良い団員となるだろう!」

 「いえ結構です」

 思った通り気づいていなかったし、魔術師団への勧誘までされてしまった。

 魔術師団なんか入ったらお父様に会っちゃうよ。
 なにせお父様はシグナリス王国の魔術師団団長なんだから……。

 シグナリス王国の……魔術師団団長。
 あれ、シグナリス王国…………

 「あぁぁぁぁぁぁ!」

 思わず声を上げる私。
 これは確実に明日は声がガラガラだ。

 そんな私の声に皆がビクリと肩を上げた。

 私、なんて事をしてしまったんだろう!
 彼らはシグナリス王国の王子様とその愉快な仲間たち。
 高難易度のダンジョンのボスモンスターを火魔法で跡形も無く燃やしてしまうような魔法が使える魔導師が居たらその存在を話さない訳が無い。

 だんだん血の気が引いていくのがわかった。

 「エデン嬢? どうかしたかの!? まさか具合が……」
 
 「いえ、そうではなくて。お願いです。絶対に、絶対に! 魔術師団団長には私の話はしないで下さい! お願いします!」

  「そ、そこまで必死だと逆に申し訳なくなるな。うむ、何かしら事情があるのだろう。勿体ない気もするが、エデン嬢の人生。エデン嬢が良い様にするのが一番だ!」

 「ニックさん……」

 助かった。ニックさんが話が分かる人で本当に良かったよ。
 私は胸を撫で下ろす。
 するとレオン殿下が私の方へと近づいてくるのが分かった。
 レオン殿下はニコリと微笑む。

 その笑顔がミレイの笑顔と重なり、思わずドキッとした。


 「エデンさん。このダンジョンのボスモンスターを倒したのは貴方です。貴方がここのダンジョンのクリア報酬を受け取るべきだと私は思うのです」

 「えっと……つまり?」

 「あそこにある宝箱。あれはエデンさんが開けるべきだの思うのです」

 そう言うとレオン殿下は指を指す。
 その指の方向には小さな宝箱があった。
 きっとあの宝箱の中身がこのダンジョンのクリア報酬なのだろう。

 「ですが、私は依頼を受けてやって来たただの冒険者です。私はこの後その報酬も頂くのにダンジョンのクリア報酬を受け取ることなんて出来ません」

 「いえ、これは今回の御礼も兼ねてエデンさんに受け取って欲しいんです。それに……これは貴方が持つべきものですから」

 「は、はぁ……」

 よく分からないけど、受け取らなかったら王子様のお願いを断った酷い人になっちゃう気がする。

 「じゃあ……お言葉に甘えて」

 あまり気が乗らないけど、ここは甘えておこう。
 私は早速宝箱を開ける。
 するとそこにはキラキラと眩い光を放つ丸い水色の宝石が入っていた。
 私はその宝石を手に取る。

 「……綺麗」

 「それは神秘の宝石。このダンジョンでしか手に入らない貴重な宝です。実は私、いろいろなダンジョンを巡ってはそのダンジョンの宝を集めているんです」

 「では尚更頂けません。やはりこれはレオン殿下が……」

 「いえ。その宝石よりもはるかに良い宝石を見つけたので、そちらを手に入れたい。それに……その宝石は貴方が持つことで意味を発揮する…………そんな気が私はするんです」

 優しい笑顔で微笑まれ、私は首を傾げる。

 だってこんなに綺麗な宝石以上に素晴らしい宝石があるの?
 それにそんな宝石を手に入れたいと思うって流石王子様。どんな手を使ってでも手に入れそうな勢いを感じがした。

 「なら、そのレオン殿下が今一番手に入れたい宝石を私が手に入れてレオン殿下にプレゼントします。この宝石の御礼も兼ねて」

 「…………それは難しいかもです」

 「だ、大丈夫ですよ! 魔導師ですけど拳でだって戦えますし!」

 「それは魔導師とは言わない気がしますね」


 クスクスと笑い出すレオン殿下。
 確かに拳で戦うのは魔導師ぽく無いけど、ここまで笑われるとは……。

 「いつかまた一緒にダンジョンへ行きましょう。今日は本当にありがとうございました」

 「いえこちらこそ本当にありがとうございました。また御一緒出来たら嬉しいです」

 宝石をアンくんへと渡し、私は差し出された手を両手で握り返した。

 
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