烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

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一緒にダンジョン編

22 レッドドラゴン

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 「隠し扉を開けるぞー!」

 ニックさんの合図と共に隠し扉を開ける。
 焦げ茶色の扉で、所々苔が生えている。長年開けられていない形跡があり、この先に何が待っているのかドキドキが止まらなくなってきた。

 しかし、そんな軽い気持ちでいられたのはその一瞬だけだった。



 グワァァァァァァァ!!


 大きな鳴き声がしたかと思えば、目の前に突如現れたのは赤い大きな体と鋭い金色の瞳。そして背中には赤い大きな翼。何より爪は鋭く、その爪で引っ掻かれたら終わりとしか言えない。
 ……そうそこに居たのは


 「レッドドラゴンだ!」

 無邪気な声でアンくんが叫んだ。
 瞳をキラキラさせ、レッドドラゴンを見つめるアンくん。
 やっぱり竜人だからドラゴンを見ると興奮する……ってそんな問題じゃないと思うんだけど……!

 私はアンくんから再びドラゴンへと視線を戻す。


 そう、今目の前で大きな声で鳴き散らしていたのはレッドドラゴンというドラゴン。
 ドラゴンの中でも一際体が大きく、なにより炎を吹く。
 そんなドラゴンが隠し扉の中にいた。

 ……少し鳴き声が苦しそうに聞こえる気がするけど、きのせいかな?

 「……エデンさん。レッドドラゴンのランクは?」

 レオン殿下の声が聞こえ、私はドラゴンを凝視する。
 そして……

 「え、Sランクです」

 私の言葉に皆が顔を真っ青にさせた。


 「撤退は出来ないのか!?」

 「ダメだ! 扉が完全に閉まっている。倒さないと出られない仕組みらしいぞ!」

 「倒す!? Sランクのドラゴンだぞ!?」

 不安に充ちた声があちらこちらから聞こえてくる。
 これが絶体絶命のピンチと言うのだろうと私は思った。

 けど…………


 「皆さんは下がっていてください。ここは私が何とかします」

 私は全てのステータスがマックスの1000
 もしかしたら……もしかしたらだけど私ならレッドドラゴンを倒せるかもしれない。

 「エデンさん! ダメだ!」

 レオン殿下の声が聞こえた。

 「ですが、ここで引き下がったら皆死んでしまいます。私なら……いえ、私じゃないとこのドラゴンは倒せない」

 「あと俺もー!」

 横から無邪気な笑顔でそう言うアンくん。

 竜人なのにドラゴン倒して大丈夫なのかな? とも思ったけど、突っ込まないでおこう。

 「取り敢えず、皆さんは隅へ。ですが、ドラゴンの攻撃が来た時動けるような場所で」

 「「「はい!」」」

 皆、私の指示に従ってくれた。
 やっぱり騎士団の人達という事もあって行動が早い。
 早くダンジョンをクリアする為にもこのレッドドラゴンは必ず倒さないと……。



 ぐわぁぁぁ! がるぅぅぅ!

 

 倒さ……ないと……




 がぁぁぁぁぁぁぁあ!!!




 「こ、怖い!」

 「え、今頃!?」

 「アンくんは怖くないの!?」

 「慣れてるもん 」

 「竜人だもんね! 知ってた!」 

 
 倒すなんて大口吐いちゃったけど、いざとなるとやはり怖い。
 てか、硬い皮膚で覆われているドラゴンにパンチなんて効くのかな?

 ドラゴンの鋭い金色の瞳と目が合い、私はある事に疑問を覚えた。


 「ねぇ、アンくん。あの子、怪我してる」

 「え?」

 「攻撃だって仕掛けてこない。多分、苦しいんだよ。鳴き声も苦しそうだった。だから……」

 私はドラゴンへとゆっくり歩み寄る。
 皆が私の名前を呼んだりする声が聞こえてきた。だけど、私は足を止めない。少しずつ、少しずつドラゴンへと歩み寄る。

 「怖がらないで。私は貴方の味方だから」


 ぐるるるるる


  威嚇されてる。
 けど、やはり攻撃は仕掛けて来ない。


 「大丈夫。傷、治してあげるから」

 私はドラゴンへと手を翳す。
 そして

 「この子の傷を癒して」

 私の言葉に魔力が反応し、手の平から眩い緑色の光が溢れ出した。ドラゴンは最初ビックリしたのか小さく声を上げたけど、治癒魔法の暖かさに安心したのか気づけば目を閉じ、眠ったかのように大人しくなってしまった。

 そして眩い緑色の光がやんだ。
 
 私はそっと手を下げる。


 「ね? 大丈夫だったでしょ?」

 私の言葉にドラゴンがきゅうん、と小さく鳴いた。
 そして顔を私へと近づけて、しまいには顔を私へとすり寄せてきた。まぁ、ちょっとごつごつするけど……。

 「君、ここの子じゃないよね? 迷い込んだの?」

 【人間に連れてこられたんだ】

 「そっか。大変だったんだね。ダンジョンをクリアしたら一緒に外に行こっか。君が居るべき所はここじゃないと思うから」

 【ありがとう。魔導師さん】

 よしよし、と私はドラゴンの頭を撫でる。
 まさかこうしてドラゴンと触れ合えるなんて……
 ちょっぴり感動している私。

 「皆さん、この子は危険ではありません。人間によってここへ連れてこられたみたいです。ダンジョンが終わったらこの子を外へ連れていきたいんですけど……って皆さん?」

 何だろう?
 皆の視線が私へと集中し、尚且つ目を見開き唖然としている。
 ぐいぐいとアンくんに服の裾を引っ張られ、

 「お師匠って…………ドラゴンと喋れるの?」

 「え?」

 私はレッドドラゴンへと再び視線を向ける。

 【いやぁー! 体が楽になった! ありがとう、 魔導師さん】

 頭に響く可愛らしい声。






 
 あ、あれ?
 なんでドラゴンの言葉が分かるんだろう……?


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