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謎の依頼編
16 竜騎士の見習い
しおりを挟む「この役立たずがっ!!」
例のパーティの皆が集まり数分後。突然ギルド内にはそのパーティのリーダーの怒鳴り声が響き渡った。
怒鳴られている人はゼアさん。
先程まで生死をさ迷っていた人だ。
そんなゼアさんを険しい目付きで睨みつける体格いい男性。
「くそっ……お前がもう少し良い盾になっていれば良かったんだ! 分かってるのか!?」
「そうよそうよ! 顔が良いから入れてやったのにさ、とんだ役立たず!」
顔が良いから入れたって……なんて理由だよ。
思わず突っ込みを入れる私。
まぁ……確かにゼアさんは綺麗な顔立ちだと思う。
男性の割には白い肌とか……綺麗な桃色の髪色とか。
……やっぱり何処かで見覚えある気がした。
「すいません。でも、皆が無事で良かったよ 」
こんな状況の中でも笑顔を一切消すことのないゼアさん。
あんなに酷いことを言われているのに全くもって相手を攻めないし、自分の意見も言おうとはしない。
見ていてモヤモヤしたけど、これはパーティの問題。
首は突っ込めない。
「ゼア。取り敢えず、お前は今日でパーティを辞めてもらうぞ」
「はい。今までありがとうございました」
意外とすんなり受け入れるんですね……。
あまりにもすんなりと受け入れてしまうゼアさんに私は驚きを隠し切れなかった。
「僕もそろそろ家に顔を出さないと叱られてしまう頃ですし。こんな僕をパーティに参加させてくれて本当にありがとうございました」
いい人なのか、もしくはただ単に呑気な人なのか……それは分からなかったけど、これはこれで一件落着なのだろうか?
「それと、エデンさん!」
「は、はい?」
突然を呼ばれ、戸惑う私にゼアさんが微笑む。
なんだか気品溢れる笑顔だ。
「また今度御礼をさせて下さい。エデンさんは命の恩人ですから」
「は、はぁ……」
これは断れなさそう。
取り敢えず承諾すれば、また気品溢れる笑顔を向けられた。
にしても本当に綺麗な笑顔。
私は思わず手で目を覆った。
ゼアさんと、冒険者さん達を見送った後今度は別の件に取り掛かる。
そう、あの謎の依頼についてだ。
「おーい。もう皆帰っちゃったから出てきていいよー」
そう私が声を掛ければ、物陰から黒い塊が現れた。
「じゃあ、貴方の話しを聞かせてくれるかな?」
「……あ、悪魔!!」
「悪魔じゃないからね! 魔導師の見習いだからね!」
何故か怯えられてるんだけど、普通逆じゃないかな?
だって相手は冒険者を襲ってた訳だし。
「まずはそのフード取ろうねー」
私はそう言って深々と被られていたフードをとる。
以外にも抵抗されなかったから少し驚いたけど、一番驚いたのはそのフードの下から現れた顔だった。
太陽みたいな金色の髪に、深い緑色の瞳。だけどその瞳の瞳孔が微かにだけど黄色に輝いていて、まるで宝石みたいだった。
それに整った顔立ちはまだまだ成長途中というか……簡単に言えば可愛らしい顔立ちだった。
見た目からして……十二歳ぐらいかな?
「か、かわいい……」
思わず口から出た言葉。
そんな私の言葉にその子は顔を真っ赤にさせ、声を上げた。
「可愛い言うな! 俺は男だぞっ!」
「男!? さ、詐欺だっ!」
「お前だって悪魔だろ!」
「それに関しては本当に違うからね!」
子供みたいな言い合いかもだけど、これに関しては引き剥がれない。悪魔呼ばわりはさすがの私でも黙ってはいられなかった。
「だっておかしいだろう! 竜人の俺が人間如きに負けるなんて!」
「え……貴方、竜人なの?」
普通の人間にしか見えないんだけど……
竜人と言えば人間離れにした身体能力。
人間如きにってそう言う意味だったのか!
そりゃあ負けたら驚くだろうし、悪魔呼ばわりするのは仕方ない事かもしれない。それよりも私はどうやら竜人よりも強いらしい。これに関してはいろいろ不味い気がする。
竜人の人間離れした身体能力は異常なものだと聞く。
大きな石を片手で粉々にしたり、三メートル以上の大ジャンプも出来るとか。
でもまだこの子は子供の竜人。
今は私が強くても仕方ないのかもしれない。
なにせ私はステータス全てがマックスの1000なのだから。
「竜人は竜騎士になる為に人間を捕まえるんだ! 指定は冒険者ランクがA以上。依頼を出してAランクの冒険者を釣ったのに……あんたが乱入してくるから俺の計画は台無しで……しかも竜騎士の試験に落ちた俺はもう帰る場所もないんだよ!」
「えっと……ごめんね。貴方の言ってることがよく分からないかな……その最初から説明お願いできるかな?」
私がそう言えば、その子は目尻に溜まった涙を拭いながら説明してくれた。
その子が言うには竜人は竜騎士になる為に冒険者ランクがAランク以上の人間を五人捕まえ、冒険者カードを奪う事が必要らしい。そしてそれに失敗した場合は竜人の暮らす国……竜の国から追放されるらしい。試験中は空からドラゴンに乗った竜騎士が監視しているらしく、自分が試験に失敗した事はもう国に知らされているだろう……との事。
…………成程。
私、凄く申し訳ない事をしたらしい。
けどもしあの時冒険者さん達を助けていなかったらゼアさんはきっと亡くなっていたと思う。
てか冒険者カードを取るだけならあそこまでボコボコにする必要あったのだろうか?
うーん……難しいな。
膝を曲げ、私は丁度目線が合うように屈む。
「ねぇ、名前はアンドレでいいんだよね?」
「そうだけど……」
「じゃあアン君。今日から私の家で弟子として住まない?」
「は?」
「ちょ、ちょっと待ってください! エデンさぁぁぁぁぁん!!」
大声を上げたメルさんが慌てた様子で私の元へ駆け寄る。
そして耳打ちで話し出す。
「相手は竜人ですよ!? 」
「まぁそうですけど……放っておけないじゃないですか。行き場も無いみたいだし……それに私の家一人暮らしには大きいので大丈夫ですよ? それにあの家一人暮しにしては広すぎますし」
「そういう問題じゃないです!」
「ねぇ、アンくんはどう? 嫌?」
「エデンさん話しを聞いてくださいぃぃぃ!!」
メルさんの声が響き渡る中、私はアンくんに尋ねる。
そんな私にアンくんが呆然としながらも小声で話し出す。
「……変な奴」
「変な奴じゃなくてエデンだよ。魔導師の見習いで、今日からここで暮らすことになったの」
「後悔してもしらないからな……」
「うん。いいよ」
後悔なんてしないよ。
そんな保証は何処にもないけど、もう居場所が無いというアンくんを放ってはおけなかった。
私はアンくんを自分と重ねてしまった。
そうしたら手を差し伸べずにはいられなかった。
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