烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人

文字の大きさ
上 下
7 / 78
始まりの王都編

07 美味しいご飯

しおりを挟む

この世界ではお金はリッチで表します
100リッチ=100円です!


__________________






 お店は外装だけでなく、内装もとてもオシャレだった。

 店内には建物と同じように白を基調にしたテーブルと椅子が置かれていて、店の名前にあるように花が沢山飾られていた。白い空間に緑と色とりどりの花。自然溢れた所で何だか気持ちが安らいだ。

 早速私とミレイさんは一番奥の端っこの席に向かい合うように座る。

 何だか……居心地が悪い。
 妙に緊張感のあるお店だ。

 高級店という事もあると思う。けどまず最初にこういったお店でご飯を食べるのも初めてだから余計に緊張していた。

 「そう言えばエデンさんっていくつなの?」

 「十六です」

 「やっぱり凄いわ! 私と同い年でもう旅に出てるなんて」

 「お、同い年だんですか!?」

 「えぇ。私も十六だもの」

 う、嘘だ。
 こんな大人っぽい十六歳絶対に居ない。
 特に胸の大きさは尋常じゃない気がする。

 メニュー表を広げだすミレイさん。
 私もメニュー表を手に取り目を通す。
 そこには文字がずらりと書かれていた。

 「好きな物食べて下さいね」

 「じゃあ……ミレイさんのと同じ料理がいいです」

 正直文字だけじゃどんな食べ物かは分からない。
 特にこの【魔獣のステーキ】なんて名前から不気味だし……。

 「……なら、このオムライスなんてどうかしら?」

 ミレイさんの言葉に私は思わずゴクリと唾をのむ。

 メニュー表に写真が貼ってあればいいんだけど、このメニュー表には文字と値段しか書かれていない。

 ちなみにオムライス一つ千八百リッチ
 …………私の現在の全財産と変わらないくらいの値段だった。




 ********





 「お待たせしました。オムライスです」

 「美味しそう……」

 「ふふ。エデンさんったら」

 テーブルに運ばれてきたオムライスに私は思わず感激の言葉をこぼしていた。
 そんな私を見てクスクスと笑うミレイさん。

 オムライスぐらいでって思うかもしれないけど、実はオムライスを食べるのは初めてだったりする。いつも余り物だからこんな豪華な食事は無かった。

 早速オムライスをスプーンですくい、口へと運ぶ。
 するとふわふわな卵の感触が口いっぱいに広がった。
 卵はふわふわとろとろで甘くて美味しい。
 そんなふわとろな卵とパラパラなチキンライスがとても合っていた。

 あー……こんなに美味しい物ショートケーキ以来かもしれない。
 お腹も空いていたからかどんどんスプーンが進む。
 そして私はあっという間にオムライスを平らげた。

 「エデンさん、よっぽどお腹が空いていたのね。スイーツは?  あ、ショートケーキがオススメらしいわよ」

 「ショートケーキ……!?  た、食べたいです……」

 「ふふ、じゃあ注文しましょうか」

 こんなに甘えてしまって本当にいいのだろうか?
 ミレイさんは御礼だから……って言ってるけどやはり気にしてしまう。なにせこのお店の料理は一つ一つがやたら高いのだ。

 ちなみにショートケーキ一つ八百リッチ
 うん、高い。物凄く。

 「エデンさん。この後、お時間ありますか?」

 「お時間ですか? えっと……た、多分?」

 曖昧な答えになってしまった。
 本当はミレイさんに感謝を述べて直ぐにでもルゲル村を目指したいんだけどそんな空気じゃ無いことくらい分かる。
 ミレイさんは改まった様子で小さく咳払いをした。

 「私、実はこうやって同年代の女の子とお話するの初めてで……そのエデンさんが良ければなんだけど……エデンって呼ばせてくれないかしら?」

 ミレイさんの顔を少し赤く染まる。
 微かに震えるその声に勇気を出して言ってくれた事がとても伝わってきた。

 「はい、勿論です! じゃあ私もミレイって呼んでもいいですか?」

 「えぇ! 嬉しいわ、エデン」

 パァっと……まるで太陽みたいなキラキラした笑顔で笑うミレイ。
 私も釣られて頬が緩む。

 「……やっと笑った」

 「え?」

 「ずっと苦しそうな顔だったから笑ってくれて良かったわ」

 苦しそうな顔。
 言われてみて確かにそうだなと思った。

 なんだ私、セリア様が居なくても笑えるんじゃん。

 何だか少し嬉しくなった。

 「さっきの続きなんだけど……私、エデンとショッピングに行きたいの! 小さい時から友達とショッピングするの凄く憧れていたの!」

 身を乗り出すミレイ。
 しかもその瞳はキラキラしていてとても綺麗だった。
 
 本当は今すぐにでもルゲル村に向かいたかったんだけど……
 私だって初めての友達が出来て浮かれている。
 それにショッピングのお誘いなんて嬉しすぎて断る理由なんて無かった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双

さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。 ある者は聖騎士の剣と盾、 ある者は聖女のローブ、 それぞれのスマホからアイテムが出現する。 そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。 ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか… if分岐の続編として、 「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

処理中です...