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1巻
1-3
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けれど、ステラは彼の手を取ることが怖かった。クラウスがいるからではない。
その優しさに触れてしまえば、溺れてしまう。
そう分かっていたからだ。
その優しい手をやんわり拒んできたステラだったが、今回だけは触れてみることにした。
「……では、お願いがあるのですが、聞いていただけますか?」
「あぁ! もちろん!」
「実は、明日のお昼休みにクラウスと勉強会をしようと思っているんです。最近、彼は成績が伸びず、悩んでいるようです。よろしければ、そこでアレクシア殿下のお力をお貸しいただけたら……と。彼、私に教わるなんて絶対に嫌でしょうから」
クラウスの自尊心の強さ……加えて、ステラに対する嫌悪感故に、間違いなく二人だけでの勉強会は成立しない。そう確信できた。
「……やっぱりクラウスなのか」
「アレクシア殿下?」
「いや。なんでもないよ。ステラの頼みだ。引き受けるよ」
「あ、ありがとうございます……!」
ステラは安堵した。
自分の言葉がクラウスに届くことはないが、アレクシアならば届くだろう。
それにアレクシアは入学以来一位の成績を保ち続けている秀才で、教え上手でもある。間違いなくクラウスの力になってくれるだろう。
「……そういえばステラ。どこかに向かう途中だったんだよね? 引きとめてごめん。人を待たせているんだったら、早く向かったほうがいい」
「そ、そうですね……。では、明日のお昼休み、よろしくお願いします。失礼いたします」
ステラは頭を下げ、待ち人……クラウスのもとへと向かう。
きっと待ち合わせ場所で怒りを露わにしながら待っているのだろう。ただでさえご機嫌ななめなのだ。これ以上機嫌を悪化させては大変なことになりそうだ。
急がないといけない。そう思う一方で、ステラの脳裏からは、先程のアレクシアの姿がどうしても離れなかった。
――お願いをした時、殿下は悲しそうな顔をされていました……
クラウスのために協力してほしいと頼んだ時、アレクシアが切なげな表情を見せたのだ。けれどそれは一瞬のもので、すぐに快く引き受けてくれた。
でもいつもの彼らしくない笑顔だったようにも思えた。
一向に消えてくれないモヤモヤした思いを胸に、ステラはクラウスのもとへと急いだ。
◇□◇
「すみません、お待たせしました!」
校舎裏に向かうと、すでにクラウスの姿があった。
明らかに不機嫌です、という雰囲気を漂わせて。
「遅いぞ。お前が放課後付き合えと言うから俺はわざわざ時間を作ってやっているというのに! 俺の貴重な放課後の時間を無駄にしやがって……!」
「本当にすみません。アレクシア殿下と次の会議のことで少し話してしまいまして」
ステラの謝罪にクラウスは肩を竦める。
もっと責め立ててやりたいところだが、シュンと項垂れ、申し訳なさそうに眉を下げるステラの姿を見てやめることにした。
十分に反省しているようだし、なによりステラに非があるわけではないのだ。
実際、ステラは生徒会役員という役目を担っており、役員として学園中を駆け回っていた。
「生徒会役員の忙しさは相変わらずだな」
「大変ではありますが、やりがいがありますよ」
ステラは鞄からアレクシアから渡された会議資料を取り出し、クラウスに見せた。
「疑われてはいなそうですが、念のため証拠として提示させていただきます」
「……生徒会の仕事だろうと予想はついていたからな。仕事で遅れたのなら責めるわけにもいかないだろう」
「そう言っていただけて良かったです。ですが、待たせてしまったので謝罪を。遅くなってしまい、申し訳ございません」
ステラはクラウスに深々と頭を下げた。
秀才で完璧な婚約者。けれど、気取った態度は一切見せない。
皆と平等に接し、常に善と悪を見極め、偽りなく真実を通す。
善人という言葉は、ステラのためにあるようなものだと、クラウスは思う。
「いいからさっさと行くぞ。そしてさっさと帰る」
「今日はお急ぎのご用事が?」
「試験勉強だ。来週からだってのに、お前は随分と余裕そうだな。まぁ、首席のお前にとっては、今回の試験も余裕なんだろうが……」
クラウスがゆっくりとステラのほうへ体を向け、二人の目が合う。
クラウスは常に一桁の成績を保っている。
けれどいつもあと一歩……というところでステラに及ばず、ステラが心配していたようにそれ以上成績が伸びずにいた。
クラウスはそこで放り投げることはせず、ステラを追い越そうとしてきた。
背中だけを眺め続けてきた。しかし、それだけではいけない。追い越さなければいけないのだ。
その時、そうクラウスは気づいた。
「次は絶対に負けない。俺は全力を尽くす。だからお前も本気で来い」
言葉だけじゃない。必ず実行してみせる。
……クラウスの瞳はそう強い意志を秘めていた。
その真っ直ぐな言葉を聞いて、ステラの心には大きな戸惑いが生まれた。
なにせ、試験が始まるのは来週からだ。
その時にはもうステラは……
ステラはクラウスの言葉になにも返すことができなかった。
「お前がすぐに反論してこないとは珍しいな」
違和感を覚えたらしいクラウスが、怪訝そうな視線を向けてくる。
だから、ステラは悟られないように無理矢理笑顔を作った。
作り笑いは得意だった。
「……いえ。その宣戦布告、受けて立ちましょう。絶対に手は抜きません。次も必ず私が一位を取りますよ」
ステラの言葉に、クラウスは三年ぶりに彼女に対して笑ってみせた。
その言葉を待っていた、と言わんばかりに。
◇□◇
それから二人は学園を後にして、とある店に足を運んだ。
甘い香りが充満する店内。
ステラは浮立ったような足取りで、ウエイターの案内する席へと向かう。
そしてテラスの席に腰を下ろすと、満足げに言う。
「実は私、放課後学園の方とお茶をするのが夢だったんです」
「随分と安い夢だな。よりにもよってなぜ俺が叶えなければいけないんだ」
不満そうにそう呟いて、クラウスは盛大なため息を吐いた。
ステラが案内した店は、パンケーキが有名な、学生に人気の喫茶店だった。
クラウスもまた、友人やヒナからこの店についてよく聞いていた。まさかステラと来ることになるなんて想像さえしていなかった。
店内にいるのは甘い雰囲気を醸し出した恋人達ばかりで居心地が悪い。
「……ヒナと来たかった」
注文をした後、ポツリと呟かれたクラウスの本音。
胸が苦しくなったが、ステラは平静を装って答える。
「今度来たらいいじゃないですか。一週間後には自由の身になれるのですから」
「ヒナがずっと来たいって言っていた店なんだよ、ここ。なのに最初に来るのがお前とか……本当に最悪だ」
「本人を前にして堂々と最悪なんて言える貴方を、ある意味尊敬します」
「あぁ、堂々と言うさ。俺はお前が大嫌いだからな」
「心底嫌われているようですね、私は」
分かりきっていたこととはいえ、やはりこうもハッキリと告げられると胸が痛い。
ステラは必死に感情を押し殺した。
「言っとくが、俺は悪くないぞ。全部お前のせいなんだからな、ステラ。お前が先に俺を見捨てたんだ」
まるで刺すような視線だった。
ステラはいっそう強く痛む胸にまた気づかない振りをして、微笑む。
「見捨てるだなんて……。私はただ留学していただけですよ?」
そして……また嘘を吐いた。
その罪悪感がまたステラの心を苛んだ。
二人の間にある空白の三年間。
その三年の間に、クラウスの中で大きな心の壁が築かれていた。
「婚約者の俺にもなにも告げずに? 手紙もまったく寄越さないでか?」
「……お父様がクラウスに伝えていた通りですよ」
留学なんて真っ赤な嘘だ。
ステラの病の治療には莫大な費用がかかると宣告された。それは、クラウスとの結婚で伯爵家にもたらされる利益を上回るものだった。
そこでステラの両親は考えた。それほどの金が必要ならば、治療はせずとも良い。ただ、公爵家との繋がりを逃すことはあまりに惜しい。結婚まで命を繋がせることさえできれば、どうとでも言い訳ができるだろう。
その結果が、延命を目的とした治療だった。
ベッドの上から動けない日々が続き、ようやく動けるようになって、リハビリまで終えたのは、病を患って三年が経った時だった。
当時のステラは両親を信じていた。
だから……手紙を送ることが禁止されたことをなにも疑わなかったし、クラウスにはきちんと自分の思いが伝わっていると思っていた。
『お父様! たとえ離れ離れになってもずっとお慕いしています、とクラウスに伝えてください! そして病を完治し、必ず元気になって貴方のもとに戻ってくる……と』
『……分かった。クラウスには私達から伝えておく。だからなにも心配することはない』
両親はそう言った。
だからステラは安心して、治療を受けていた。すべては元気になって再びクラウスと笑い合うために。
しかし、治療から帰ってきたステラを待っていたのは、クラウスの激しい拒絶だった。
両親はクラウスに何も伝えていなかったのだ。
治療を受けていた期間、ステラはクラウスに一報もいれずに留学していたことになっていた。
すぐにクラウスに説明しようとしたが、両親は病について秘密にするようにとステラに釘を刺した。
もちろん、最初はあらがった。
もう両親を信じることができなかったからだ。
しかし……
『もし公言してみろ。ルイの命は……ないと思え』
その脅しはステラのすべてを容易く縛りつけた。
両親は分かっていた。五歳下の幼い弟が……ステラの一番の弱点であることを。
――ごめんなさい、クラウス。本当のことを伝えられなくて。私の我儘に付き合わせてしまって……けれど、これで最後だから。
つまらなそうな表情でパンケーキを口に運ぶクラウス。
その姿に胸がギュッと苦しくなった。
――もう私には、昔のような笑顔を見せてもらえる権利はないのでしょうね。
ステラもまたパンケーキを口に運ぶ。
夢にまで見た、クラウスとの久々の外出。
気になっていた今話題のパンケーキ。
ふわふわで甘くて、蜂蜜をかけると美味しさが増すのだとクラスの子達が言っていた。
けれどステラにとってはなんの味もない、ただ柔らかいだけの固形物に過ぎなくて、だんだんと咀嚼するペースが落ちていく。
咀嚼すら面倒になってきて、ついにステラはゴクリと飲みこんだ。
パンケーキも、思いも、全部。
二日目
◇午前
揺れる馬車内でステラは視線を感じた。
視線の主は、もちろんクラウスだ。
わずかに開けた窓から吹きこんだ柔らかな風が、ステラの美しい髪をなびかせる。
暖かな日差しがステラを照らすと、一枚の絵画のようだった。
ページを捲る所作すらも美しい。
しかし、そんな魅力が自分にあると気づいていないステラにとって、見つめられ続けるのはとても気恥ずかしかった。
居心地の悪さから、ステラは声をかけてみることにした。
「クラウスはこの本、ご存じですか?」
「っ……! ど、どれだ?」
突然話を振られて驚いたのか、クラウスが慌てたように答える。
クラウスの様子を窺えば、どこかソワソワと落ち着きがないように見える。
――まさか視線を送っていたことに感づかれたと思って、焦っているのでしょうか?
なぜクラウスは自分を凝視していたのだろう、とステラは考えた。
なにせ、クラウスはステラを心から嫌っている。そんな相手が自分を険しい顔つきで見つめていたのだ。
ステラはその優秀な頭脳で、確信をもって答えを導き出した。
――おそらく……いや、間違いなく嫌悪感を抱いて睨んでいたのでしょう。
追及してそれが明らかになれば、傷つくことは間違いない。
ステラは気づかない振りをすることにした。
「実はこの本、続編なのです。まさか続きが出るとは思っていなかったので、驚いてしまいました!」
ステラは本の表紙をクラウスへと向ける。
すると、なぜかクラウスは安堵したような表情を浮かべた。
「……その本、お前が昔好んで読んでいた本だろ」
「覚えてくれていたんですね」
「そりゃあ、あれだけ何度も何度もしつこいくらい話されたら忘れようがない」
ステラは幼少期から読書家だった。
そんなステラが特に愛読していたのがこの『鳥籠』という本で、幼い子どもが読むには少し……いや、かなり早いように感じられるドロドロとした人間関係を描いた物語だ。
主人公は鳥籠の中で生きているような、自由を知らない少女だった。
少女が背負わされた大きな期待、愛、嫌悪、嫉妬の数々。
それでも少女は真っ直ぐに生きようとする。少女にはそれしか道がなかったから。
結局最後、少女は心が壊れてしまうのだ。
所謂バットエンドである。
そんな物語に続編が出たらしい。
「で、大好きな物語の続編の感想は?」
「まぁ……羨ましい、というのが正直な感想でしょうか」
「……俺の記憶では、その本には羨ましいと思える要素なんてまったくなかったはずだが……。続編で明るい未来になるようにも到底思えない」
「読んでみますか? まぁ、クラウスには理解しがたいお話かもしれませんが」
少し煽られ、クラウスはムッとした。これぐらい読める。そんな意思表示をするように。
「読んでいただけるのなら嬉しいですが、前作を読んでからのほうが確実に楽しめますよ。ちゃんと読んだことはないでしょう?」
「お前の話だけで十分だったからな。そもそも、なんでこんな本が好きなんだ?」
クラウスの質問にステラは目を見開く。
それから黙りこむ。
いつも言葉を巧みに紡ぎ出すステラが考えこんでいる。あまりにも珍しいことで、クラウスにはそれが異様なものに見えた。
「……そうですね。昔はなんとなく惹かれていたのですが、久々に読んでみると理由が分かりました」
「なぜかも分からないのに好きだったのか。お前の感性はやはり理解しがたいな」
「でも、幼い頃にこの内容の物語を好きな理由があったら逆に心配になりませんか?」
「それは一理ある」
幼い子どもには早すぎる内容だ。
この物語を好む深い理由が、幼い子どもにもしあったら確実に心配に思うだろう。
「試験勉強の合間の気晴らしにでも読んでみてください。根気強く勉強に励むのもいいですが、休憩を挟むことも重要ですよ」
ステラは一巻を取り出して、続編とともにクラウスに差し出した。
「なぜ二冊も持ってる……。まぁ、そうだな。気晴らしぐらいにはいいか」
クラウスは本を受け取った。
かなり読みこまれているのか、年季が入っている。
人間の脳というのは万能ではない。
古い記憶は月日を重ねていくごとに消えていくものだ。
本の内容はうっすらとだが覚えている。
結末を知っても楽しめるのか? とクラウスは疑問を抱いた。
『読んでみますか? まぁ、クラウスには理解しがたいお話かもしれませんが』
しかし、こうも煽られてしまえば、乗らないわけにはいかない。
クラウスは挑発に弱かった。
「お前に理解できて俺に理解できないことなどないと証明してやる」
「……そうですか。楽しみにしていますね」
クラウスは意気込み、すぐに本のページを捲った。
好きな作品をこうして共有できる日が来るとは思っておらず、無意識に頬が緩んでしまう。そして同時に思ってしまった。
――私も、この主人公のようになれたらいいのに。
続編の意図を簡潔に話すとするなら、主人公が報われるようにと作られた物語だ。故に、その展開はあまりにもご都合主義で、巷ではあまり好評ではない。
ステラの続編に対する評価も、良いものではない。
しかしそれは、自身と主人公を重ねて見ているからだろう。
主人公の人生は本来一巻で終わるはずだった。しかし、続編という機会を与えられ、本来なら報われるはずのなかった主人公は幸せを掴んだ。
では……自分は? 人生が終われば続編なんてない。そこで終わりなのだ。
だからこそ、悔いは残さないように……自分に素直になりたいと思った。
この主人公のように幸せを掴めるように。
そしてその幸せを感じながら最期を迎えられるように。
◇午後
「ステラさん~!」
昼休み開始の鐘の音と共に、一人の女子生徒がステラの席へとやってきた。
肩まである、淡い水色のふわふわとした髪。
深緑の瞳を細め、その女子生徒は微笑んだ。
「ミナさん。どうかしましたか?」
「先生にノート運ぶように言われたんだけど、一人じゃ大変でさ。手伝ってくれないかな?」
ミナと呼ばれた女子生徒はステラの隣の席に腰をかけ、両手を合わせた。
ステラは教卓に置かれたノートの山へと視線を向ける。
――確かにあの量を一人で運ぶのは大変でしょう。それだけの理由で声をかけてきたわけではないのでしょうけれど。
ステラはニコリと微笑む。
「私で良ければお手伝いさせてください」
「さすがステラさん~! じゃあ、持っていこうか!」
「そうですね」
ノートを抱えて二人で教室を出る。
教科書の山を半分に分けて持っているものの、ステラにとってはかなり重い。
気を緩めたら力が一瞬で抜けてしまいそうだ。そんな姿を見せるわけにはいかないと、ステラは必死に力を込めた。
「ステラさん、大丈夫? なんか……顔色悪い?」
「気のせいです」
「本当に? 婚約者さんと急に接近したし、なにかあるんじゃない?」
訝しげにステラを見るミナに、ステラは肩を竦めた。
「わざわざ私に聞かなくても、貴方なら全部知っているじゃないですか? もうこの話は終わりです。早く終わらせますよ」
その言葉に、ミナの雰囲気が瞬時に変わった。天真爛漫な笑みから一変し、表情が消え去る。
「……はい。申し訳ございません、ステラ様」
「いいですよ。それが貴方の仕事なのですから」
早く目的地に辿り着くことを考え、歩を進めていく。ところが、突如荷物が軽くなり、ステラは瞳を瞬かせた。
そしてその理由……ミナに視線を向ける。
「ごめんね、ステラさん。先約があったのに、手伝ってくれてありがとね! あとはやっておくから!」
そう言い残して、ミナは軽々とノートを持って駆けていった。
その怪力っぷりにステラは呟く。
「私、要らないじゃないですか」
ため息と共に肩を竦めながら。
その優しさに触れてしまえば、溺れてしまう。
そう分かっていたからだ。
その優しい手をやんわり拒んできたステラだったが、今回だけは触れてみることにした。
「……では、お願いがあるのですが、聞いていただけますか?」
「あぁ! もちろん!」
「実は、明日のお昼休みにクラウスと勉強会をしようと思っているんです。最近、彼は成績が伸びず、悩んでいるようです。よろしければ、そこでアレクシア殿下のお力をお貸しいただけたら……と。彼、私に教わるなんて絶対に嫌でしょうから」
クラウスの自尊心の強さ……加えて、ステラに対する嫌悪感故に、間違いなく二人だけでの勉強会は成立しない。そう確信できた。
「……やっぱりクラウスなのか」
「アレクシア殿下?」
「いや。なんでもないよ。ステラの頼みだ。引き受けるよ」
「あ、ありがとうございます……!」
ステラは安堵した。
自分の言葉がクラウスに届くことはないが、アレクシアならば届くだろう。
それにアレクシアは入学以来一位の成績を保ち続けている秀才で、教え上手でもある。間違いなくクラウスの力になってくれるだろう。
「……そういえばステラ。どこかに向かう途中だったんだよね? 引きとめてごめん。人を待たせているんだったら、早く向かったほうがいい」
「そ、そうですね……。では、明日のお昼休み、よろしくお願いします。失礼いたします」
ステラは頭を下げ、待ち人……クラウスのもとへと向かう。
きっと待ち合わせ場所で怒りを露わにしながら待っているのだろう。ただでさえご機嫌ななめなのだ。これ以上機嫌を悪化させては大変なことになりそうだ。
急がないといけない。そう思う一方で、ステラの脳裏からは、先程のアレクシアの姿がどうしても離れなかった。
――お願いをした時、殿下は悲しそうな顔をされていました……
クラウスのために協力してほしいと頼んだ時、アレクシアが切なげな表情を見せたのだ。けれどそれは一瞬のもので、すぐに快く引き受けてくれた。
でもいつもの彼らしくない笑顔だったようにも思えた。
一向に消えてくれないモヤモヤした思いを胸に、ステラはクラウスのもとへと急いだ。
◇□◇
「すみません、お待たせしました!」
校舎裏に向かうと、すでにクラウスの姿があった。
明らかに不機嫌です、という雰囲気を漂わせて。
「遅いぞ。お前が放課後付き合えと言うから俺はわざわざ時間を作ってやっているというのに! 俺の貴重な放課後の時間を無駄にしやがって……!」
「本当にすみません。アレクシア殿下と次の会議のことで少し話してしまいまして」
ステラの謝罪にクラウスは肩を竦める。
もっと責め立ててやりたいところだが、シュンと項垂れ、申し訳なさそうに眉を下げるステラの姿を見てやめることにした。
十分に反省しているようだし、なによりステラに非があるわけではないのだ。
実際、ステラは生徒会役員という役目を担っており、役員として学園中を駆け回っていた。
「生徒会役員の忙しさは相変わらずだな」
「大変ではありますが、やりがいがありますよ」
ステラは鞄からアレクシアから渡された会議資料を取り出し、クラウスに見せた。
「疑われてはいなそうですが、念のため証拠として提示させていただきます」
「……生徒会の仕事だろうと予想はついていたからな。仕事で遅れたのなら責めるわけにもいかないだろう」
「そう言っていただけて良かったです。ですが、待たせてしまったので謝罪を。遅くなってしまい、申し訳ございません」
ステラはクラウスに深々と頭を下げた。
秀才で完璧な婚約者。けれど、気取った態度は一切見せない。
皆と平等に接し、常に善と悪を見極め、偽りなく真実を通す。
善人という言葉は、ステラのためにあるようなものだと、クラウスは思う。
「いいからさっさと行くぞ。そしてさっさと帰る」
「今日はお急ぎのご用事が?」
「試験勉強だ。来週からだってのに、お前は随分と余裕そうだな。まぁ、首席のお前にとっては、今回の試験も余裕なんだろうが……」
クラウスがゆっくりとステラのほうへ体を向け、二人の目が合う。
クラウスは常に一桁の成績を保っている。
けれどいつもあと一歩……というところでステラに及ばず、ステラが心配していたようにそれ以上成績が伸びずにいた。
クラウスはそこで放り投げることはせず、ステラを追い越そうとしてきた。
背中だけを眺め続けてきた。しかし、それだけではいけない。追い越さなければいけないのだ。
その時、そうクラウスは気づいた。
「次は絶対に負けない。俺は全力を尽くす。だからお前も本気で来い」
言葉だけじゃない。必ず実行してみせる。
……クラウスの瞳はそう強い意志を秘めていた。
その真っ直ぐな言葉を聞いて、ステラの心には大きな戸惑いが生まれた。
なにせ、試験が始まるのは来週からだ。
その時にはもうステラは……
ステラはクラウスの言葉になにも返すことができなかった。
「お前がすぐに反論してこないとは珍しいな」
違和感を覚えたらしいクラウスが、怪訝そうな視線を向けてくる。
だから、ステラは悟られないように無理矢理笑顔を作った。
作り笑いは得意だった。
「……いえ。その宣戦布告、受けて立ちましょう。絶対に手は抜きません。次も必ず私が一位を取りますよ」
ステラの言葉に、クラウスは三年ぶりに彼女に対して笑ってみせた。
その言葉を待っていた、と言わんばかりに。
◇□◇
それから二人は学園を後にして、とある店に足を運んだ。
甘い香りが充満する店内。
ステラは浮立ったような足取りで、ウエイターの案内する席へと向かう。
そしてテラスの席に腰を下ろすと、満足げに言う。
「実は私、放課後学園の方とお茶をするのが夢だったんです」
「随分と安い夢だな。よりにもよってなぜ俺が叶えなければいけないんだ」
不満そうにそう呟いて、クラウスは盛大なため息を吐いた。
ステラが案内した店は、パンケーキが有名な、学生に人気の喫茶店だった。
クラウスもまた、友人やヒナからこの店についてよく聞いていた。まさかステラと来ることになるなんて想像さえしていなかった。
店内にいるのは甘い雰囲気を醸し出した恋人達ばかりで居心地が悪い。
「……ヒナと来たかった」
注文をした後、ポツリと呟かれたクラウスの本音。
胸が苦しくなったが、ステラは平静を装って答える。
「今度来たらいいじゃないですか。一週間後には自由の身になれるのですから」
「ヒナがずっと来たいって言っていた店なんだよ、ここ。なのに最初に来るのがお前とか……本当に最悪だ」
「本人を前にして堂々と最悪なんて言える貴方を、ある意味尊敬します」
「あぁ、堂々と言うさ。俺はお前が大嫌いだからな」
「心底嫌われているようですね、私は」
分かりきっていたこととはいえ、やはりこうもハッキリと告げられると胸が痛い。
ステラは必死に感情を押し殺した。
「言っとくが、俺は悪くないぞ。全部お前のせいなんだからな、ステラ。お前が先に俺を見捨てたんだ」
まるで刺すような視線だった。
ステラはいっそう強く痛む胸にまた気づかない振りをして、微笑む。
「見捨てるだなんて……。私はただ留学していただけですよ?」
そして……また嘘を吐いた。
その罪悪感がまたステラの心を苛んだ。
二人の間にある空白の三年間。
その三年の間に、クラウスの中で大きな心の壁が築かれていた。
「婚約者の俺にもなにも告げずに? 手紙もまったく寄越さないでか?」
「……お父様がクラウスに伝えていた通りですよ」
留学なんて真っ赤な嘘だ。
ステラの病の治療には莫大な費用がかかると宣告された。それは、クラウスとの結婚で伯爵家にもたらされる利益を上回るものだった。
そこでステラの両親は考えた。それほどの金が必要ならば、治療はせずとも良い。ただ、公爵家との繋がりを逃すことはあまりに惜しい。結婚まで命を繋がせることさえできれば、どうとでも言い訳ができるだろう。
その結果が、延命を目的とした治療だった。
ベッドの上から動けない日々が続き、ようやく動けるようになって、リハビリまで終えたのは、病を患って三年が経った時だった。
当時のステラは両親を信じていた。
だから……手紙を送ることが禁止されたことをなにも疑わなかったし、クラウスにはきちんと自分の思いが伝わっていると思っていた。
『お父様! たとえ離れ離れになってもずっとお慕いしています、とクラウスに伝えてください! そして病を完治し、必ず元気になって貴方のもとに戻ってくる……と』
『……分かった。クラウスには私達から伝えておく。だからなにも心配することはない』
両親はそう言った。
だからステラは安心して、治療を受けていた。すべては元気になって再びクラウスと笑い合うために。
しかし、治療から帰ってきたステラを待っていたのは、クラウスの激しい拒絶だった。
両親はクラウスに何も伝えていなかったのだ。
治療を受けていた期間、ステラはクラウスに一報もいれずに留学していたことになっていた。
すぐにクラウスに説明しようとしたが、両親は病について秘密にするようにとステラに釘を刺した。
もちろん、最初はあらがった。
もう両親を信じることができなかったからだ。
しかし……
『もし公言してみろ。ルイの命は……ないと思え』
その脅しはステラのすべてを容易く縛りつけた。
両親は分かっていた。五歳下の幼い弟が……ステラの一番の弱点であることを。
――ごめんなさい、クラウス。本当のことを伝えられなくて。私の我儘に付き合わせてしまって……けれど、これで最後だから。
つまらなそうな表情でパンケーキを口に運ぶクラウス。
その姿に胸がギュッと苦しくなった。
――もう私には、昔のような笑顔を見せてもらえる権利はないのでしょうね。
ステラもまたパンケーキを口に運ぶ。
夢にまで見た、クラウスとの久々の外出。
気になっていた今話題のパンケーキ。
ふわふわで甘くて、蜂蜜をかけると美味しさが増すのだとクラスの子達が言っていた。
けれどステラにとってはなんの味もない、ただ柔らかいだけの固形物に過ぎなくて、だんだんと咀嚼するペースが落ちていく。
咀嚼すら面倒になってきて、ついにステラはゴクリと飲みこんだ。
パンケーキも、思いも、全部。
二日目
◇午前
揺れる馬車内でステラは視線を感じた。
視線の主は、もちろんクラウスだ。
わずかに開けた窓から吹きこんだ柔らかな風が、ステラの美しい髪をなびかせる。
暖かな日差しがステラを照らすと、一枚の絵画のようだった。
ページを捲る所作すらも美しい。
しかし、そんな魅力が自分にあると気づいていないステラにとって、見つめられ続けるのはとても気恥ずかしかった。
居心地の悪さから、ステラは声をかけてみることにした。
「クラウスはこの本、ご存じですか?」
「っ……! ど、どれだ?」
突然話を振られて驚いたのか、クラウスが慌てたように答える。
クラウスの様子を窺えば、どこかソワソワと落ち着きがないように見える。
――まさか視線を送っていたことに感づかれたと思って、焦っているのでしょうか?
なぜクラウスは自分を凝視していたのだろう、とステラは考えた。
なにせ、クラウスはステラを心から嫌っている。そんな相手が自分を険しい顔つきで見つめていたのだ。
ステラはその優秀な頭脳で、確信をもって答えを導き出した。
――おそらく……いや、間違いなく嫌悪感を抱いて睨んでいたのでしょう。
追及してそれが明らかになれば、傷つくことは間違いない。
ステラは気づかない振りをすることにした。
「実はこの本、続編なのです。まさか続きが出るとは思っていなかったので、驚いてしまいました!」
ステラは本の表紙をクラウスへと向ける。
すると、なぜかクラウスは安堵したような表情を浮かべた。
「……その本、お前が昔好んで読んでいた本だろ」
「覚えてくれていたんですね」
「そりゃあ、あれだけ何度も何度もしつこいくらい話されたら忘れようがない」
ステラは幼少期から読書家だった。
そんなステラが特に愛読していたのがこの『鳥籠』という本で、幼い子どもが読むには少し……いや、かなり早いように感じられるドロドロとした人間関係を描いた物語だ。
主人公は鳥籠の中で生きているような、自由を知らない少女だった。
少女が背負わされた大きな期待、愛、嫌悪、嫉妬の数々。
それでも少女は真っ直ぐに生きようとする。少女にはそれしか道がなかったから。
結局最後、少女は心が壊れてしまうのだ。
所謂バットエンドである。
そんな物語に続編が出たらしい。
「で、大好きな物語の続編の感想は?」
「まぁ……羨ましい、というのが正直な感想でしょうか」
「……俺の記憶では、その本には羨ましいと思える要素なんてまったくなかったはずだが……。続編で明るい未来になるようにも到底思えない」
「読んでみますか? まぁ、クラウスには理解しがたいお話かもしれませんが」
少し煽られ、クラウスはムッとした。これぐらい読める。そんな意思表示をするように。
「読んでいただけるのなら嬉しいですが、前作を読んでからのほうが確実に楽しめますよ。ちゃんと読んだことはないでしょう?」
「お前の話だけで十分だったからな。そもそも、なんでこんな本が好きなんだ?」
クラウスの質問にステラは目を見開く。
それから黙りこむ。
いつも言葉を巧みに紡ぎ出すステラが考えこんでいる。あまりにも珍しいことで、クラウスにはそれが異様なものに見えた。
「……そうですね。昔はなんとなく惹かれていたのですが、久々に読んでみると理由が分かりました」
「なぜかも分からないのに好きだったのか。お前の感性はやはり理解しがたいな」
「でも、幼い頃にこの内容の物語を好きな理由があったら逆に心配になりませんか?」
「それは一理ある」
幼い子どもには早すぎる内容だ。
この物語を好む深い理由が、幼い子どもにもしあったら確実に心配に思うだろう。
「試験勉強の合間の気晴らしにでも読んでみてください。根気強く勉強に励むのもいいですが、休憩を挟むことも重要ですよ」
ステラは一巻を取り出して、続編とともにクラウスに差し出した。
「なぜ二冊も持ってる……。まぁ、そうだな。気晴らしぐらいにはいいか」
クラウスは本を受け取った。
かなり読みこまれているのか、年季が入っている。
人間の脳というのは万能ではない。
古い記憶は月日を重ねていくごとに消えていくものだ。
本の内容はうっすらとだが覚えている。
結末を知っても楽しめるのか? とクラウスは疑問を抱いた。
『読んでみますか? まぁ、クラウスには理解しがたいお話かもしれませんが』
しかし、こうも煽られてしまえば、乗らないわけにはいかない。
クラウスは挑発に弱かった。
「お前に理解できて俺に理解できないことなどないと証明してやる」
「……そうですか。楽しみにしていますね」
クラウスは意気込み、すぐに本のページを捲った。
好きな作品をこうして共有できる日が来るとは思っておらず、無意識に頬が緩んでしまう。そして同時に思ってしまった。
――私も、この主人公のようになれたらいいのに。
続編の意図を簡潔に話すとするなら、主人公が報われるようにと作られた物語だ。故に、その展開はあまりにもご都合主義で、巷ではあまり好評ではない。
ステラの続編に対する評価も、良いものではない。
しかしそれは、自身と主人公を重ねて見ているからだろう。
主人公の人生は本来一巻で終わるはずだった。しかし、続編という機会を与えられ、本来なら報われるはずのなかった主人公は幸せを掴んだ。
では……自分は? 人生が終われば続編なんてない。そこで終わりなのだ。
だからこそ、悔いは残さないように……自分に素直になりたいと思った。
この主人公のように幸せを掴めるように。
そしてその幸せを感じながら最期を迎えられるように。
◇午後
「ステラさん~!」
昼休み開始の鐘の音と共に、一人の女子生徒がステラの席へとやってきた。
肩まである、淡い水色のふわふわとした髪。
深緑の瞳を細め、その女子生徒は微笑んだ。
「ミナさん。どうかしましたか?」
「先生にノート運ぶように言われたんだけど、一人じゃ大変でさ。手伝ってくれないかな?」
ミナと呼ばれた女子生徒はステラの隣の席に腰をかけ、両手を合わせた。
ステラは教卓に置かれたノートの山へと視線を向ける。
――確かにあの量を一人で運ぶのは大変でしょう。それだけの理由で声をかけてきたわけではないのでしょうけれど。
ステラはニコリと微笑む。
「私で良ければお手伝いさせてください」
「さすがステラさん~! じゃあ、持っていこうか!」
「そうですね」
ノートを抱えて二人で教室を出る。
教科書の山を半分に分けて持っているものの、ステラにとってはかなり重い。
気を緩めたら力が一瞬で抜けてしまいそうだ。そんな姿を見せるわけにはいかないと、ステラは必死に力を込めた。
「ステラさん、大丈夫? なんか……顔色悪い?」
「気のせいです」
「本当に? 婚約者さんと急に接近したし、なにかあるんじゃない?」
訝しげにステラを見るミナに、ステラは肩を竦めた。
「わざわざ私に聞かなくても、貴方なら全部知っているじゃないですか? もうこの話は終わりです。早く終わらせますよ」
その言葉に、ミナの雰囲気が瞬時に変わった。天真爛漫な笑みから一変し、表情が消え去る。
「……はい。申し訳ございません、ステラ様」
「いいですよ。それが貴方の仕事なのですから」
早く目的地に辿り着くことを考え、歩を進めていく。ところが、突如荷物が軽くなり、ステラは瞳を瞬かせた。
そしてその理由……ミナに視線を向ける。
「ごめんね、ステラさん。先約があったのに、手伝ってくれてありがとね! あとはやっておくから!」
そう言い残して、ミナは軽々とノートを持って駆けていった。
その怪力っぷりにステラは呟く。
「私、要らないじゃないですか」
ため息と共に肩を竦めながら。
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