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1巻

1-2

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「もちろん、とある条件付きで……ですが」
「条件? というか、なんのお誘いをしてきたの?」
「クラウスの一週間をください、とお願いしてきました。承諾していただけるなら、一週間後に婚約の解消を父にお願いするという条件で」
「ど、どうして急に婚約解消なんて! まさか姉様、体調が悪いっていうのは……」

 ルイの瞳にみるみるうちに涙が溜まっていく。
 ステラは紅茶の入ったカップをテーブルに置くと、ルイに一歩近づいた。
 そして膝を曲げて目線を合わせる。

「姉様の体調のこと、父様と母様は知っているの?」
「伝えていません。伝える気もありません」
「どうして?」
「言ったところで、結婚を急かされるだけで良いことはなにもないでしょう。あの人達の私に対する態度や思考が変わるとは到底思えません。それに……最後なんです。最後まで言いなりでいたくありませんから」

 ステラの言葉にルイは唇を噛みしめる。
 ステラは明言しなかったが、病気が想像以上に進行しているのだ。一週間後に婚約の解消を願い出ると言っているくらいなので、考えたくはないが、残された時間は長くないのだろう。
 ルイは無力な自分が大嫌いだった。
 姉の背中を見ていることしかできない、守られてばかりの自分が。
 もし弟じゃなくて自分が兄だったら……。ステラはもっと違う運命を歩むことができたのかもしれない。
 幼いながら、そんなことばかり考えて小刻みに震える小さな体を、ステラはそっと優しく抱きしめる。
 余命宣告を受けた時、ステラは自分に素直になろうと決めた。
 だから、三年前から関係が拗れてしまったクラウスの時間をもらった。幸せだった幼い頃の距離感を、取り戻したかったから……
 クラウスと一緒にしてみたいことが、ステラにはたくさんあった。
 もうこの命は長くないのだから、最後くらい好きに生きてみたい。ステラにとっても、クラウスにとっても、記憶に残るような最後の思い出を作りたかった。
 せめて、少しでも昔のように戻れたら……クラウスを想い、治療に励んだ苦しい日々は無駄ではなかったのだと、あの頃の自分を慰められるだろうから。
 そして同時に浮かんだのがルイのことだった。
 自分がいなくなった後、この子はどうなってしまうのだろうか。
 次期当主として毎日努力するルイを誰よりも知っているからこそ、ルイが立派な当主になることをステラはみじんも疑っていない。周囲の者達もそうだろう。
 けれど、やはり彼が立派な大人になるその時まで……傍にいたかった。

「貴方は私の自慢の弟ですよ、ルイ」

 ステラはそうささやくと、ルイの頭を優しく撫でた。
 その言葉に、コップから水が溢れ出るようにルイの瞳から涙がこぼれはじめた。
 ――ずっと一緒にいたい。
 ――置いていかないで。
 ――一人にしないで。
 次々に溢れ出る言葉。
 その言葉の一つひとつに頷きながら、ステラは「ごめんね」と繰り返した。



   一日目
    ◇午前


 翌日。王立クラリアル学園へとステラは向かう。
 王立クラリアル学園は初等部から高等部まであり、貴賤を問わず優秀な学生が集められている。幼い頃から家庭教師をつけられた貴族の子女、彼らを実力で抜いて入学を果たした平民たちが、学園で成績を競い合っていた。
 そんな学園に向かう途中の馬車の中で、日課の読書をたしなむステラの前には、つまらなそうに窓の外を眺めるクラウスの姿があった。
 ――クラウスの一週間をいただけませんか。
 そう告げたステラがまず一日目に実行したのが、一緒に登校することだった。

「そうでした……!」

 ステラは思い出したように本を閉じると、かばんから予定帳を取り出す。

「言い忘れていましたけど、今日は昼食を作ってきたんです。一緒に食べましょうね」
「はぁ⁉ 昼もお前と一緒にいないといけないのか⁉」
「それと、今日と明日は授業が終わったら少し付き合ってください。行きたいお店があるんです」
「そんなの俺とじゃなくて友人の令嬢達と行けばいいだろ? あ、そうか。お前、友達いないもんな」

 嫌みったらしくクラウスは言った。
 ステラは宣言通りクラウスと共に一週間を有意義に過ごすつもりだ。
 しかし、クラウスは違った。
 愛するヒナと一週間も会うことを禁止され拷問のように感じていた。自分だけ心理的ダメージを受けて、ステラは無傷で済むなどクラウスは断じて許せなかった。だからステラが気にしていることを取り上げて攻撃したのだ。
 実際、ステラの交友関係は広くて浅いものばかり。
 容姿端麗で成績優秀、物腰も柔らかいステラは誰もを惹きつける。その一方で、誰もが恐れ多いと近づくのをためらってしまい、まるで芸術品を鑑賞するように一歩引いてステラに接するのだ。学園で生徒会に所属しているのも、品行方正な印象を強めていた。
 それ故、ステラには未だに友人と言える相手がいない。

「友人がいないなんて可哀想な奴だ。俺を縛るよりも、友人作りに専念したほうがいいんじゃないか?」

 だが、ステラは気にせずに返す。
 今専念すべきことは、友人作りではなく、クラウスとの関係の改善なのだから。

「では、貴方が友人としてお付き合いください。婚約者ではなく、友人として。それならクラウスも少しは心にゆとりができるのでは?」
「は? ……友人も勘弁してほしいが、まぁ、婚約者として接するより百倍はマシだな。それにしても、出かけたいなら他の奴でもいいんじゃないか? たとえば生徒会のメンバーとか」
「そうですね……。生徒会の方達には良くしていただいています」
「そうだ、そうだ。特にアレクシア殿下とは随分親しい様子だったじゃないか。誘ってみたらどうだ?」

 誰かいないかと考えて、真っ先に浮かんだのがこの王国の第二王子であり、学園の生徒会長を務めるアレクシア・クラリアル・ルドルフだった。ステラと過ごすこの時間を代わってくれるなら誰でもいいのか、クラウスは投げやりに言った。
 生徒会の仕事で学園内を歩く二人の姿を、クラウスをはじめほとんどの生徒が頻繁に目にしていた。クラウスという婚約者がいるからか関係を疑われることはないが、完璧な令嬢であるステラはアレクシア殿下の友人として相応ふさわしいと噂されていた。
 公爵子息であるクラウスは、アレクシアと幼い頃から付き合いがある。だからこそ、大変心優しい人間である彼ならば間違いなく誘いに乗ってくれるだろうと思った。

「アレクシア殿下はお優しい方ですからね。頼めばご一緒してくださると思います。けれど……クラウス。貴方じゃないといけないんです。貴方じゃないと意味がないのです」

 真剣な表情、真っ直ぐな瞳で、ステラは言葉を紡いだ。
 その視線を受けて、クラウスはそれ以上言うことができなくなった。

「……そもそもの話だが、お前は放課後に店とかに寄ってもいいのか?」
「お父様とお母様には、図書館で勉強するので遅くなると伝えています。むしろ二年生に向けての勉強だと話したら褒めてくれました。私たちももうすぐ二年生ですから。あ、勉強会も外せませんね……。明日のお昼休みにしましょう」

 そう言ってステラは予定帳に書きこんだ。これまでクラウスと共に勉強をしたことはない。初めてのことだ。いい思い出になるだろう、と自然と笑顔になった。
 その様子に、肩をすくめるクラウス。

「ほんと……なんでお前なんかと登校して昼飯も食って、放課後まで時間を使わなきゃいけないんだよ」
「一週間の辛抱ですよ、クラウス。頑張って」
「お前が俺に辛抱させてるんだぞ。応援する立場かよ……」
「はい。だって貴方の一週間をいただいているんですから」

 そう言って笑うステラに、クラウスはため息をこぼす。
 これがヒナとなら……と考えているのだろうと思い、ステラは少しだけ表情をくもらせた。
 ステラの想像通り、ヒナは今頃家の農作業の手伝いを頑張っているのだろうと思い浮かべながら、クラウスは外へと視線を移そうとした。その時見えたステラの横顔。
 その横顔は、あまりにも淋しげで、同時に諦めのようなものも感じさせた。
 まるで誰かを想い、その想いを抑えこんでいるような。
 そしてすべてを諦めた……そんな表情。
 静かに外を眺めるその横顔を、不自然に思わなかったわけではない。
 けれど、自分には関係ないことだと片づけて、クラウスもまた窓の外へと視線を向けた。



    ◇午後


「クラウス。迎えに来ましたよ」

 昼休みの開始をしらせる鐘が鳴ってしばらくして、ステラはクラウスの教室に顔を出した。
 それと同時にザワつきはじめる生徒達。
 それもそのはず。普段他クラスに滅多に顔を出さないステラの訪問。そしてその理由がクラウスなのである。
 二人が婚約していることは、学園の生徒にとって周知の事実であった。
 しかし、こうして実際に二人が学園で顔を合わせている場面を見るのは誰もが初めてだった。その珍しい光景に、自然と生徒達の視線が集まってしまうのも無理はない。
 それにいち早く気づいたクラウスは教科書を片づける手を止めて、慌ててステラを連れて教室を飛び出し、空き教室へと入る。
 その様子に黄色い声が沸き上がる。「お二人が手を繋いでいらしたわ!」「一体どこに向かわれたのかしら⁉」「婚約者ですもの、二人きりで話したいことがあるに違いないわ」などと口々に生徒達は妄想を語った。しかし、実際はそんな甘い展開ではない。
 空き教室に連れてこられたステラは、なおも廊下ろうかから聞こえる黄色い声に肩をすくめた。そして、先程から一向に口を開かないクラウスへと声をかける。

「空き教室ですか……。昼食をご一緒できるのならどこでも構いませんが、せっかくですし外で食べませんか? こんなにいい天気なんです。部屋の中でなんてもったいないです」

 するとクラウスがようやく口を開き、堪えかねたとでもいうように声を荒らげた。

「そんなことよりもなぜ教室に来たんだっ⁉ 学園では関わるなと言っただろ!」
「ですが、待ち合わせ場所をお伝えし忘れたのですから、迎えに行かないとクラウスと合流できないじゃないですか」
「そもそも伝え忘れることが論外だ!」
「私だって人間です。忘れることくらいあります。……ではこうしましょうか。明日からは人目につかない校舎裏に集合です。そこでお昼をいただきましょう。それでどうですか?」

 激怒するクラウスに、ステラは一切動じなかった。
 クラウスの反応は想定内だったからだ。
 そんなステラにクラウスは肩をすくめた。一人怒り、声を上げているのが馬鹿らしく思えてきたからだ。
 それから二人は校舎裏へと移動した。
 その間、多くの生徒達の視線を集めることになってしまい、クラウスの機嫌は悪化していった。
 校舎裏に到着した頃には、ステラの言葉に一切反応を示さないほどになっていた。

「シートを敷いたのでどうぞ」
「お前はこの俺をシートに座らせる気なのか?」

 クラウスは本来なら気にもしないような些細ささいなことに口出しした。
 ステラが少しでも困る様子を見たかったのだ。
 しかし、ステラがクラウスの策略にかかることはなく、目を瞬かせた。そんなことを言われるとは思っておらず、きょとんとする。

「シートはお嫌いでしたか? 野原に直接寝転ぶような人でしたのに、人は変わるものですね」
「む、昔の話は関係ないだろ! 俺は大人になったんだ!」
「そうですか。では明日から椅子を持って参りますね。どのような椅子がご希望ですか?」
「いや、もういい……」

 クラウスは大きなため息をこぼして黙った。なにを言ってもステラに口で勝てるとは思えなかったため、ヒナとの時間を想像して堪えることにしたのだ。

「クラウス。どうぞ」

 ステラはそう言って持ってきたバスケットを開いた。

「……サンドイッチか」
「はい。クラウス、お好きだったでしょう?」
「昔の話だ」
「そうでしたね。では、今はお嫌いですか?」
「さぁな」

 クラウスはそう告げると、ステラからバスケットを受け取り、サンドイッチを取り出した。
 ハムとキャベツ。そしてソースで味つけされたごく普通のサンドイッチ。
 クラウスがそのサンドイッチを少しの間眺めてから、口へと運ぶのを、ステラは息を詰めて見つめた。
 ふんわりとしたパンの食感。
 キャベツのシャキシャキとした歯応え。
 肉厚ながらも、柔らかなハム。そして覚えのあるソースの味。

「……懐かしい味だな」
「よくサンドイッチを持って出かけましたね」
「そう、だったな」

 二人は幼い頃の記憶に思いを馳せた。
 よく二人でピクニックをした。
 美しい湖の見える場所で、シートを広げ、二人で座って。
 料理なんて普段はしないステラだけれど、クラウスのためにとサンドイッチを作ってピクニックの度に持っていった。
 クラウスは一生懸命作るステラの姿を思い浮かべながら「美味しい」と何回も嘘をついた。
 本当は味がしない日もあった。
 歪な形で見栄えが悪い日もあった。
 時には嘘でも美味しいとは思えない日もあった。
 けれど、クラウスは「美味しい」と言い続けた。
 本当のことを伝えたらステラを悲しませてしまう。そう思ったからだ。

「あの時、本当は美味しくなかったでしょう?」
「き、気づいていたのか⁉」
「まぁ、気づいたのは最後の時ですけど。メイドが私の作ったサンドイッチを食べて、味がおかしいことに気づいたんです。クラウスは無理して美味しいって言って食べてくれていたんですよね」
「メイドが気づいた……ってお前。余程の味覚音痴なのか?」
「……そうですね。私、かなりの味覚音痴みたいなんです。メイドには心底驚かれましたよ」

 ステラは明るい声色で言った。
 しかし、実際は笑い話なんかではない。味覚音痴ではなく、ステラが患った病の症状だったのだ。今もステラは味覚を失ったままだ。
 ステラもサンドイッチを口に運ぶ。
 本当は食欲なんてまったくない。けれど、無理矢理サンドイッチを口に入れた。
 相変わらず味はしない。
 ただの固形物を口に含み、咀嚼そしゃくし、恐る恐る……飲みこむ。
 本来ならためらいもなく、容易たやすくできることだけれど……ステラにとってはあまりにも困難なことへと変わってしまっていた。
 ステラは横目でクラウスの様子をうかがう。
 ステラに興味がないからか、クラウスは幸いにも彼女の異変には気づいていないようだ。それに安堵しつつ、最後の一口を無理矢理口内に詰めこんだ。

「……上達したんだな」
「え……」

 突然のクラウスの言葉にステラは驚く。しかも、嫌みではなく素直な賛辞を彼は発した。
 ステラは溢れ出そうになる歓喜をなんとか抑えこむ。
 治療中、いつもクラウスのことを考えていた。
 次会える時のことを考えて、体調が良い時は料理の練習をした。
 今度は美味しいものを食べてほしくて。心から美味しいと言ってもらいたくて。
 ――まぁ、それはなかなか叶わなかったんですけどね。
 三年間の治療生活を送り、屋敷に戻ってきたのが一昨年の秋。その頃にはクラウスの心にはヒナがいた。
 少し時間はかかり、且つ険悪な関係にはなってしまったが、もう一度料理を食べてもらえ、美味しいと言ってもらえて、報われたような気持ちになった。
 そしてなにより……

「なんだよ?」
「いえ。また明日も作ってきますね」
「明日も一緒に食べなくちゃいけないのか……」
「一週間の辛抱ですよ。ですから……少しだけ我慢してくださいね」

 ぎこちなさは消えないものの、昔のように肩を並べて食事ができたことがステラは嬉しかった。

「明日の昼休みはお勉強会をしましょうね」
「本当にするのか?」

 不満げに言うクラウスにステラは頷く。

「もちろん。得られるものも多いでしょうし」
「言っておくが、俺はお前に教わるなんて絶対に嫌だぞ」

 どうやらステラに勉強を教わるのは嫌らしい。
 対抗心か、それとも嫌悪感からか。あるいは両方か。

「……個人で黙々とやる勉強会を予定していますから安心してください」
「おい。最初の間はなんだ?」
「気のせいですよ」

 サンドイッチを手に取る。
 上達した料理の腕前。けれど、一向にうまくいかないクラウスとの関係。
 ステラはただぼんやりとサンドイッチを見つめた。


   ◇□◇


 放課後。

「ステラ」

 聞き慣れた優しい声がステラの名を呼んだ。
 廊下ろうかを歩いていたステラは足を止め、振り返る。
 ふんわりした黒髪と、ミルクティーベージュの瞳。端正なその顔立ちは、王族の血を引く者に相応ふさわしく整っている。
 そんな人物――アレクシアの姿を捉えて、ステラは会釈をする。

「アレクシア殿下。お疲れ様です」
「あぁ、お疲れ様。ごめん、急に呼びとめて」
「いえ、お気になさらず。殿下はもしかして生徒会のお仕事ですか? 私もなにかお手伝いを……あ」

 そこでステラはハッとした。そうだった。これからクラウスと出かけることになっているのだ。
 無理矢理約束を取りつけた以上、その約束を破ってしまうのはあまりにも非常識だ。
 けれどアレクシア一人に仕事をしてもらうのも申し訳なくて……難しい選択に、ステラの良心が揺らぐ。
 眉間にシワを寄せて困ったとうなるステラに、アレクシアは笑う。

「お気遣いありがとう。だけど、次の会議の資料を配っているだけだから大丈夫だよ」

 そう言って資料を差し出され、受け取る。

「急いでいるところを呼びとめて悪かった」
「いえ。構いません」
「それなら良かった。てっきりクラウスと待ち合わせをしているのだとばかり思っていた」
「……三年生のアレクシア殿下までご存じなのですか」

 少し目を見開くステラ。
 二人が共に昼食を取っているところを見かけた生徒が言いふらしたようだ。昼休みが終わる頃には、クラスメイト全員に知れ渡り、ステラは質問攻めにあうことになった。
 教室に足を運んだだけであれほど注目されたのだ。昼食を共に取れば、さらに大騒ぎになることは予想していたが……アレクシアの耳にまで届くのは予想外だった。

「俺も驚いたよ。君達は最近……いや、君が留学から帰ってきてから一緒にいる姿をあまり見たことがなかったから」
「パーティーにも出席していませんでしたしね。驚かれるのも無理はありません」
「……前から思っていたけれど、大丈夫なのか? ステラにこんなことを言うのも心苦しいが、クラウスに関してはその……最近あまりいい噂を聞かない。平民の女性と密会しているところを見たという者もいる。ただの噂に過ぎないかもしれないけど……」
「心配してくださりありがとうございます、アレクシア殿下。やはり殿下は優しい方ですね」

 そう言ってステラは微笑んだ。
 けれど、その笑顔は疲弊している。
 結局勉強会について良い返事はもらえなかった。
 クラウスとの関係改善は難航中である。
 どうやらアレクシアは、疲れた様子のステラを放っておくことができなかったらしい。

「ステラ。何度も繰り返すようだけど、俺に力になれることがあれば頼ってほしい。これ以上の無理は良くない」

 改めてアレクシアの優しさに触れ、ステラは顔を綻ばせた。
 こうしてアレクシアがステラの身を案じてくれるのは、これが初めてではない。
 療養生活を終え、学園に入学して以来、何度も手を差し伸べてくれている。


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