上 下
29 / 31
ifストーリー

6日目 ①

しおりを挟む


5日目 ② を投稿予定でしたが、6日目に入ります。
引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

______________




そしてパーティ当日となった。


純白のドレスに身を包んだステラ。
所々にビーズやレースの装飾が施されているからか、シンプルなドレスではあるものの、華やかさがある。


パーティ会場には多くの貴族達が集い、世間話に花を咲かせたり、食事を楽しんでいた。

そんな会場に久々に足を踏み入れたステラは、どこか緊張した様子でいた。


「ステラ様。いらっしゃったんですね」

「わぁー! 素敵です! ステラ様!」


会場に入るなり、すぐ様ステラの元には人集りが出来た。
学院以外でクラスメイトと顔を合わせる機会が中々無かったステラ。
その為だろうか。
何だか不思議な気分である。


「倒れたとお聞きしましたけど、もう体調の方は大丈夫なんですか?」

「心配をかけて申し訳ありません。はい。お医者様からも許可を頂いての参加ですので、大丈夫ですよ」


ステラがそう言えば、令嬢達は安堵すると共に歓喜の声を上げた。
皆、ステラがパーティに参加する日を心待ちにしていたのだ。



『参加できるのですか!?』

『俺も同行させて頂けるならの話っすよ?』

『勿論です! よろしくお願いします』


今朝、パーティ参加への許可を貰ったステラはそれはそれは喜んだ。
なにせ久々のパーティだ。
楽しみじゃない訳が無い。


そしてやはり、久しぶりのパーティは胸が踊るものだった。
会場に1歩足を踏み入れた瞬間に感じた懐かしさ。

自然と笑みがこぼれてしまう中、1人の令嬢がゆっくりとステラの元へと近付いてきた。

そして…ステラへと尋ねた。


「御機嫌よう、ステラ。お久しぶりですわね。……あらぁ? クラウスは一緒じゃなくて?」


突如現れた令嬢の名前はブリトニー・クズダーン。
クズダーン伯爵家の令嬢である。

そして…


「ブリトニー。お久しぶりです!」

「倒れたって聞いて心配しておりましたのよ!!! もう!!」



ステラの友人であった。


「心配をかけてしまってごめんなさい、ブリトニー。けど、パーティに出席出来て良かったです。こうして貴方とまたお話する事が出来たのですから」

「べ、別に私は貴方とまたお話がしたくてパーティに出席したわけではありませんわ! でも、まぁ? お話し相手になってあげないこともありませんわー!」


リーリエント伯爵家とクズダーン伯爵家の当主同士の仲の悪さは社交界で知らぬ者は居ない。
その為、2人は両親から関わりを持たぬ様にと言い聞かせられて育てられて来た訳だが……


「それで、クラウスは何処ですの?」

「遅れて来るそうです」

「まぁ!? ステラを待たせるなんて本当にいい度胸がおありね! 到着次第、私がお仕置をしなければいけませんわ! ステラを待たせた罪は重罪ですわ!!」

「相変わらずブリトニーは面白いですね」


2人の仲は大変良好であった。
ブリトニーに関しては、認める事は無いだろうが、ステラを心から慕っているのだ。


それからステラはブリトニーや令嬢達とパーティを過ごした。

そんなステラを遠目に眺めるルイとフレディ。


「いいのか、ルイくん? お姉さんの所に行かなくて」

「お友達と過ごされているんです! 僕が邪魔しちゃ悪いじゃないですか」

「お姉さんはルイくんを邪魔だとは絶対に思わないと思うけどな~? お、ルイくん。これは何だ?  すげぇ美味そうだ!!」

「フレディさん、はしゃぎすぎですよ!」


各々がパーティを楽しむ中、突然オーケストラによる演奏が始まった。
どうやらダンスの時間が始まったらしい。

男女が手を取り合い、踊りを始める。
その様子を…ステラはただ見詰めていると


「ステラ様!」

「アルス?」


ステラの元に駆け寄ってきたのは、クラウスの護衛を務めるアルスだった。

ゼェゼェと息を切らしながら、必死に言葉を紡いで行った。


「く、クラウス様が…た、体調不良との事で本日のパーティは…欠席…されるとの事なんです」

「はぁぁぁぁ!? それは本当ですの!?」

「こ、これはクズダーン嬢!? は、はい! ほ、本当ですっ!!」


アルスの報告にブリトニーは怒りを露にした。

顔を真っ赤にし、激怒するブリトニー。
「次に会った時は三枚おろしですわ!!」など令嬢として発してはいけないような危うい言葉を零す。

クラウスの欠席に会場がざわめく。

どうやらステラの久しぶりのパーティの参加には、多くの者が注目していたらしく、クラウスとステラのダンスを心待ちにしていた者も多かったようだ。

しかし中には……




「やはりあの噂は本当なのかもしれないわね」

「捨てられたんだわ、きっと」

「可哀想な人」

「でも、4年も放置してたんでしょ? 愛想つかされるのも当然よ」

「男遊びが酷いって聞いたわ」

「浮気してるって。相手は何でも庶民らしいわよ」




根も葉もない噂の数々がステラを襲う。


そしてその言葉は次第に鋭い刃のように姿を変えていく。



「前々から気に入らなかったのよ」

「お高く振舞ってて嫌いだった」

「ほんと、滑稽」

「1人寂しく隅っこに居たらいいのよ。お似合いだわ」


ステラは良い意味でも悪い意味でも目立つ少女だった。
文武両道で心優しい性格。
多くの人に慕われる彼女だったが、勿論中にはそれを良しとしない者も居た。
妬み嫉みの感情から、ステラを悪く言う者も少なくは無かった。
そんな者達による攻撃が今、ステラへと矛先を向けていた。


パーティは煌びやかで、華やかな場所。
それが一変した。


パーティに参加したい。

そう願ったのはステラだ。
だが……まさかこんな事になるだなんて想像さえしていなかった。
だからこそ、胸が張り裂けそうだった。
ステラの知るパーティは、皆が笑顔で楽しそうで……そして心満たされる場所だった。

美しい音楽に合わせて、踊る事が大好きだった。


その時だった。


1人の青年が……ステラの元へと歩み寄ってきたのは。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。