26 / 31
ifストーリー
3日目
しおりを挟む翌日。今日もまた昼休み開始のチャイムと共に女子生徒達がステラの元へと集まり始めた。
今日もまた一緒に昼食を……との心意気を持って。
しかし、ステラは申し訳なさそうに彼女達に伝える。
「申し訳ありません。今日は生徒会の仕事があって一緒に昼食はとれないんです」
「そうなのでね。いえ、生徒会のお仕事ならば仕方ありません。お仕事、頑張ってください」
ステラが申し訳なさそうな表情でそう告げて、去っていく。
そんなステラを見送りながら、残された女子生徒達はワイワイと口々に話し始める。
内容は勿論…
「会長様と2人きりなのでしょうか!?」
「もしそうだとしたら大変ですわっ!2人きりの密室で何も起こらない筈が無いのですわっ!」
「ちょっと! 破廉恥ですっ! それ以上の妄想はいけませんっ!」
なんて和気あいあいとした女子生徒達の行き過ぎた妄想話を抑制しようと1人の女子生徒が顔を真っ赤にさせて言う。
「けれど、絶対にお似合いだと思いませんか? あの御2人」
「勿論同意ですわ。皆様もそうではなくて?」
「「「「当たり前ですっ!」」」」
満場一致の回答だった。
そして……そんな女子生徒達を教室から見つめる人物が1人。
「は? ステラとアレクシア殿下がお似合いだと…?」
その人物…クラウスは目を見開き、そう小さく呟いた。
▢◇◇◇▢▢▢▢◇◇◇
生徒会室へとやって来た2人。
そして椅子に腰掛けたアレクシアは、ステラから受け取ったノートに目を通していた。
けれど、どこか落ち着かない様子のアレクシア。そしてそれはステラも同様だった。
「えっと……取り敢えず座ったらどうだ?」
「い、いえ! 私は結構ですのでっ!」
慌てた様子で左右に頭を振るステラ。
どうやらノートを見たアレクシアの反応が気になって仕方ないらしい。
恐る恐るとアレクシアを見つめたり…けれど目が合えばすぐ様逸らしたり。
そんなステラがあまりにも愛らしくて、アレクシアは笑みが零れてしまうのを必死に堪えた。
「ステラ。全部やってみよう」
「で、ですが……時間はあるのでしょうか」
「それは分からない。けど、始める前に諦めるのが1番良くないと俺は思う」
アレクシアの言葉にステラは俯いた顔を上げた。
2人の目が合えば、アレクシアが優しく微笑んだ。
その笑みに……ステラは大きく頷いた。
◇▢▢▢◇◇◇◇◇
放課後。
校門の前には、ルイの姿があった。
「姉様!」
「ルイ。お待たせしました」
「僕も今来たから!」
そう言って満面の笑みを浮かべるルイ。
その愛らしい笑顔にステラも釣られて笑みを浮かべる。
「やぁ、ルイ。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「アレクシア殿下っ! お久しぶりです!
はい、とっても元気ですよ!」
アレクシアが姿を現せば、ルイは元気よく挨拶をし、アレクシアの元に駆け寄る。
「ステラから聞いたが、この間の試験。1位をとったそうだな。おめでとう」
「ありがとうございます! けど、油断は出来ません…。いつも競り合っている相手が1科目受けてないんです。だから1位をとれた様なものなので…」
「だがルイ。そう卑下する必要は無い。1位をとれたのは、正しくルイの努力の結果だ。だからもっと誇っていいと俺は思うぞ」
「はい。私もそう思いますよ、ルイ。貴方が努力した結果の1位なんですから誇りを持って下さい」
「あ、ありがとうございます! 姉様、アレクシア殿下! 2人にそう言って頂けて、自信が持てそうですっ! この1位は僕の努力の結果ですもんね」
そう言って嬉しそうに笑うルイの頭をステラは優しく撫でた。
その優しい手つきにルイは幸福を感じる中、ハッと我に返る。
「そうでした! 姉様、早く行きましょう! パンケーキ、売り切れちゃいます!」
「ルイったら。焦ってもパンケーキは逃げませんよ?」
「けど、大人気なんだよ!?」
「もしかして喫茶店って……」
アレクシアは気づく。
ステラのやりたい事リストに、喫茶店巡りと書かれていたのを思い出したのだ。
正直、食事を拒んでいたステラがなぜ喫茶店巡りを望んだのかアレクシアはさっぱり分からなかった。
しかし、今なら分かる。
「ルイは相変わらず、甘い物が大好きですね」
「ごめんね、僕だけ楽しい様な所に一緒に来て欲しいだなんて我儘を言ってしまって……」
「謝る必要なんてありませんよ。言ったでしょ? 私は貴方と過ごす時間が何より楽しくて幸せなんですから」
ステラのやりたい事。
その中には間違いなく、ルイとの幸せを育む時間が存在しているのだとアレクシアは理解した。
本当に……弟思いの素敵な姉だと再度実感した。
「よければアレクシア殿下もご一緒に如何ですか?」
「え」
思いがけないルイからの誘いにアレクシアは目を開いた。
すると今度は
「アレクシア殿下さえよければご一緒しませんか? 大人数で行く方が絶対に楽しいと思いますし」
「いや、しかし……」
2人の時間を邪魔する様で、アレクシアは戸惑った。
しかし、2人の善意を断るのも躊躇われる。
うーんとアレクシアは頭を悩ませた。
「アレクシア殿下。その……手伝って頂けるのでしょう?」
ステラの言葉に、アレクシアの選択は決まった。
「行くか。パンケーキが逃げる前にな」
「はい!」
アレクシアの返事にルイは瞳を輝かせ、ステラは嬉しそうに微笑んだ。
一方その頃……そんな仲睦まじい3人を見つめる人物が1人。
その人物……クラウスは眉間にシワを寄せ、3人を静かに聞き耳をたてつつ、見つめていた。
161
お気に入りに追加
5,992
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。