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ifストーリー
3日目
しおりを挟む翌日。今日もまた昼休み開始のチャイムと共に女子生徒達がステラの元へと集まり始めた。
今日もまた一緒に昼食を……との心意気を持って。
しかし、ステラは申し訳なさそうに彼女達に伝える。
「申し訳ありません。今日は生徒会の仕事があって一緒に昼食はとれないんです」
「そうなのでね。いえ、生徒会のお仕事ならば仕方ありません。お仕事、頑張ってください」
ステラが申し訳なさそうな表情でそう告げて、去っていく。
そんなステラを見送りながら、残された女子生徒達はワイワイと口々に話し始める。
内容は勿論…
「会長様と2人きりなのでしょうか!?」
「もしそうだとしたら大変ですわっ!2人きりの密室で何も起こらない筈が無いのですわっ!」
「ちょっと! 破廉恥ですっ! それ以上の妄想はいけませんっ!」
なんて和気あいあいとした女子生徒達の行き過ぎた妄想話を抑制しようと1人の女子生徒が顔を真っ赤にさせて言う。
「けれど、絶対にお似合いだと思いませんか? あの御2人」
「勿論同意ですわ。皆様もそうではなくて?」
「「「「当たり前ですっ!」」」」
満場一致の回答だった。
そして……そんな女子生徒達を教室から見つめる人物が1人。
「は? ステラとアレクシア殿下がお似合いだと…?」
その人物…クラウスは目を見開き、そう小さく呟いた。
▢◇◇◇▢▢▢▢◇◇◇
生徒会室へとやって来た2人。
そして椅子に腰掛けたアレクシアは、ステラから受け取ったノートに目を通していた。
けれど、どこか落ち着かない様子のアレクシア。そしてそれはステラも同様だった。
「えっと……取り敢えず座ったらどうだ?」
「い、いえ! 私は結構ですのでっ!」
慌てた様子で左右に頭を振るステラ。
どうやらノートを見たアレクシアの反応が気になって仕方ないらしい。
恐る恐るとアレクシアを見つめたり…けれど目が合えばすぐ様逸らしたり。
そんなステラがあまりにも愛らしくて、アレクシアは笑みが零れてしまうのを必死に堪えた。
「ステラ。全部やってみよう」
「で、ですが……時間はあるのでしょうか」
「それは分からない。けど、始める前に諦めるのが1番良くないと俺は思う」
アレクシアの言葉にステラは俯いた顔を上げた。
2人の目が合えば、アレクシアが優しく微笑んだ。
その笑みに……ステラは大きく頷いた。
◇▢▢▢◇◇◇◇◇
放課後。
校門の前には、ルイの姿があった。
「姉様!」
「ルイ。お待たせしました」
「僕も今来たから!」
そう言って満面の笑みを浮かべるルイ。
その愛らしい笑顔にステラも釣られて笑みを浮かべる。
「やぁ、ルイ。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「アレクシア殿下っ! お久しぶりです!
はい、とっても元気ですよ!」
アレクシアが姿を現せば、ルイは元気よく挨拶をし、アレクシアの元に駆け寄る。
「ステラから聞いたが、この間の試験。1位をとったそうだな。おめでとう」
「ありがとうございます! けど、油断は出来ません…。いつも競り合っている相手が1科目受けてないんです。だから1位をとれた様なものなので…」
「だがルイ。そう卑下する必要は無い。1位をとれたのは、正しくルイの努力の結果だ。だからもっと誇っていいと俺は思うぞ」
「はい。私もそう思いますよ、ルイ。貴方が努力した結果の1位なんですから誇りを持って下さい」
「あ、ありがとうございます! 姉様、アレクシア殿下! 2人にそう言って頂けて、自信が持てそうですっ! この1位は僕の努力の結果ですもんね」
そう言って嬉しそうに笑うルイの頭をステラは優しく撫でた。
その優しい手つきにルイは幸福を感じる中、ハッと我に返る。
「そうでした! 姉様、早く行きましょう! パンケーキ、売り切れちゃいます!」
「ルイったら。焦ってもパンケーキは逃げませんよ?」
「けど、大人気なんだよ!?」
「もしかして喫茶店って……」
アレクシアは気づく。
ステラのやりたい事リストに、喫茶店巡りと書かれていたのを思い出したのだ。
正直、食事を拒んでいたステラがなぜ喫茶店巡りを望んだのかアレクシアはさっぱり分からなかった。
しかし、今なら分かる。
「ルイは相変わらず、甘い物が大好きですね」
「ごめんね、僕だけ楽しい様な所に一緒に来て欲しいだなんて我儘を言ってしまって……」
「謝る必要なんてありませんよ。言ったでしょ? 私は貴方と過ごす時間が何より楽しくて幸せなんですから」
ステラのやりたい事。
その中には間違いなく、ルイとの幸せを育む時間が存在しているのだとアレクシアは理解した。
本当に……弟思いの素敵な姉だと再度実感した。
「よければアレクシア殿下もご一緒に如何ですか?」
「え」
思いがけないルイからの誘いにアレクシアは目を開いた。
すると今度は
「アレクシア殿下さえよければご一緒しませんか? 大人数で行く方が絶対に楽しいと思いますし」
「いや、しかし……」
2人の時間を邪魔する様で、アレクシアは戸惑った。
しかし、2人の善意を断るのも躊躇われる。
うーんとアレクシアは頭を悩ませた。
「アレクシア殿下。その……手伝って頂けるのでしょう?」
ステラの言葉に、アレクシアの選択は決まった。
「行くか。パンケーキが逃げる前にな」
「はい!」
アレクシアの返事にルイは瞳を輝かせ、ステラは嬉しそうに微笑んだ。
一方その頃……そんな仲睦まじい3人を見つめる人物が1人。
その人物……クラウスは眉間にシワを寄せ、3人を静かに聞き耳をたてつつ、見つめていた。
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