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六日目
第37話 「二人のこれから」
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「え? 待って……じゃあ、あなたはわたしのために、魔女と契約して……その姿になったっていうの?」
「ああ、そうだ」
話し終えたファンネーデルが、神妙な面持ちでそう答える。
ガーネットは思わず激昂した。
「嘘でしょ……どうしてそんなことをしたのよ!」
「生き返りたかったんだ。生き返って、あいつらからお前を助け出したかった」
「バカ、バカよ! あなたが生き返ってくれて嬉しいけど……結局その魔女の思う壺になったんじゃない! あんな……あんな人に……」
ガーネットは街の人たちのことを思って、強く歯噛みをした。
「ごめん……魔女の言いなりになってしまって。ボクの目だけじゃなく、君の目も……あげる約束を……」
「それはわたしが、死んだ後のことなんでしょう? 今じゃないから……まあいいわよ。それより、あなたよ。そんな姿になって本当にいいの? 死んだままよりはいいって言ってたけど、生きている時と全く同じじゃ……ないんでしょ?」
心配そうにガーネットが言うと、ファンネーデルは自分の手を強く握りしめた。
「そうだな。ボクのこの姿はあくまで幻影だ。ガーネットとまたずっと一緒にいられるなら……どんな姿になってもいいと思ったけど……でも……」
「あ、あのファンネーデル? 今……」
「ん?」
急に赤面したガーネットを、ファンネーデルは不思議そうな顔で見つめた。
「どうした?」
「えっ? だ、だから……今、わたしとずっと一緒にいたいって言ったわよね? それ、ほんと?」
「あ……ああ。ガーネットは、違うのか? ボクはしょせん猫だし……そういう気持ちに、ガーネットはならないか……? ボクは少し前からそう、思ってたけど……」
「あ、ファンネーデル……」
急にガーネットはそっぽを向く。
嫌われたかと思って不安そうにファンネーデルが顔を覗き込むと、ガーネットはファンネーデルの青い瞳を見つめ返した。
「わ、わたしも」
「え?」
「わたしも……あなたが猫とか関係ない。ずっと一緒にいてほしいと……そう思ったわ」
その言葉を聞いて、ファンネーデルは目を見開く。
「ほ、本当か?! ぼ、ボクの見た目は今、人間の姿になってるけど……どうだガーネット? 猫じゃなくて、この姿の方は好きになれそうか?」
「え? えっと……うん。前の姿も可愛かったけど……その、今も……す、素敵よ。と、とってもかっこいいわ」
「か、かっこいい……」
その言葉に、しばらく固まってしまうファンネーデル。
だが、しばらくしてふるふると首を振ると悲しげな顔をした。
「そう、言ってくれて嬉しいよ……。でも、さっきも言ったけど、今見せているのは幻影で……正体は『これ』なんだ」
ファンネーデルはポンと人間の姿を消すと、元の目玉の姿に戻った。
「え? め、目玉?」
「ああ。さすがにこれは……気持ち悪いよな?」
目玉から声が聞こえてくるのを、ガーネットはおっかなびっくり見下ろした。
「ち、ちょっとだけ、ね。驚きはしたけど……大丈夫。本当に魔女の力でそんな姿になったのね。幻影の魔法を使える猫……魔法猫、か」
うなづきながら、ガーネットはファンネーデルの目玉を見つめる。
青い瞳は納得したらしいのを見届けると、また人間の姿へと戻った。
「で? これからどうするんだ、ガーネット」
「えっ?」
気安い口調で訊かれたガーネットはぽかんと口を開ける。
「どうするって……」
「えっ、じゃないよ。このままここにいるわけにもいかないだろ。そもそもどこへ連れて行かれるかわかったもんじゃない。海の向こう、遠方へ運ばれるとしたら、このままじゃマズイ」
「そ、そうね……」
「ボクは、お前をここから助け出す。お前も、元いた村へ戻りたいんじゃなかったのか?」
「それは……」
ガーネットは少し考えたのち、答えた。
「ちょっと前までは……そう思ってたんだけど……」
「今は、違うのか?」
「ええ。このまま戻っても……きっとわたしは、ユリオン村の人たちやお父様たちにまた迷惑をかけてしまう。だから……わたし、この街の教会に頼んでみようと思うの」
「え?」
意外な答えに、ファンネーデルは目を見開いた。
「教会に頼むって……お前、まさか」
「うん。教会で保護してもらう、それが一番いいと思うの」
「一番いいって……そうすればお前は幸せになれるのか?」
「わからない。でも、もう誰か一人の元にいるのは危険だわ。わたしは、きっとどこにも、誰のものにもなっちゃいけないのよ。そのためには教会で保護してもらうしかないわ」
「ガーネット。ボクが……お前をずっと守ってやる! だからどこにいたっていいんだ、無理するな!」
ファンネーデルが、頼もしく声をかける。
「ボクが誰からも守ってやる! だから、教会じゃなく、家族のいる村に戻ったって……いいんだぞ」
「うん。ありがとう、ファンネーデル」
ガーネットはニコリと微笑んだが、ゆっくりと首を振った。
「でも、いいの。やっぱり宝石加護持ちは一つの所にいちゃダメなのよ。それは、身をもってわかったわ。もっと世の中の人々のためにこの力を使わないと……誰か一人が独り占めするからこんなことになるの。あなただって、そう。これからそれを……教会の人たちにもわかってもらいに行くわ。だからねえ、ファンネーデル? あなたも一緒に来てくれない?」
「えっ、ぼ、ボクもか? まあ、ガーネットの側にいなきゃだから……どこへでもついては行くけど……」
「ありがとう! わたしも……ふぁ、ファンネーデルとは一緒にずっといたいわ」
少し頬を染めながら笑ったガーネットに、ファンネーデルは無いはずの心臓が高鳴った気がした。気恥ずかしさを隠すように、不愛想な顔をして頷く。
「お、おう……」
「あなたがいると……わたし、とっても心強いの! 教会の人たちにうまく伝えられるか自信がないけど……あなたがいれば……」
「ああ、安心しろ! 伝えられなかったら、その時はその時だ! 一緒に逃げよう!」
そう言って、ファンネーデルはにかっと笑った。
ガーネットは嬉しすぎて涙目になる。
「うん……うんそうだね、ありがとう。わたし、ファンネーデルがいなくなって、昨夜どうしていいかわからなくなったわ……だから今はすっごく嬉しい」
「そ、そうか」
「うん……」
うつむきながら話すガーネットに、ファンネーデルは急に真剣な表情になった。
「ガーネット」
「えっ?」
呼ばれたと思った瞬間、ガーネットは幻影のままのファンネーデルに抱きしめられた。
ガーネットは驚いて目をしばたたく。
「あの……ふぁ、ファンネーデル?」
「う、ううっ、うるさい! もうなんなんだよ! ざわざわざわざわ……もう目玉だけになったっていうのに。どうしてこんなにボクの……心をお前はかき乱すんだ!」
「ええっ? か、かき乱すって……」
「もう、なんでもガーネットの思う通りにしろ! ボクはずっと……付いてくるなって言っても、お前に付いてくし、どんなやつからでも守ってやるって何度でも言うぞ。ボクは、ガーネットの英雄だ! そう言ったの、お前、覚えてるか?」
「お、覚えてるわよ! うん。うん……ファンネーデル!」
ガーネットもファンネーデルに抱きつき返そうとしたが、縄で縛られて身動きできないことに気付いた。
「あっ……。え、ええと……どうしよう。これほどける? ファンネーデル」
「ごめん、ガーネット……。ボクは直接何かに触れることはできないんだ。あそこにナイフがあるだろ? 申し訳ないけど、自分でそれ切ってみて」
「……うん。わ、わかったわ」
テーブルの上に置かれた果物ナイフを取ると、ガーネットは器用にそれを口に咥え、手と足の縄を切っていった。
「で、できたわ! えっと……ファンネーデルもう大丈夫よ!」
「ごめんな、ガーネット。さっき守るって言ったそばから、ボク……」
「いいの。わたしだって、これくらい自分でやれなきゃ! あなたに守られてるだけじゃダメよ! ……フフフッ」
「え? が、ガーネット……? うわっ!」
ガーネットは嬉しそうに駆け寄ると、ファンネーデルに抱き付いた。ファンネーデルは少し動揺したが、すぐに落ち着きを取り戻し、ガーネットを抱きしめ返す。
「ガーネット……」
「うん。ファンネーデル、本当にありがとう」
「ガーネットが……無事で良かった」
「わたしも、あなたとこうしてまた会えた……嬉しいわ」
ファンネーデルはずっとそのままでいるとまた照れそうになるので、ゆっくりと体を離した。
そして、これからのことを話す。
「えっと……そ、そろそろここを出ようか。ガーネット!」
「え? もう? いいけど……この船、けっこうたくさんの人が乗ってるわよ? 見つからないかしら。それに……どうやって」
「大丈夫、まあ見てろって」
そう言って、部屋の入り口に向かう。扉を開けると、外には奇跡的に誰もいなかった。
「よし、大丈夫そうだな。行くぞ!」
「ちょっ、危ないわよ。もし大勢の人に囲まれたらどうするの」
「平気だ。たとえ見つかっても、ボクはもう魔法猫。何人いようが敵じゃない」
「そ、そうなの?」
ガーネットはつられて廊下に出る前に、ふと部屋の中を振り返ってみた。
「ねえ……ファンネーデル」
「なんだ」
「あの人攫いたち……死んじゃったの?」
部屋の床に転がっている三人を見ながらつぶやく。
「ああ、あいつらか……。ボクはさっき、少しキツめの幻覚をやつらにかけておいたんだ。運が良ければまた息を吹き返すだろう。けど、死ぬほどの痛み、死ぬほどの恐怖を与えた……気絶時間が長引けば、死ぬかもしれないな」
「そんな……」
「あいつらはそうされるだけのことをガーネットにしてきたんだ。ボクは……許せなかった。ガーネットは、気にするな」
「でも……」
「いいから行こう、ガーネット。あいつらがどうなるかは、やつらの運次第だ」
罪悪感を抱えたらしいガーネットを無理やり引っ張って、ファンネーデルは廊下を進んで行った。
いくつかの角を曲がり、やがて船長室らしき場所にたどり着く。
中からは複数の人の声が聞こえてきていた。
「ああ、そうだ」
話し終えたファンネーデルが、神妙な面持ちでそう答える。
ガーネットは思わず激昂した。
「嘘でしょ……どうしてそんなことをしたのよ!」
「生き返りたかったんだ。生き返って、あいつらからお前を助け出したかった」
「バカ、バカよ! あなたが生き返ってくれて嬉しいけど……結局その魔女の思う壺になったんじゃない! あんな……あんな人に……」
ガーネットは街の人たちのことを思って、強く歯噛みをした。
「ごめん……魔女の言いなりになってしまって。ボクの目だけじゃなく、君の目も……あげる約束を……」
「それはわたしが、死んだ後のことなんでしょう? 今じゃないから……まあいいわよ。それより、あなたよ。そんな姿になって本当にいいの? 死んだままよりはいいって言ってたけど、生きている時と全く同じじゃ……ないんでしょ?」
心配そうにガーネットが言うと、ファンネーデルは自分の手を強く握りしめた。
「そうだな。ボクのこの姿はあくまで幻影だ。ガーネットとまたずっと一緒にいられるなら……どんな姿になってもいいと思ったけど……でも……」
「あ、あのファンネーデル? 今……」
「ん?」
急に赤面したガーネットを、ファンネーデルは不思議そうな顔で見つめた。
「どうした?」
「えっ? だ、だから……今、わたしとずっと一緒にいたいって言ったわよね? それ、ほんと?」
「あ……ああ。ガーネットは、違うのか? ボクはしょせん猫だし……そういう気持ちに、ガーネットはならないか……? ボクは少し前からそう、思ってたけど……」
「あ、ファンネーデル……」
急にガーネットはそっぽを向く。
嫌われたかと思って不安そうにファンネーデルが顔を覗き込むと、ガーネットはファンネーデルの青い瞳を見つめ返した。
「わ、わたしも」
「え?」
「わたしも……あなたが猫とか関係ない。ずっと一緒にいてほしいと……そう思ったわ」
その言葉を聞いて、ファンネーデルは目を見開く。
「ほ、本当か?! ぼ、ボクの見た目は今、人間の姿になってるけど……どうだガーネット? 猫じゃなくて、この姿の方は好きになれそうか?」
「え? えっと……うん。前の姿も可愛かったけど……その、今も……す、素敵よ。と、とってもかっこいいわ」
「か、かっこいい……」
その言葉に、しばらく固まってしまうファンネーデル。
だが、しばらくしてふるふると首を振ると悲しげな顔をした。
「そう、言ってくれて嬉しいよ……。でも、さっきも言ったけど、今見せているのは幻影で……正体は『これ』なんだ」
ファンネーデルはポンと人間の姿を消すと、元の目玉の姿に戻った。
「え? め、目玉?」
「ああ。さすがにこれは……気持ち悪いよな?」
目玉から声が聞こえてくるのを、ガーネットはおっかなびっくり見下ろした。
「ち、ちょっとだけ、ね。驚きはしたけど……大丈夫。本当に魔女の力でそんな姿になったのね。幻影の魔法を使える猫……魔法猫、か」
うなづきながら、ガーネットはファンネーデルの目玉を見つめる。
青い瞳は納得したらしいのを見届けると、また人間の姿へと戻った。
「で? これからどうするんだ、ガーネット」
「えっ?」
気安い口調で訊かれたガーネットはぽかんと口を開ける。
「どうするって……」
「えっ、じゃないよ。このままここにいるわけにもいかないだろ。そもそもどこへ連れて行かれるかわかったもんじゃない。海の向こう、遠方へ運ばれるとしたら、このままじゃマズイ」
「そ、そうね……」
「ボクは、お前をここから助け出す。お前も、元いた村へ戻りたいんじゃなかったのか?」
「それは……」
ガーネットは少し考えたのち、答えた。
「ちょっと前までは……そう思ってたんだけど……」
「今は、違うのか?」
「ええ。このまま戻っても……きっとわたしは、ユリオン村の人たちやお父様たちにまた迷惑をかけてしまう。だから……わたし、この街の教会に頼んでみようと思うの」
「え?」
意外な答えに、ファンネーデルは目を見開いた。
「教会に頼むって……お前、まさか」
「うん。教会で保護してもらう、それが一番いいと思うの」
「一番いいって……そうすればお前は幸せになれるのか?」
「わからない。でも、もう誰か一人の元にいるのは危険だわ。わたしは、きっとどこにも、誰のものにもなっちゃいけないのよ。そのためには教会で保護してもらうしかないわ」
「ガーネット。ボクが……お前をずっと守ってやる! だからどこにいたっていいんだ、無理するな!」
ファンネーデルが、頼もしく声をかける。
「ボクが誰からも守ってやる! だから、教会じゃなく、家族のいる村に戻ったって……いいんだぞ」
「うん。ありがとう、ファンネーデル」
ガーネットはニコリと微笑んだが、ゆっくりと首を振った。
「でも、いいの。やっぱり宝石加護持ちは一つの所にいちゃダメなのよ。それは、身をもってわかったわ。もっと世の中の人々のためにこの力を使わないと……誰か一人が独り占めするからこんなことになるの。あなただって、そう。これからそれを……教会の人たちにもわかってもらいに行くわ。だからねえ、ファンネーデル? あなたも一緒に来てくれない?」
「えっ、ぼ、ボクもか? まあ、ガーネットの側にいなきゃだから……どこへでもついては行くけど……」
「ありがとう! わたしも……ふぁ、ファンネーデルとは一緒にずっといたいわ」
少し頬を染めながら笑ったガーネットに、ファンネーデルは無いはずの心臓が高鳴った気がした。気恥ずかしさを隠すように、不愛想な顔をして頷く。
「お、おう……」
「あなたがいると……わたし、とっても心強いの! 教会の人たちにうまく伝えられるか自信がないけど……あなたがいれば……」
「ああ、安心しろ! 伝えられなかったら、その時はその時だ! 一緒に逃げよう!」
そう言って、ファンネーデルはにかっと笑った。
ガーネットは嬉しすぎて涙目になる。
「うん……うんそうだね、ありがとう。わたし、ファンネーデルがいなくなって、昨夜どうしていいかわからなくなったわ……だから今はすっごく嬉しい」
「そ、そうか」
「うん……」
うつむきながら話すガーネットに、ファンネーデルは急に真剣な表情になった。
「ガーネット」
「えっ?」
呼ばれたと思った瞬間、ガーネットは幻影のままのファンネーデルに抱きしめられた。
ガーネットは驚いて目をしばたたく。
「あの……ふぁ、ファンネーデル?」
「う、ううっ、うるさい! もうなんなんだよ! ざわざわざわざわ……もう目玉だけになったっていうのに。どうしてこんなにボクの……心をお前はかき乱すんだ!」
「ええっ? か、かき乱すって……」
「もう、なんでもガーネットの思う通りにしろ! ボクはずっと……付いてくるなって言っても、お前に付いてくし、どんなやつからでも守ってやるって何度でも言うぞ。ボクは、ガーネットの英雄だ! そう言ったの、お前、覚えてるか?」
「お、覚えてるわよ! うん。うん……ファンネーデル!」
ガーネットもファンネーデルに抱きつき返そうとしたが、縄で縛られて身動きできないことに気付いた。
「あっ……。え、ええと……どうしよう。これほどける? ファンネーデル」
「ごめん、ガーネット……。ボクは直接何かに触れることはできないんだ。あそこにナイフがあるだろ? 申し訳ないけど、自分でそれ切ってみて」
「……うん。わ、わかったわ」
テーブルの上に置かれた果物ナイフを取ると、ガーネットは器用にそれを口に咥え、手と足の縄を切っていった。
「で、できたわ! えっと……ファンネーデルもう大丈夫よ!」
「ごめんな、ガーネット。さっき守るって言ったそばから、ボク……」
「いいの。わたしだって、これくらい自分でやれなきゃ! あなたに守られてるだけじゃダメよ! ……フフフッ」
「え? が、ガーネット……? うわっ!」
ガーネットは嬉しそうに駆け寄ると、ファンネーデルに抱き付いた。ファンネーデルは少し動揺したが、すぐに落ち着きを取り戻し、ガーネットを抱きしめ返す。
「ガーネット……」
「うん。ファンネーデル、本当にありがとう」
「ガーネットが……無事で良かった」
「わたしも、あなたとこうしてまた会えた……嬉しいわ」
ファンネーデルはずっとそのままでいるとまた照れそうになるので、ゆっくりと体を離した。
そして、これからのことを話す。
「えっと……そ、そろそろここを出ようか。ガーネット!」
「え? もう? いいけど……この船、けっこうたくさんの人が乗ってるわよ? 見つからないかしら。それに……どうやって」
「大丈夫、まあ見てろって」
そう言って、部屋の入り口に向かう。扉を開けると、外には奇跡的に誰もいなかった。
「よし、大丈夫そうだな。行くぞ!」
「ちょっ、危ないわよ。もし大勢の人に囲まれたらどうするの」
「平気だ。たとえ見つかっても、ボクはもう魔法猫。何人いようが敵じゃない」
「そ、そうなの?」
ガーネットはつられて廊下に出る前に、ふと部屋の中を振り返ってみた。
「ねえ……ファンネーデル」
「なんだ」
「あの人攫いたち……死んじゃったの?」
部屋の床に転がっている三人を見ながらつぶやく。
「ああ、あいつらか……。ボクはさっき、少しキツめの幻覚をやつらにかけておいたんだ。運が良ければまた息を吹き返すだろう。けど、死ぬほどの痛み、死ぬほどの恐怖を与えた……気絶時間が長引けば、死ぬかもしれないな」
「そんな……」
「あいつらはそうされるだけのことをガーネットにしてきたんだ。ボクは……許せなかった。ガーネットは、気にするな」
「でも……」
「いいから行こう、ガーネット。あいつらがどうなるかは、やつらの運次第だ」
罪悪感を抱えたらしいガーネットを無理やり引っ張って、ファンネーデルは廊下を進んで行った。
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