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第十三話 昼休みの部室
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その日の東野高校。
昼休み、元秋は安藤に陸上部部室に呼び出された。
「大内とかいたから教室じゃ言わなかったけど、俺、奈々と付き合う事にしたから」
元秋は嬉しそうな顔で安藤にそう言った。
「その話なんだけど、俺最初簡単にお前に付き合えば?とか気が合うと思うとか、言った事謝るよ」
安藤は無表情のままそう言うと、元秋に向かって、頭を下げた。
「何謝ってんだよ。ハハハ、お前の言った通り、奈々とは気が合うと思うよ」
「佐野、俺、噂の真実知ってる」
「は?」
「奈々ちゃんは病院のベッドで、幼馴染と」
「やめろ!!」
元秋は安藤の話を遮りそう言うと、安藤のワイシャツの首元を掴み、睨みつけた。
「お前も知ってたのか?」
安藤が意外そうな声で言った。
「俺は知ってる。何でお前が知ってる?」
今にも殴りかかりそうな顔つきで元秋は聞いた。
「俺だけじゃないよ。大内も、佐藤も知ってる。あと、お前もこの前会った、西女の舞ちゃんも知ってる」
「お前が言いふらしてるのか?どういう事だ」
「俺と大内と佐藤と舞ちゃんが、奈々ちゃんと同じ中学の子から聞いた」
「なにやってんだ?お前!ぶっ殺すぞ!」
元秋が言った。
「お前の事を考えて色々調べてた。病院の事を考えても、あの子はちょっと普通じゃない。佐野、あの子はやっぱりやめとけ」
安藤の話を聞いた元秋は、手を安藤の首元から離し、数歩歩きロッカーの方に向かうと大きく蹴りを入れた。
ガシャーーン
昼休みの静かな部室に音だけが響いた。
「お前の事、一番信じてたのによ」
元秋が小さな声で言った。
「信じていいよ。俺はお前の為にしているだけだ。お前の事を思ってだ」
安藤の言葉に元秋は安藤の方を向いて言った。
「信じられねーよ。今俺と奈々は最高に幸せなんだ。一緒にいるだけで凄い楽しいんだ。ほっといてくれ」
「そういう訳にはいかない。お前が不幸になるのが分ってる」
安藤が言った。
「馬鹿か安藤、お前に何が分る」
「分るんだよ。俺が連絡取った、奈々ちゃんと同じ中学の子。最初に奈々ちゃんの事聞いた時、『あ、特別支援教室の子』って言ったんだよ」
「特別支援?」
元秋が聞き返す。
「彼女は、奈々ちゃんは多分、軽度発達障害だ。付き合えば絶対不幸になる。お前は苦しむ様になる。奈々ちゃんだって苦しむかも知れない」
「そんなのお前の憶測だろ?大体奈々は高校行ってるし、ちょっと頭悪いトコあるけど普通の女の子だ」
「俺の兄貴がADHD(注意欠如多動性障害)なんだ!だから分るんだ!」
安藤は元秋に向かい、大きな声で言った。
「病院での突発的な行動は普通の人にはない行動だよ。高校に行っているんだから、学習障害は国語か算数かどちらかが弱い程度なのかも知れない。多動性障害も少しはあるんじゃないのか」
「何言ってんだ?」
元秋は全く意味が分らなかった。
「俺の兄貴は仕事に就いても落ち着かず、直ぐ辞めちまう。他人と自分が何か違うそうだ。会社で人に合わせるのが凄い苦痛だそうだ。三年前、気になる事があって病院に行ったら、ADHDだと診断されて帰って来た。仕事はミスが多く、分ってても間違えちゃう。それでも大学出てるんだぜ。毎日が苦しくて辛いって言ってるよ。俺も、家族もそんな兄貴を見てて辛い、苦しい。だから、お前にそんな苦しみは味合わせたくない」
つづく
昼休み、元秋は安藤に陸上部部室に呼び出された。
「大内とかいたから教室じゃ言わなかったけど、俺、奈々と付き合う事にしたから」
元秋は嬉しそうな顔で安藤にそう言った。
「その話なんだけど、俺最初簡単にお前に付き合えば?とか気が合うと思うとか、言った事謝るよ」
安藤は無表情のままそう言うと、元秋に向かって、頭を下げた。
「何謝ってんだよ。ハハハ、お前の言った通り、奈々とは気が合うと思うよ」
「佐野、俺、噂の真実知ってる」
「は?」
「奈々ちゃんは病院のベッドで、幼馴染と」
「やめろ!!」
元秋は安藤の話を遮りそう言うと、安藤のワイシャツの首元を掴み、睨みつけた。
「お前も知ってたのか?」
安藤が意外そうな声で言った。
「俺は知ってる。何でお前が知ってる?」
今にも殴りかかりそうな顔つきで元秋は聞いた。
「俺だけじゃないよ。大内も、佐藤も知ってる。あと、お前もこの前会った、西女の舞ちゃんも知ってる」
「お前が言いふらしてるのか?どういう事だ」
「俺と大内と佐藤と舞ちゃんが、奈々ちゃんと同じ中学の子から聞いた」
「なにやってんだ?お前!ぶっ殺すぞ!」
元秋が言った。
「お前の事を考えて色々調べてた。病院の事を考えても、あの子はちょっと普通じゃない。佐野、あの子はやっぱりやめとけ」
安藤の話を聞いた元秋は、手を安藤の首元から離し、数歩歩きロッカーの方に向かうと大きく蹴りを入れた。
ガシャーーン
昼休みの静かな部室に音だけが響いた。
「お前の事、一番信じてたのによ」
元秋が小さな声で言った。
「信じていいよ。俺はお前の為にしているだけだ。お前の事を思ってだ」
安藤の言葉に元秋は安藤の方を向いて言った。
「信じられねーよ。今俺と奈々は最高に幸せなんだ。一緒にいるだけで凄い楽しいんだ。ほっといてくれ」
「そういう訳にはいかない。お前が不幸になるのが分ってる」
安藤が言った。
「馬鹿か安藤、お前に何が分る」
「分るんだよ。俺が連絡取った、奈々ちゃんと同じ中学の子。最初に奈々ちゃんの事聞いた時、『あ、特別支援教室の子』って言ったんだよ」
「特別支援?」
元秋が聞き返す。
「彼女は、奈々ちゃんは多分、軽度発達障害だ。付き合えば絶対不幸になる。お前は苦しむ様になる。奈々ちゃんだって苦しむかも知れない」
「そんなのお前の憶測だろ?大体奈々は高校行ってるし、ちょっと頭悪いトコあるけど普通の女の子だ」
「俺の兄貴がADHD(注意欠如多動性障害)なんだ!だから分るんだ!」
安藤は元秋に向かい、大きな声で言った。
「病院での突発的な行動は普通の人にはない行動だよ。高校に行っているんだから、学習障害は国語か算数かどちらかが弱い程度なのかも知れない。多動性障害も少しはあるんじゃないのか」
「何言ってんだ?」
元秋は全く意味が分らなかった。
「俺の兄貴は仕事に就いても落ち着かず、直ぐ辞めちまう。他人と自分が何か違うそうだ。会社で人に合わせるのが凄い苦痛だそうだ。三年前、気になる事があって病院に行ったら、ADHDだと診断されて帰って来た。仕事はミスが多く、分ってても間違えちゃう。それでも大学出てるんだぜ。毎日が苦しくて辛いって言ってるよ。俺も、家族もそんな兄貴を見てて辛い、苦しい。だから、お前にそんな苦しみは味合わせたくない」
つづく
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