めぐるゆき

孤独堂

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その15

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 区切りが良かったので、今回とても短いです。すいません。




 その瞬間、僕は彼女を何か得体の知れないものから守ろうという気持ちでもあったのだろう。石段をめぐるさんの元へと全力で駆け上がると、その一段下で立ち止まった。
 それでも座っているめぐるさんよりは僕の方が優に頭の位置は高い。
 だから僕は下を見て、彼女は上を見上げて、お互いの視線を合わせる。

「知っている人達?」

 めぐるさんの直ぐ後ろには見知らぬ一組のカップルが立っている訳だから、話の内容は筒抜けで聞かれてしまっているかも知れないが、それでも一応は警戒して小声で尋ねる。

「ううん、みんな今日初めてあった人だよ」

 僕の問いに笑顔でそう答えるめぐるさんの表情は、微笑んでいる筈なのに何処か諦めにも似た印象を僕へと与えた。

(何かあったのか)

 だから僕はそう思うと、視線を静かにめぐるさんの頭を越してその先の男女の一人、女性の方へと向けた。
 彼女は肩に掛かるくらいの髪で、眼鏡を掛けている。
 年齢的には僕と同じかそれより下くらいか。
 比較的童顔の、美人というよりは可愛いといったタイプ。
 僕と目が合った彼女は自然と頬を緩めた。
 それを見て、僕は続けて隣にいる男性の方に目を向けた。
 こちらも見た感じは先程の女性と同じくらいの年齢か。高校生くらいに見える。
 ただ彼の方は人と視線を合わせるのが苦手なのか、僕とは目を合わせようとはせず、斜め下の方へと視線を泳がせた。

「はじめまして」

 男性の方へと目を向けていると、女性の方が口を開いた。

「はじめまして」

 だから僕は警戒しながらもオウム返しの様に、再度彼女の方に視線を戻しながら答える。

「私は藤崎ほのか、それから隣は杉野統くん。さっきまで室町めぐるさんと話をしていたの。それからあっちにいるのが」

 藤崎ほのかと名乗る女性は、そう言うと向かって右側の狛犬の像を指差した。
 そこには溝口ゆきちゃんに良く似た少女が、どういう理由かは知らないが、赤いランドセルまで背負って狛犬の上に跨っている。

「溝口ゆきさん。知っているでしょ? 今お葬式に行って来たのだから」

「なっ!?」

 僕は一体何の悪い冗談なのかと、その瞬間めぐるさんの方へと視線を落した。
 きっと彼女は何かを全て理解したのだろう。
 とても残念そうな、寂しそうな、諦めた様な瞳で僕を見ると、小さく口を開いたのだ。

「そうなんだって…」

 と、ポツリ。


              つづく




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