彼女の音が聞こえる (改訂版)

孤独堂

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第二話 男子高校生の発想

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 その日の東野高校昼休み。
 元秋の机の周りにいつもつるんでいる三人のクラスメイトが集まっていた。佐藤・大内・安藤の三人だ。
 「西女って事は胡瓜か」
 佐藤が言った。
 「胡瓜?」
 元秋が繰り返す。
 「制服緑だろ」
 大内が言う。
 「成る程ね」
 確かにそう言われればそうだと、言いながら元秋は納得した。

 今日の朝、ランニング中に川原で会った女の子の事を元秋は昼休みに友達に話したのだ。
 「でも西女じゃウチとは合わないだろ。付き合ったら皆に馬鹿にされるぞ」
 佐藤が言った。
 「あそこ偏差値低いからな。西女も東嫌ってるだろ。やっぱりウチだと東女か、南高辺りじゃないと釣り合い取れないか。それとここ」
 大内が言った。
 「お前ら馬鹿か?偏差値とか親の見栄じゃあるまいし。何処の学校だろうと好きなら付き合えばいいんだぞ。そんな事ばっかり言ってるから彼女出来ないんじゃん。大体ここは止めとけよ。別れたら後が面倒だぞ。基本普段会わない別の高校の女の子のがお互いの為に良いんだ」
 ファンクラブもあるという噂の校内で一・ニを争うモテ男、安藤が言った。
 「いや、付き合うとかそういう事じゃなく」
 元秋が言う。
 「可愛くなかったのか?」
 すかさず安藤が尋ねた。
 「可愛いは可愛いよ。あと声が良かったな。もろ俺好み。全体に純粋な感じの子だった」
 元秋が答えた。
 「PUREとPOORは似てるからな」
 大内が言った。
 「PUREとPOOR?]
 元秋が繰り返す。
 「頭が貧しい人には純粋な人が多いって事さ」
 大内が自慢気に言った。
 「やめろよ。そんなデタラメ、自慢気に言うの。佐野は陸上馬鹿だから信用しちゃうぞ」
 安藤が大内を諭す様に言った。
 「そういうもんなの?」
 「ほらー」
 元秋の言葉に言わんこっちゃないとばかりに安藤が言った。
 「それに西女って遊び人多いイメージあるから皆ヤッてるんじゃね?」
 佐藤が言う。
 「俺も聞いた事ある」
 すかさず大内が言う。
 「佐野、こりゃ簡単にヤラして貰えんじゃね」
 佐藤が言う。
 「いや、それは」
 元秋が言いかけたのを遮り安藤が言った。
 「だからお前らモテないんだよ。東京ならいざ知らず、この辺の高校でそんなにヤッてる奴いねーよ。全く噂に振り回されて、俺はお前らの友達で悲しいよ」
 そう言うと安藤は元秋の肩に寄りかかり、泣く真似をした。
 「あ、お前ら安藤泣かせた」
 元秋が言った。
 「ハハハハ、だって俺ら彼女いないし、恋愛事情とか、女子高生事情知らないもんなー」
 大内が言った。
 「その通り」
 自慢気に佐藤も言った。
 「まったく」
 安藤が呆れた声で言った後、続けて言った。
 「ところでその子、何て名前?」
 「野沢奈々」
 元秋は答えた。

 西野女子高。同じく昼休み、人気の無い校舎の裏で野沢奈々は一人トランペットを吹こうとしていた。
 スー
  スーー
 相変わらず音が出ない。
 「やっぱり、出ないや」
 奈々が寂しそうな声で言った。


    つづく

 
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