45 / 66
前倒しで、クリスマスの話
「なんで……こんだけしか残ってねーんだよ」
しおりを挟む
冷蔵庫からケーキを取り出す。
細くなりすぎてヘニャリとお皿に倒れこんでる、元、剣山ケーキを。
「これ」
「………………」
八鬼はお皿を凝視して固まった。どうしたんだろう。
「なんで………こんだけしか残ってねーんだよ」
「皆が食べたからだけど?」
ビシッ!
「びゃ!?」
今度は頭に思いっきりチョップをされた。
痛い……! 日本史の年表の暗記が二三十個飛んだよ絶対……。
「いたいよー」
「作ったんなら真っ先に俺に食わせろよ! 何で他人に先に食わせてんだよ! しかもこんだけしか残ってねーし……」
大きな体がその場にしゃがみ込んだ。ヤンキー座りした膝の上に腕を投げ出してうな垂れる。
珍しい。八鬼が落ち込んでるぞ。
そんなにケーキ食べたかったのかな。いつもは甘い物に興味ないくせに。
「見た目が剣山みたいになっちゃったから、つい。でも、味は美味しいって評判よかったんだ。八鬼にも食べて欲しいよ」
フォークで八鬼にケーキを差し出す。
う。
ただでさえ恐い八鬼の顔が更に怖くなって無言で睨みつけてくる。
「えと……、その、初めて作ったから、ほんとに上手には出来てないけど……」
そういえば、僕はこれ、食べて無かった!
クリームとソースの味見をしただけで焼いた後は一口も食べて無い。
慌てて欠片を口に入れる。
「……!!?」
途端に、口の中にねっとりとした気持ちの悪い食感が広がった。
ラードをそのまま口に入れたみたいだ……!
ぐ、っと、口を押さえる。
「夏樹?」
必死に飲みこんで首を振る。
「……ごめん、これ、美味しくなかった」
皆が美味しいって言ってくれたの、やっぱりお世辞だったんだ。
こんなに不味かったなんて。
こんなの、食べ物の味じゃない!
あ。
フォークを持った僕の手を掌で握り八鬼がケーキを刺した。
毟り取るみたいに半分も取って――――。
ガリッ!!
フォークごと噛み切る勢いでケーキに歯を立てられてビクッとしてしまった。
「八鬼! 美味しくないって言っただろ!」
どろどろしてアブラの固まりみたいだったのに!
飛びついて、吐かせるために口をこじひらこうとするんだけど、大きな掌が僕の顔面を押さえ引き離した。
「八鬼!」
僕と八鬼の身長差はおよそ30センチ。
腕の長さも違いすぎて全然届かない!
僕の顔を押さえつけてた掌が、そのまま頭を撫でる。
「美味ぇよ」
「え?」
「ほら、もう一度、食ってみろ」
今度は八鬼が僕にケーキを差し出してくる。
おそるおそる、口にいれた。
あれ?
「美味しい……? さっきはラードみたいな味しかしなかったのに……」
「自分の手で食ったからだろうが」
あ、そっか。
僕が自分で食べたから食べ物の味じゃ無くなったんだ。
八鬼に食べさせてもらわなかったから、ラードみたいな味しかしなかったんだ。
「結局、今年は治らなかったな」
「う……」
今年の春、僕は、八鬼に食べさせてもらわないと食べ物の味がしなくなる変な病気にかかってしまった。
すぐに治るだろうって考えてたのに、クリスマスになっても全然改善しいない。
答える言葉が無かった。
ほんとなら、ちゃんと病院に行くべきだ。
精神科か心療内科かわからないけど、とにかくお医者さんに診てもらって自分で自分を治さないと駄目なんだ。
でも、僕はこの半年、ずっとそれから逃げていた。
「ごめん、八鬼……」
「謝るな。謝るならこれを謝れ」
八鬼は残りのケーキを全部一気に食べてくれた。空っぽになったケーキのお皿を指差す。
……?
何を謝ればいいんだろ?
「おいしくなくてごめん?」
「美味いっつったろうが。そうじゃねーよ。ちゃんと残しておかなかったのを謝れ」
「? 八鬼は甘い物好きじゃなかったよね? それぐらいで丁度いいんじゃないの?」
がし、と、大きな掌が僕の頭を鷲掴みにしてギリギリ締め上げた。
「いだだだだだ!?」
「そうじゃねぇ。……もういい」
「わぁ!?」
ひょいっと軽く抱え上げられベッドに放り投げられた。
スプリングのバウンドが収まる前に僕の体に乗りあげ、吸血鬼がするみたいに首元にきつく歯を立てられる。
痛い。
痛いのに、ゾクゾクする。
でも、今日は駄目だ。
「八鬼、ごちそう食べようよ、せっかくのクリスマスなのに」
クラッカーも鳴らしてない、クリスマスツリーだってあるのに。
「んぅ」
文句を言ってる最中なのに無理やりキスをされた。
「やぃ……」
口の中に舌が入って来てぬるりと絡み八鬼と呼ぶことさえ出来ない。
このキス苦手だ。ただ口の中を嘗められてるだけなのにトロトロになる。
頭も、体も気持ち良くて駄目になる。
八鬼が珍しく自分から電気を暗くしてくれた。
「せめてクリスマスっぽくしてやるよ」
不遜に笑う顔が点滅する色とりどりのツリーのライトに照らされた。
「やだ……、ツリーのライトに変な思い出が出来、」
八鬼の手が裾から入って抵抗もむなしく短パンごと下着がひっぱりおろされた。
胸の部分を鷲掴みにされ紙みたいに簡単にサンタ服が破られた。
「な、ぁ」
ただ破られただけじゃない。胸の部分を二か所。まるで、乳首だけを露出するみたいに破られてしまった……!!!
細くなりすぎてヘニャリとお皿に倒れこんでる、元、剣山ケーキを。
「これ」
「………………」
八鬼はお皿を凝視して固まった。どうしたんだろう。
「なんで………こんだけしか残ってねーんだよ」
「皆が食べたからだけど?」
ビシッ!
「びゃ!?」
今度は頭に思いっきりチョップをされた。
痛い……! 日本史の年表の暗記が二三十個飛んだよ絶対……。
「いたいよー」
「作ったんなら真っ先に俺に食わせろよ! 何で他人に先に食わせてんだよ! しかもこんだけしか残ってねーし……」
大きな体がその場にしゃがみ込んだ。ヤンキー座りした膝の上に腕を投げ出してうな垂れる。
珍しい。八鬼が落ち込んでるぞ。
そんなにケーキ食べたかったのかな。いつもは甘い物に興味ないくせに。
「見た目が剣山みたいになっちゃったから、つい。でも、味は美味しいって評判よかったんだ。八鬼にも食べて欲しいよ」
フォークで八鬼にケーキを差し出す。
う。
ただでさえ恐い八鬼の顔が更に怖くなって無言で睨みつけてくる。
「えと……、その、初めて作ったから、ほんとに上手には出来てないけど……」
そういえば、僕はこれ、食べて無かった!
クリームとソースの味見をしただけで焼いた後は一口も食べて無い。
慌てて欠片を口に入れる。
「……!!?」
途端に、口の中にねっとりとした気持ちの悪い食感が広がった。
ラードをそのまま口に入れたみたいだ……!
ぐ、っと、口を押さえる。
「夏樹?」
必死に飲みこんで首を振る。
「……ごめん、これ、美味しくなかった」
皆が美味しいって言ってくれたの、やっぱりお世辞だったんだ。
こんなに不味かったなんて。
こんなの、食べ物の味じゃない!
あ。
フォークを持った僕の手を掌で握り八鬼がケーキを刺した。
毟り取るみたいに半分も取って――――。
ガリッ!!
フォークごと噛み切る勢いでケーキに歯を立てられてビクッとしてしまった。
「八鬼! 美味しくないって言っただろ!」
どろどろしてアブラの固まりみたいだったのに!
飛びついて、吐かせるために口をこじひらこうとするんだけど、大きな掌が僕の顔面を押さえ引き離した。
「八鬼!」
僕と八鬼の身長差はおよそ30センチ。
腕の長さも違いすぎて全然届かない!
僕の顔を押さえつけてた掌が、そのまま頭を撫でる。
「美味ぇよ」
「え?」
「ほら、もう一度、食ってみろ」
今度は八鬼が僕にケーキを差し出してくる。
おそるおそる、口にいれた。
あれ?
「美味しい……? さっきはラードみたいな味しかしなかったのに……」
「自分の手で食ったからだろうが」
あ、そっか。
僕が自分で食べたから食べ物の味じゃ無くなったんだ。
八鬼に食べさせてもらわなかったから、ラードみたいな味しかしなかったんだ。
「結局、今年は治らなかったな」
「う……」
今年の春、僕は、八鬼に食べさせてもらわないと食べ物の味がしなくなる変な病気にかかってしまった。
すぐに治るだろうって考えてたのに、クリスマスになっても全然改善しいない。
答える言葉が無かった。
ほんとなら、ちゃんと病院に行くべきだ。
精神科か心療内科かわからないけど、とにかくお医者さんに診てもらって自分で自分を治さないと駄目なんだ。
でも、僕はこの半年、ずっとそれから逃げていた。
「ごめん、八鬼……」
「謝るな。謝るならこれを謝れ」
八鬼は残りのケーキを全部一気に食べてくれた。空っぽになったケーキのお皿を指差す。
……?
何を謝ればいいんだろ?
「おいしくなくてごめん?」
「美味いっつったろうが。そうじゃねーよ。ちゃんと残しておかなかったのを謝れ」
「? 八鬼は甘い物好きじゃなかったよね? それぐらいで丁度いいんじゃないの?」
がし、と、大きな掌が僕の頭を鷲掴みにしてギリギリ締め上げた。
「いだだだだだ!?」
「そうじゃねぇ。……もういい」
「わぁ!?」
ひょいっと軽く抱え上げられベッドに放り投げられた。
スプリングのバウンドが収まる前に僕の体に乗りあげ、吸血鬼がするみたいに首元にきつく歯を立てられる。
痛い。
痛いのに、ゾクゾクする。
でも、今日は駄目だ。
「八鬼、ごちそう食べようよ、せっかくのクリスマスなのに」
クラッカーも鳴らしてない、クリスマスツリーだってあるのに。
「んぅ」
文句を言ってる最中なのに無理やりキスをされた。
「やぃ……」
口の中に舌が入って来てぬるりと絡み八鬼と呼ぶことさえ出来ない。
このキス苦手だ。ただ口の中を嘗められてるだけなのにトロトロになる。
頭も、体も気持ち良くて駄目になる。
八鬼が珍しく自分から電気を暗くしてくれた。
「せめてクリスマスっぽくしてやるよ」
不遜に笑う顔が点滅する色とりどりのツリーのライトに照らされた。
「やだ……、ツリーのライトに変な思い出が出来、」
八鬼の手が裾から入って抵抗もむなしく短パンごと下着がひっぱりおろされた。
胸の部分を鷲掴みにされ紙みたいに簡単にサンタ服が破られた。
「な、ぁ」
ただ破られただけじゃない。胸の部分を二か所。まるで、乳首だけを露出するみたいに破られてしまった……!!!
46
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる