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<水無瀬葉月>
(ちょっと小話、後編)頑張れタカヤ君!!!!
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き、きききききた!!!
来ちまった!!!!!!
スケッチブックを片手に抱えて葉月が市場に向かっていく。
来ちまった、どうすんだよこれ!!
どうするもこうするもねえよ!! 葉月に告白するんだ!!!
脳内で自問自答して「葉月!!!」と呼びかけた。
葉月はこちらを見て、警戒など何一つしていない嬉しそうな笑顔でにっこりと笑って駆け寄ってきた。
お前、声も出せない癖、よく知らない知人にニコニコ近寄るのやめろ。
もしオレがおかしな人間だったらどうするんだ。
オレがもし、監禁するようなストーカー男だったらどうするんだ。声が出ないから助けを求めることもできない癖に!!
「こ、ここに座ってくれ」
花壇の隣を叩くと大人しく腰を下ろした。
『こんなところで何をしてるんですか? 日向ぼっこですか?』
スケッチブックに奇麗な字が走る。
「そ、その、お前に話が」
「?」
心臓が痛い。なぜか額に汗が浮く。
「す、す、すっ、す、」
好きだと伝えたい。伝えるためにここで待っていたのに口が空回りする。
好き、たった一言が言えない。
「?」
葉月が不思議そうな表情でオレを覗き込んでくる。
「好きなんだ……!」
言った、とうとう、言った。
ようやく、伝えることが出来た。
葉月の顔が見れなくて膝に腕を乗せてうつむく。
「――――――――」
葉月がスケッチブックに何かを書き始めた。
断られるのは知っている。葉月と遼平はお互いを大事にしていて付け入る隙などまるでない。
でも、伝えたかったんだ。
どんな返事が来るのか、無意識に拳を握って待つ。
そこに書かれていた文字は――――――
『何が?』
思いもよらぬ一言だった。
「えっ」
呆然とするオレの足元に真っ白のポメラニアンが駆け寄ってきた。
何が嬉しいのか、尻尾を振りながら葉月の足に飛びついてくる。
『かわいい!!』
『好きってこの子のことだったんだね。可愛いね! けだまだね』
「お願いします、捕まえてくださいー!!」
遠くからおっさんの声が聞こえて、はし、と、葉月が白の毛玉を抱き上げた。
「かるるるう」
軽く怒って葉月の手に歯を立てているがどうやら本気ではないらしい。
「あ、ありがとうございました、リードが外れてしまって……! 助かりました」
おっさんが何度も頭を下げる。
葉月は笑顔で首を振ってじたばたする犬をおっさんの手に渡した。
「!」
公園の時計を見上げ、葉月が慌ただしくペンを走らせる。
『タイムセールの時間だから行くね。じゃあまた!』
「あ」
オレが好きなのはお前であって犬じゃねええ!!!
訂正する前に、小さな背中は遠ざかって行った。
がっくり、と、崩れ落ちた。
そのまま膝を抱えて座り込む。
地面に手を付かなかったのが不思議なぐらいだ。
「葉月は手ごわいだろーが」
そんな状態だったのに、上から声を掛けられて飛び上がってしまった。
「うお!? り、遼平!? いつから見てやがったんだよ!」
「お前が告白する前からだよ。ったく、人の恋人にちょっかい掛けるんじゃねーよ」
「~~~~くそっ……! あんなみっともねーとこ見られてたなんて……!」
滅茶苦茶はずいじゃねえかよ畜生!!
「みっともない? どこがだよ。あんまり一生懸命だったから邪魔をすることも出来なかったよ」
「え……」
馬鹿にされるとばかり思ったのに、真剣に言われて言葉が止まった。
「何アホ面してんだ」
「ち、茶化してくると思ったのに、あんたが普通にしてっから……」
「人が勇気振り絞って告白してんのに茶化せるわけないだろうが。葉月が悩んだらどうしようかと思っちまったぜ」
「――!」
その途端、オレの中に湧き上がってきたのは、悔しさだった。
「くそ。あんたに勝てなかった理由が判る気がする」
「はぁ? とにかく、葉月のことは諦めろ。そのかわり、他に好きな子が出来たら俺の車貸してやるからさ」
「免許持ってねーよ。オレ、まだ高2だし」
「こ、高2!? おっ、ま、高校生だったのかよ!!」
「……老けてるとでも言いてーのかよ」
「いや……言われてみりゃガキだよな。なんかこう、葉月がちっちゃくてふわっとしてるから、18歳はあんなもんだという変な固定観念が……」
「じ、18!? 葉月って18だったのか!?!? 成人してんじゃねーか!」
「おう。……年下だと思ってたんだな。成人はしてねえけどな」
「ガチで15ぐらいだと思ってた……。中卒で働いてんだとばかり……。あんたのこと学校でロリコンヤクザって呼んで悪かったな」
「そんな呼び方してたのかよ! ひっでえなぁもうお兄さん悲しいぞ」
市場に向かって歩き出す。スーツ姿の遼平も市場へと歩き出した。
「免許取ったら貸してくれよな。あんたの車」
「おう。可愛い彼女を作れよ」
遼平のでかい手がオレの髪をかき回した。
「やめろ!」と、手を払いのけながらも、オレより20センチは身長の高い遼平を見上げ、兄ちゃんがいたらこんなんだったのかな、とか考えたり。
免許取ったら遼平から車借りてドライブ行こう。
助手席に乗せるのは葉月だけどな。
来ちまった!!!!!!
スケッチブックを片手に抱えて葉月が市場に向かっていく。
来ちまった、どうすんだよこれ!!
どうするもこうするもねえよ!! 葉月に告白するんだ!!!
脳内で自問自答して「葉月!!!」と呼びかけた。
葉月はこちらを見て、警戒など何一つしていない嬉しそうな笑顔でにっこりと笑って駆け寄ってきた。
お前、声も出せない癖、よく知らない知人にニコニコ近寄るのやめろ。
もしオレがおかしな人間だったらどうするんだ。
オレがもし、監禁するようなストーカー男だったらどうするんだ。声が出ないから助けを求めることもできない癖に!!
「こ、ここに座ってくれ」
花壇の隣を叩くと大人しく腰を下ろした。
『こんなところで何をしてるんですか? 日向ぼっこですか?』
スケッチブックに奇麗な字が走る。
「そ、その、お前に話が」
「?」
心臓が痛い。なぜか額に汗が浮く。
「す、す、すっ、す、」
好きだと伝えたい。伝えるためにここで待っていたのに口が空回りする。
好き、たった一言が言えない。
「?」
葉月が不思議そうな表情でオレを覗き込んでくる。
「好きなんだ……!」
言った、とうとう、言った。
ようやく、伝えることが出来た。
葉月の顔が見れなくて膝に腕を乗せてうつむく。
「――――――――」
葉月がスケッチブックに何かを書き始めた。
断られるのは知っている。葉月と遼平はお互いを大事にしていて付け入る隙などまるでない。
でも、伝えたかったんだ。
どんな返事が来るのか、無意識に拳を握って待つ。
そこに書かれていた文字は――――――
『何が?』
思いもよらぬ一言だった。
「えっ」
呆然とするオレの足元に真っ白のポメラニアンが駆け寄ってきた。
何が嬉しいのか、尻尾を振りながら葉月の足に飛びついてくる。
『かわいい!!』
『好きってこの子のことだったんだね。可愛いね! けだまだね』
「お願いします、捕まえてくださいー!!」
遠くからおっさんの声が聞こえて、はし、と、葉月が白の毛玉を抱き上げた。
「かるるるう」
軽く怒って葉月の手に歯を立てているがどうやら本気ではないらしい。
「あ、ありがとうございました、リードが外れてしまって……! 助かりました」
おっさんが何度も頭を下げる。
葉月は笑顔で首を振ってじたばたする犬をおっさんの手に渡した。
「!」
公園の時計を見上げ、葉月が慌ただしくペンを走らせる。
『タイムセールの時間だから行くね。じゃあまた!』
「あ」
オレが好きなのはお前であって犬じゃねええ!!!
訂正する前に、小さな背中は遠ざかって行った。
がっくり、と、崩れ落ちた。
そのまま膝を抱えて座り込む。
地面に手を付かなかったのが不思議なぐらいだ。
「葉月は手ごわいだろーが」
そんな状態だったのに、上から声を掛けられて飛び上がってしまった。
「うお!? り、遼平!? いつから見てやがったんだよ!」
「お前が告白する前からだよ。ったく、人の恋人にちょっかい掛けるんじゃねーよ」
「~~~~くそっ……! あんなみっともねーとこ見られてたなんて……!」
滅茶苦茶はずいじゃねえかよ畜生!!
「みっともない? どこがだよ。あんまり一生懸命だったから邪魔をすることも出来なかったよ」
「え……」
馬鹿にされるとばかり思ったのに、真剣に言われて言葉が止まった。
「何アホ面してんだ」
「ち、茶化してくると思ったのに、あんたが普通にしてっから……」
「人が勇気振り絞って告白してんのに茶化せるわけないだろうが。葉月が悩んだらどうしようかと思っちまったぜ」
「――!」
その途端、オレの中に湧き上がってきたのは、悔しさだった。
「くそ。あんたに勝てなかった理由が判る気がする」
「はぁ? とにかく、葉月のことは諦めろ。そのかわり、他に好きな子が出来たら俺の車貸してやるからさ」
「免許持ってねーよ。オレ、まだ高2だし」
「こ、高2!? おっ、ま、高校生だったのかよ!!」
「……老けてるとでも言いてーのかよ」
「いや……言われてみりゃガキだよな。なんかこう、葉月がちっちゃくてふわっとしてるから、18歳はあんなもんだという変な固定観念が……」
「じ、18!? 葉月って18だったのか!?!? 成人してんじゃねーか!」
「おう。……年下だと思ってたんだな。成人はしてねえけどな」
「ガチで15ぐらいだと思ってた……。中卒で働いてんだとばかり……。あんたのこと学校でロリコンヤクザって呼んで悪かったな」
「そんな呼び方してたのかよ! ひっでえなぁもうお兄さん悲しいぞ」
市場に向かって歩き出す。スーツ姿の遼平も市場へと歩き出した。
「免許取ったら貸してくれよな。あんたの車」
「おう。可愛い彼女を作れよ」
遼平のでかい手がオレの髪をかき回した。
「やめろ!」と、手を払いのけながらも、オレより20センチは身長の高い遼平を見上げ、兄ちゃんがいたらこんなんだったのかな、とか考えたり。
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