お弁当屋さんの僕と強面のあなた

最終章

＜ぴょん太の独白＞

【ぴょん太視点】

　ボクが、意識を持ったのは、遼平君の掌が僕の頭を撫でた時だった。

『ぴょん太は子供だな』

　子供？

　僕はぬいぐるみなのに、子供って何だよ。
　遼平君はほんとに鬱陶しい。

　葉月君を幸せにしてくれそうだから許すけど遼平君は結構嫌い。そう思ったのがボクの始まり。
　でも、ボクは葉月君と遼平君の子供だ、と、理解した。
　困った子だけど頑張り屋さんで可愛い葉月ママと、時々ウザイけどほんとウザイけど優しい優しい遼平パパ。

　７月のある日。
　葉月君のお母さんのお墓参りに行った日。

　葉月君は気が付いてくれなかったけど、僕は、ずっと車のヘッドボートに座ってて、葉月君と遼平がお墓参りするところも、車に乗ってきた葉月君が息もできなくなったところも、ずっと、ずっと見ていた。


　葉月君が苦しむところをずっと、ずっと、ずっと見ていた。違うと叫びたいのに声が届かない。


　ぬいぐるみは家族でもペットでもない。ただ、そこにいて、いつかは捨てられるだけの存在だ。

　なのにさ。
　遼平も葉月君も僕を家族にしてくれたんだ。



　そんな優しい二人の為に、魔法を一つ、使おう。