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<凜と百瀬、それぞれの幸せ>――凜の、『知らない』幸せ
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お風呂に入ってのんびりした後。また、ワインと軽いおつまみを準備する。
百瀬さんが心配だったからさっきはあまり呑まないようにしちゃったけど……。大丈夫だって判明した以上、たっぷり呑んじゃおっと!
叶さんが買ってくれた白ワインをグラスに注いだ。
グラスに口を付けると同時に一気呑みする。
「こら。無茶な呑み方をするなと言っただろうが」
「このぐらい大丈夫ですよー」
それに、すっごく酔いたい気分なんです。
理由は簡単。
たいして時間差も無く、頭が酔いでフアフワする。
一粒数百円もするチョコレートをいただく。
外側はパリってしてるのに口の中で蕩けた。
美味しい……!
また、グラスにワインをたっぷり――。
「待て、時間を置け」
う。止められてしまった。
あーでも気持ちよくなってきた……。
立ち上がってテーブルを迂回する。
そして、叶さんの横に座った。
そう。酔っ払いたかった理由は、思いっきり叶さんに甘えたかったからだ。
……。
どうやって甘えよう。どこまで甘えが許されるかな。
ウザイって思われないように気をつけないと……。
そもそもオレみたいないい歳した男に甘えられることがウザイか!?
いやだーいやだー鬱陶しがられるのはいやだー!
「お母さん、今日、学校でね」ってしか喋ってないのに「黙ってなさい」って言われるんだ。
海に連れて行ってくれるってお父さんと約束したのに、「いつ行くの?」って聞いたら「うるさい、後にしろ」って言われて、夏休みが終わるんだ。オレ、待ってたのに。水着も準備して、いつ連れて行ってくれるのか楽しみにしてたのに……!
叶さんの手がオレの頬に触れた。
反射的に手を手で押さえてぐりぐり頬擦りする。
もっと甘えたい。
キス、したい。
おそるおそる顔を上げて、叶さんの顔から眼鏡を外す。
うぅ。指が震えそうだ。
――!!
眼鏡してない叶さんもカッコいい……!
あまり見ないから別人みたいで余計に緊張してきた……。
キスに邪魔になりそうだからつい取っちゃったけど、眼鏡って医療器具だよな。取っちゃって良かったかな?
怒ってない? ウザクない?
あっ! 前に叶さんにキスされた時は眼鏡取ってなかったんだった!
どうしよう、眼鏡戻したほうがいいかな?
いいよな!?
そっと戻す。
と。
叶さんに笑われてしまった。
「何をしているんだ? 眼鏡が欲しかったのか?」
かけた眼鏡を外して俺の顔に掛けてくれた。
「ちがいます! そんな、子どもじゃあるまいし……」
殆ど度がない眼鏡を掛けたままに抗議する。
「お前に眼鏡は似合わないな。視力に注意しておけよ」
「似合いません? 叶さんみたいにかっこよくなれそうな気がしたんですけど」
キャビネットの上の鏡を覗きこむ。
うーん微妙。
「スーツを着たら似合うかも」
「無駄な抵抗はやめておけ」
「む、無駄!? 酷いです……」
後ろに立った叶さんがオレの顔から眼鏡を外す。
そのまま抱き締められキスをされた。
うわーうわーうわー!
顔が、近い、恥ずかしい、心臓が弾けそうだ。
早く離してください叶さん……!
ちゅって触るだけのキスだったのに、一番恥ずかしいかも……そ、そっか、これ、初めてなんだ。
いつも訳が判らないぐらいドロドロに溶かされるから理性が吹っ飛んでた。
「真っ赤だぞ。ひょっとして緊張してるのか?」
叶さんの手がオレの胸に添えられた。
益々早くなった心音が掌に伝わっていく。
緊張してるに決まってるじゃないですか!
お、おかしい、こんなはずじゃ。
叶さんに思う存分甘える予定だったのに緊張してしまうなんて。
意識しなくても百瀬さんには自然に甘えられた。
どうして叶さんだと緊張するんだ。
ホテルで目を覚ましたときは普通にキスできたのに。
キスが好きって思う余裕さえあったのに、どうして今になってこんな、お酒も入ってるのに。
発情してないから? エ、エッチしてすぐじゃなかったから?
それとも、あの時より今のほうが叶さんのことが好きだから――?
そうだったらどうしよう。
まだ一日しか経ってないのに昨日より今日の方が好きなんて状態に陥ってたら、嫌われた時に離れるのが辛くなる。
(離れる)
改めてその言葉の重さに軋んだ。
駄目だ。オレ自身のためにも、叶さんとはちゃんと距離を取ろう。
叶さんの胸を押し返して一歩下がる。
「うっ」
逆に引き寄せられて胸にぶつかってしまった。
「いきなり真顔になったな。どうしたんだ? 今度は『甘えたがりで鬱陶しい』問題か?」
「――! なんで判ったんですか!?」
「お前は顔に出やすいからな。何度も言ったが、俺はお前を鬱陶しいと思ったことなんかないぞ。お前が十人居ても平気なぐらいだ」
オレが……十人。
『叶さーん』『叶さーん』『叶さーん』『叶さーん』
うじゃうじゃと叶さんを取り囲んでやまびこみたいに名前を呼ぶ大量のオレを想像してしまった。
やばい。超ウザイ。これ以上ウザイことがあるだろうか。いや、無い。
「そんなのオレがウザイです……」
想像だけでげんなりしてしまった。
「そうか? 可愛いと思うがな。お前は一人でも目が離せないから心労はかさむが、それ以上に癒されそうだ」
「癒される!?」
「十人居ても一人残らず俺の物にするよ」
「えぇ……?」
あまりのウザさに、優しい叶さんでも三日で激怒しちゃいそう……。
オレが十人よりも叶さんが十人が世の為人の為だな。
「叶さんが十人居たら日替わりで甘えられて安心かもしれません」
「俺が十人? お前を取り合ってころしあ」
?
小ロシア?
ロシアがどうかしたのかな?
「喧嘩になるから、俺が十人は無理だな」
「え!? 喧嘩!? 叶さんが叶さんと喧嘩なんて想像つかないです。凄く優しいから話し合いで解決しそうなのに」
叶さんがソファに座る。その膝の上に座らされてしまった。抱き締められてオレの背中と叶さんの体が密着する。
重たく無いか心配だ。
「お前が絡むと駄目だよ。とにかく、もっと甘えてこい。でないと俺から甘えるぞ」
叶さんが甘える――?
拘束するみたいい強く引き寄せられた。
男らしくて強そうだって思った長い指がオレの唇をなぞる。
「!」
く、口に、指が!
指が唇を割って口の中に入って来た。
舌先をつん、って突いてから舌の上を辿って行く。
入って来たのは人差し指と中指の二本。根元まで入ってきて、えぐ、って喉が鳴った。
「ふぁのーふぁん……」
体がずり下がる。オレを後ろから抱き締めたままの叶さんが、上から見下ろして、楽しそうに口の中に入れた指を縦にV字に開いた。
強制的に口を大きく開かされてしまう。
口の中を好き勝手に掻き回される。たたが指なのに苦しい。
涎でべとべとになった指が抜けていく。やっと終わる。ほっとしたのも束の間で、親指が舌の裏を優しく擽った。
「~~~~~!」
「オレの甘えの方がウザイだろう?」
擽りながら耳を噛まれた。ウザくは無いです。死にそうなぐらい恥ずかしい。舌の裏触るのやめて。変になりそうです。耳も嫌です。
やっと指が抜けていく。
唇と指の間に何本も糸が引いた。
呼吸が楽になって、は、は、って犬みたいに息を吐く。
百瀬さんが心配だったからさっきはあまり呑まないようにしちゃったけど……。大丈夫だって判明した以上、たっぷり呑んじゃおっと!
叶さんが買ってくれた白ワインをグラスに注いだ。
グラスに口を付けると同時に一気呑みする。
「こら。無茶な呑み方をするなと言っただろうが」
「このぐらい大丈夫ですよー」
それに、すっごく酔いたい気分なんです。
理由は簡単。
たいして時間差も無く、頭が酔いでフアフワする。
一粒数百円もするチョコレートをいただく。
外側はパリってしてるのに口の中で蕩けた。
美味しい……!
また、グラスにワインをたっぷり――。
「待て、時間を置け」
う。止められてしまった。
あーでも気持ちよくなってきた……。
立ち上がってテーブルを迂回する。
そして、叶さんの横に座った。
そう。酔っ払いたかった理由は、思いっきり叶さんに甘えたかったからだ。
……。
どうやって甘えよう。どこまで甘えが許されるかな。
ウザイって思われないように気をつけないと……。
そもそもオレみたいないい歳した男に甘えられることがウザイか!?
いやだーいやだー鬱陶しがられるのはいやだー!
「お母さん、今日、学校でね」ってしか喋ってないのに「黙ってなさい」って言われるんだ。
海に連れて行ってくれるってお父さんと約束したのに、「いつ行くの?」って聞いたら「うるさい、後にしろ」って言われて、夏休みが終わるんだ。オレ、待ってたのに。水着も準備して、いつ連れて行ってくれるのか楽しみにしてたのに……!
叶さんの手がオレの頬に触れた。
反射的に手を手で押さえてぐりぐり頬擦りする。
もっと甘えたい。
キス、したい。
おそるおそる顔を上げて、叶さんの顔から眼鏡を外す。
うぅ。指が震えそうだ。
――!!
眼鏡してない叶さんもカッコいい……!
あまり見ないから別人みたいで余計に緊張してきた……。
キスに邪魔になりそうだからつい取っちゃったけど、眼鏡って医療器具だよな。取っちゃって良かったかな?
怒ってない? ウザクない?
あっ! 前に叶さんにキスされた時は眼鏡取ってなかったんだった!
どうしよう、眼鏡戻したほうがいいかな?
いいよな!?
そっと戻す。
と。
叶さんに笑われてしまった。
「何をしているんだ? 眼鏡が欲しかったのか?」
かけた眼鏡を外して俺の顔に掛けてくれた。
「ちがいます! そんな、子どもじゃあるまいし……」
殆ど度がない眼鏡を掛けたままに抗議する。
「お前に眼鏡は似合わないな。視力に注意しておけよ」
「似合いません? 叶さんみたいにかっこよくなれそうな気がしたんですけど」
キャビネットの上の鏡を覗きこむ。
うーん微妙。
「スーツを着たら似合うかも」
「無駄な抵抗はやめておけ」
「む、無駄!? 酷いです……」
後ろに立った叶さんがオレの顔から眼鏡を外す。
そのまま抱き締められキスをされた。
うわーうわーうわー!
顔が、近い、恥ずかしい、心臓が弾けそうだ。
早く離してください叶さん……!
ちゅって触るだけのキスだったのに、一番恥ずかしいかも……そ、そっか、これ、初めてなんだ。
いつも訳が判らないぐらいドロドロに溶かされるから理性が吹っ飛んでた。
「真っ赤だぞ。ひょっとして緊張してるのか?」
叶さんの手がオレの胸に添えられた。
益々早くなった心音が掌に伝わっていく。
緊張してるに決まってるじゃないですか!
お、おかしい、こんなはずじゃ。
叶さんに思う存分甘える予定だったのに緊張してしまうなんて。
意識しなくても百瀬さんには自然に甘えられた。
どうして叶さんだと緊張するんだ。
ホテルで目を覚ましたときは普通にキスできたのに。
キスが好きって思う余裕さえあったのに、どうして今になってこんな、お酒も入ってるのに。
発情してないから? エ、エッチしてすぐじゃなかったから?
それとも、あの時より今のほうが叶さんのことが好きだから――?
そうだったらどうしよう。
まだ一日しか経ってないのに昨日より今日の方が好きなんて状態に陥ってたら、嫌われた時に離れるのが辛くなる。
(離れる)
改めてその言葉の重さに軋んだ。
駄目だ。オレ自身のためにも、叶さんとはちゃんと距離を取ろう。
叶さんの胸を押し返して一歩下がる。
「うっ」
逆に引き寄せられて胸にぶつかってしまった。
「いきなり真顔になったな。どうしたんだ? 今度は『甘えたがりで鬱陶しい』問題か?」
「――! なんで判ったんですか!?」
「お前は顔に出やすいからな。何度も言ったが、俺はお前を鬱陶しいと思ったことなんかないぞ。お前が十人居ても平気なぐらいだ」
オレが……十人。
『叶さーん』『叶さーん』『叶さーん』『叶さーん』
うじゃうじゃと叶さんを取り囲んでやまびこみたいに名前を呼ぶ大量のオレを想像してしまった。
やばい。超ウザイ。これ以上ウザイことがあるだろうか。いや、無い。
「そんなのオレがウザイです……」
想像だけでげんなりしてしまった。
「そうか? 可愛いと思うがな。お前は一人でも目が離せないから心労はかさむが、それ以上に癒されそうだ」
「癒される!?」
「十人居ても一人残らず俺の物にするよ」
「えぇ……?」
あまりのウザさに、優しい叶さんでも三日で激怒しちゃいそう……。
オレが十人よりも叶さんが十人が世の為人の為だな。
「叶さんが十人居たら日替わりで甘えられて安心かもしれません」
「俺が十人? お前を取り合ってころしあ」
?
小ロシア?
ロシアがどうかしたのかな?
「喧嘩になるから、俺が十人は無理だな」
「え!? 喧嘩!? 叶さんが叶さんと喧嘩なんて想像つかないです。凄く優しいから話し合いで解決しそうなのに」
叶さんがソファに座る。その膝の上に座らされてしまった。抱き締められてオレの背中と叶さんの体が密着する。
重たく無いか心配だ。
「お前が絡むと駄目だよ。とにかく、もっと甘えてこい。でないと俺から甘えるぞ」
叶さんが甘える――?
拘束するみたいい強く引き寄せられた。
男らしくて強そうだって思った長い指がオレの唇をなぞる。
「!」
く、口に、指が!
指が唇を割って口の中に入って来た。
舌先をつん、って突いてから舌の上を辿って行く。
入って来たのは人差し指と中指の二本。根元まで入ってきて、えぐ、って喉が鳴った。
「ふぁのーふぁん……」
体がずり下がる。オレを後ろから抱き締めたままの叶さんが、上から見下ろして、楽しそうに口の中に入れた指を縦にV字に開いた。
強制的に口を大きく開かされてしまう。
口の中を好き勝手に掻き回される。たたが指なのに苦しい。
涎でべとべとになった指が抜けていく。やっと終わる。ほっとしたのも束の間で、親指が舌の裏を優しく擽った。
「~~~~~!」
「オレの甘えの方がウザイだろう?」
擽りながら耳を噛まれた。ウザくは無いです。死にそうなぐらい恥ずかしい。舌の裏触るのやめて。変になりそうです。耳も嫌です。
やっと指が抜けていく。
唇と指の間に何本も糸が引いた。
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