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<逃亡者ゴッコ>
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連絡を終え一息ついた頃――タクシーは、郊外の大型ショッピングセンターへとたどり着いた。
ここに来たのは服を買うためだ。オレのスーツはともかく百瀬さんの白衣は目立ってしまう。
「まずは服を買いましょう。この格好じゃ疲れますし」
百瀬さんの手を引いて馴染みのブランド店に入る。
安いのにいい感じの服が多い気に入りのお店なのだ。
「巻き込んでごめんね……。でも、なんだか楽しそうだね……?」
「楽しいんです! オレ、この店で買っちゃいますけど百瀬さんはどうします?」
「服にこだわりは無いから、どこでも」
えー。こだわりないんだ……。
カッコいい人は服を選ばないってことなのかな。
オレなんか十代の頃から吟味に吟味を重ねてわびしいサイフと相談して、この店に落ち着いたってのに。
百瀬さんのお陰だろうか。やけに親身になってくれた女性スタッフにお願いして、購入した服を試着室で着替えさせてもらった。
革靴もスニーカーに履き替え革靴をスニーカーが入ってた靴箱に詰めなおす。
着ていたスーツと靴、鞄を配送したいと相談すると段ボールまで用意してくれた。
サイフと携帯、そしてヒヨコ饅頭以外は全部段ボールに詰めてサービスカウンターへ行く。宅配してもらうために。
百瀬さんも身寄りの無い人だったので、送り先はオレの大学時代の友人宅にした。
服のクリーニングまでお願いしたら友人からは受け取る変わりにとビールを二本請求されてしまったがそれで済むなら安いものだ。
「ごめんね凜君。任せきりにして」
「構いません。安心したらお腹減ってきましたね。フードコート行きましょうか。先の計画も立てないと」
オレも、百瀬さんも、動きやすさを優先してシンプルなパーカーとデニムを買った。
逃亡生活なら顔を隠せる服じゃないとってふざけて言ったら、百瀬さんが感心して乗ってきたのだ。
当然ながらお揃いの服じゃないんだけど似たような格好なのがなんか楽しい。
小学校の頃のゴッコ遊びを思い出すからかな? オレと百瀬さんの逃亡者ゴッコだ。
「うん。……こういった施設にくるのも久しぶりだよ。赤い糸プロジェクトのお陰で研究所でも缶詰生活が続いてたから」
嬉しそうに百瀬さんが歩き出す。
デスクワークばかりの研究者だというのに姿勢がいい。
歩くだけでも女性からも男性からも注目されていた。
なんだか、有名人と歩いてる気分でちょっと得意げになってしまう。
フードコートでは百瀬さんがちゃんぽんでオレがソースカツ丼を買った。
二人席にカツ丼を置いてからもう一度立って、タコヤキを購入する。
「タコヤキ買ってきました。これ、半分こしましょう。お茶もどうぞ」
「代金いくらだった? 払うよ。お茶の代金も」
「いりませんよ。さっきタクシー代全部出してくれたじゃないですか。お返しにしては安すぎるぐらいで申し訳ないですけど」
「逃げ出したのは僕なんだから払うのは当然だよ」
「当然じゃありません。どうぞ」
「…………ありがとう……」
このチェーン店のタコヤキ――しかも揚げタコはオレのお気に入りなんだ。
百瀬さんにも食べて欲しい。
「いただきます!」
挨拶して食べ始める。
わ、カツ丼、物凄く美味しい! 昨日から何も食べてなかったから久しぶりの栄養に体が喜んでる感じがするよ。
「このタコヤキ美味しい……」
「でしょ! オレ、ここの揚げタコが一番好きなんです」
好きな物を美味しいって言ってもらえるのって嬉しい。
オレも一つ取って齧る。外側はサクサク中はとろとろでいつも通りに超美味い!
「これから、どこに行きましょうか?」
次長から貰ったヒヨコ饅頭は二つ入ってた。
デザートにオレと百瀬さんで一つづつ分ける。
オレも百瀬さんも荷物は無い。
持ち物はサイフと携帯と、ほんのちょっとの小物だけ。
旅行に行くなんて格好じゃないけど、どこに行くのも自由でわくわくした。
「…………遠くに行きたいな。どこか。遠く」
百瀬さんの瞳が、どこか遠く――それこそ、この世には無いような場所を見ている気がして、テーブルの上に乗っていた腕をぎゅって握った。
多分、この目は、十五歳の頃、陸橋の上にいたオレと同じ目だ。
オレは甘ったれた根性無しだから、死ぬ勇気なんてなかった。
あの日、叶さんと会えなくたって、時間が経てば寒さに耐えられず家に帰っていた。
でも百瀬さんはどうだろう。
今すぐにでも消えてしまいそうな、刹那的な危うさを感じて腕を握る手に力を込めてしまった。
「凜君?」
「じゃあ、九州に行っちゃいましょうか! 長崎行って、本場のちゃんぽん食べましょうよ」
「――――うん! いいね。一回も行ったことないんだ」
笑って、薬に翻弄される被害者同士で歩き出す。
早く効き目が切れるといいな。
願うように思った。
目的地が決まれば後は移動手段を決めるだけだ。
新幹線と空港は会社の人に押さえられてそうで怖かったから、夜行バスを使うことにした。
オレごときの平社員とは違って百瀬さんは会社の極秘事項まで知ってる人だから。
長崎までの直通はないので、とりあえず博多まで。
運がいいことに当日予約が出来た。
開いてる席はゆったりくつろげるプレミアムが一席、それと、知らない人と隣り合わせになる普通のバスの座席みたいな二つ並んだエコノミーシートが二席。
料金は払うと百瀬さんが譲らなかったので、当然ながらオレはエコノミーを選択したのだけど、百瀬さんも「この席がいい」って言って来た。
「エコノミーは普通のバスの座席みたいな席ですから体が痛くなりますよ。せっかくプレミアム開いてるのに」
「凜君と一緒に座りたいんだ」
……。
言いたい事はわかります。
オレの傍にいれば匂いで安心できるから傍に居たいって事ですよね。
でもその言い方だと、妙な誤解を産みそうな気がします。
今も、後ろにいるオレと同世代の女性二人が「ファ!」ってなりましたよ?
ま、いっか。
バスが動き出していくばくもせずに、瞼が下がった。
そういえば、オレ、昨日全然眠って無いんだった。
百瀬さんの香りが優しくて、すぐに深い眠りに入ってしまい、あっという間に博多に到着した。十五時間近くの旅だったのが嘘みたいだ。
「うぎゃー。体ばきばきっすねー」
「んー。疲れたけど……凜君のお陰で、久しぶりに熟睡できたよ。ありがとう」
「オレもです。免疫情報が違う香りって、安眠効果もあるんですね」
博多と言えばとにかくラーメン! ってことでまずはラーメン屋に入る。食べるのは当然トンコツ……って言いたいけど、高菜と死ぬほど迷いました。迷った末トンコツにしました。
感想はというと、濃厚で美味しかった! 屋台の親父さんが作ってくれるダシのきいたトンコツも好きだけどこれも凄く美味しいよ。値段以上にお腹に溜まるお得感がある。夜は高菜ラーメン食べようっと。
腹ごなしの後に、着替えの服やボストンバッグ、その他あると便利な圧縮パックなんかをそれぞれ購入してホテルを探す。
さてスマホで……と探したオレを他所に、
百瀬さんは料金もプランも確認せずに、通りすがりのホテルのツインの部屋にチェックインしてしまった……!
空き部屋があったからって理由だけで!
この人って噂通り高給取りなんだ……。
オレ一人だったらこんな真似は絶対に出来ないよ。近くのホテルを検索して料金とサービスを比較してからようやくチェックインって段取りを踏む。時間も一時間ぐらいかかる。こんな即断即決なんて……。
わたわたしながらも百瀬さんの後をついて部屋に行く。
ホテルにチェックインしたのは荷物を置くためで、また街に繰り出す気満々だったけど、百瀬さんに止められてしまった。
「今日はゆっくりしようよ。時間はまだまだあるんだから」
「えー。屋台行きましょうよー屋台―」
「明日」
「うー」
ちょっと残念だ……。
まいっか。屋台は明日の楽しみにとっておこっと。
は、あれは!
「百瀬さん! ウェルカムシャンパンありますよ飲みましょー!」
テーブルの上にウェルカムシャンパンが用意されてた!
氷がたっぷり入ったシャンパンクーラー。
中に埋まってる深い緑の瓶にはうっすらと水滴が浮いてて、キンキンに冷えてるのがわかる。
超美味しそう……!
「風呂に入ってからにしようよ。先に呑んだら酔いが回っちゃうから」
「はい!」
お湯を貯めなきゃ。お風呂のドアを開く。と。
予想以上に広いパウダールーム、ドアの向こうに洗面台、そしてようやく広いお風呂が登場した。
うわ……。一泊いくらだったんだろ……。値段を聞くのが怖い。お、オレ、お金足りるかな? ATMあればいいけど。
それにしても広いお風呂だな。
「これだけ広かったら二人で入れますね。一緒に入りましょう」
一刻も早くシャンパンが飲みたい。
「え!? 一緒に!?」
「あ、嫌でしたか? じゃあお先にどうぞ」
「違うよ嫌じゃないよ! 一緒に入るって発想がなかったから驚いただけで……! 一緒に入ろう」
嫌じゃなかったのか。よかった。
二人で一緒に服を脱ぐ。
オレの脇腹には掻き毟った傷がいくつもある。
百瀬さんの腕には手錠でできたような擦過傷がいくつも。
オレの傷を見ても百瀬さんは何も聞かなかった。
それが、嬉しい。この人相手だと何一つ自分を取り繕う必要がなくて楽だ。
ここに来たのは服を買うためだ。オレのスーツはともかく百瀬さんの白衣は目立ってしまう。
「まずは服を買いましょう。この格好じゃ疲れますし」
百瀬さんの手を引いて馴染みのブランド店に入る。
安いのにいい感じの服が多い気に入りのお店なのだ。
「巻き込んでごめんね……。でも、なんだか楽しそうだね……?」
「楽しいんです! オレ、この店で買っちゃいますけど百瀬さんはどうします?」
「服にこだわりは無いから、どこでも」
えー。こだわりないんだ……。
カッコいい人は服を選ばないってことなのかな。
オレなんか十代の頃から吟味に吟味を重ねてわびしいサイフと相談して、この店に落ち着いたってのに。
百瀬さんのお陰だろうか。やけに親身になってくれた女性スタッフにお願いして、購入した服を試着室で着替えさせてもらった。
革靴もスニーカーに履き替え革靴をスニーカーが入ってた靴箱に詰めなおす。
着ていたスーツと靴、鞄を配送したいと相談すると段ボールまで用意してくれた。
サイフと携帯、そしてヒヨコ饅頭以外は全部段ボールに詰めてサービスカウンターへ行く。宅配してもらうために。
百瀬さんも身寄りの無い人だったので、送り先はオレの大学時代の友人宅にした。
服のクリーニングまでお願いしたら友人からは受け取る変わりにとビールを二本請求されてしまったがそれで済むなら安いものだ。
「ごめんね凜君。任せきりにして」
「構いません。安心したらお腹減ってきましたね。フードコート行きましょうか。先の計画も立てないと」
オレも、百瀬さんも、動きやすさを優先してシンプルなパーカーとデニムを買った。
逃亡生活なら顔を隠せる服じゃないとってふざけて言ったら、百瀬さんが感心して乗ってきたのだ。
当然ながらお揃いの服じゃないんだけど似たような格好なのがなんか楽しい。
小学校の頃のゴッコ遊びを思い出すからかな? オレと百瀬さんの逃亡者ゴッコだ。
「うん。……こういった施設にくるのも久しぶりだよ。赤い糸プロジェクトのお陰で研究所でも缶詰生活が続いてたから」
嬉しそうに百瀬さんが歩き出す。
デスクワークばかりの研究者だというのに姿勢がいい。
歩くだけでも女性からも男性からも注目されていた。
なんだか、有名人と歩いてる気分でちょっと得意げになってしまう。
フードコートでは百瀬さんがちゃんぽんでオレがソースカツ丼を買った。
二人席にカツ丼を置いてからもう一度立って、タコヤキを購入する。
「タコヤキ買ってきました。これ、半分こしましょう。お茶もどうぞ」
「代金いくらだった? 払うよ。お茶の代金も」
「いりませんよ。さっきタクシー代全部出してくれたじゃないですか。お返しにしては安すぎるぐらいで申し訳ないですけど」
「逃げ出したのは僕なんだから払うのは当然だよ」
「当然じゃありません。どうぞ」
「…………ありがとう……」
このチェーン店のタコヤキ――しかも揚げタコはオレのお気に入りなんだ。
百瀬さんにも食べて欲しい。
「いただきます!」
挨拶して食べ始める。
わ、カツ丼、物凄く美味しい! 昨日から何も食べてなかったから久しぶりの栄養に体が喜んでる感じがするよ。
「このタコヤキ美味しい……」
「でしょ! オレ、ここの揚げタコが一番好きなんです」
好きな物を美味しいって言ってもらえるのって嬉しい。
オレも一つ取って齧る。外側はサクサク中はとろとろでいつも通りに超美味い!
「これから、どこに行きましょうか?」
次長から貰ったヒヨコ饅頭は二つ入ってた。
デザートにオレと百瀬さんで一つづつ分ける。
オレも百瀬さんも荷物は無い。
持ち物はサイフと携帯と、ほんのちょっとの小物だけ。
旅行に行くなんて格好じゃないけど、どこに行くのも自由でわくわくした。
「…………遠くに行きたいな。どこか。遠く」
百瀬さんの瞳が、どこか遠く――それこそ、この世には無いような場所を見ている気がして、テーブルの上に乗っていた腕をぎゅって握った。
多分、この目は、十五歳の頃、陸橋の上にいたオレと同じ目だ。
オレは甘ったれた根性無しだから、死ぬ勇気なんてなかった。
あの日、叶さんと会えなくたって、時間が経てば寒さに耐えられず家に帰っていた。
でも百瀬さんはどうだろう。
今すぐにでも消えてしまいそうな、刹那的な危うさを感じて腕を握る手に力を込めてしまった。
「凜君?」
「じゃあ、九州に行っちゃいましょうか! 長崎行って、本場のちゃんぽん食べましょうよ」
「――――うん! いいね。一回も行ったことないんだ」
笑って、薬に翻弄される被害者同士で歩き出す。
早く効き目が切れるといいな。
願うように思った。
目的地が決まれば後は移動手段を決めるだけだ。
新幹線と空港は会社の人に押さえられてそうで怖かったから、夜行バスを使うことにした。
オレごときの平社員とは違って百瀬さんは会社の極秘事項まで知ってる人だから。
長崎までの直通はないので、とりあえず博多まで。
運がいいことに当日予約が出来た。
開いてる席はゆったりくつろげるプレミアムが一席、それと、知らない人と隣り合わせになる普通のバスの座席みたいな二つ並んだエコノミーシートが二席。
料金は払うと百瀬さんが譲らなかったので、当然ながらオレはエコノミーを選択したのだけど、百瀬さんも「この席がいい」って言って来た。
「エコノミーは普通のバスの座席みたいな席ですから体が痛くなりますよ。せっかくプレミアム開いてるのに」
「凜君と一緒に座りたいんだ」
……。
言いたい事はわかります。
オレの傍にいれば匂いで安心できるから傍に居たいって事ですよね。
でもその言い方だと、妙な誤解を産みそうな気がします。
今も、後ろにいるオレと同世代の女性二人が「ファ!」ってなりましたよ?
ま、いっか。
バスが動き出していくばくもせずに、瞼が下がった。
そういえば、オレ、昨日全然眠って無いんだった。
百瀬さんの香りが優しくて、すぐに深い眠りに入ってしまい、あっという間に博多に到着した。十五時間近くの旅だったのが嘘みたいだ。
「うぎゃー。体ばきばきっすねー」
「んー。疲れたけど……凜君のお陰で、久しぶりに熟睡できたよ。ありがとう」
「オレもです。免疫情報が違う香りって、安眠効果もあるんですね」
博多と言えばとにかくラーメン! ってことでまずはラーメン屋に入る。食べるのは当然トンコツ……って言いたいけど、高菜と死ぬほど迷いました。迷った末トンコツにしました。
感想はというと、濃厚で美味しかった! 屋台の親父さんが作ってくれるダシのきいたトンコツも好きだけどこれも凄く美味しいよ。値段以上にお腹に溜まるお得感がある。夜は高菜ラーメン食べようっと。
腹ごなしの後に、着替えの服やボストンバッグ、その他あると便利な圧縮パックなんかをそれぞれ購入してホテルを探す。
さてスマホで……と探したオレを他所に、
百瀬さんは料金もプランも確認せずに、通りすがりのホテルのツインの部屋にチェックインしてしまった……!
空き部屋があったからって理由だけで!
この人って噂通り高給取りなんだ……。
オレ一人だったらこんな真似は絶対に出来ないよ。近くのホテルを検索して料金とサービスを比較してからようやくチェックインって段取りを踏む。時間も一時間ぐらいかかる。こんな即断即決なんて……。
わたわたしながらも百瀬さんの後をついて部屋に行く。
ホテルにチェックインしたのは荷物を置くためで、また街に繰り出す気満々だったけど、百瀬さんに止められてしまった。
「今日はゆっくりしようよ。時間はまだまだあるんだから」
「えー。屋台行きましょうよー屋台―」
「明日」
「うー」
ちょっと残念だ……。
まいっか。屋台は明日の楽しみにとっておこっと。
は、あれは!
「百瀬さん! ウェルカムシャンパンありますよ飲みましょー!」
テーブルの上にウェルカムシャンパンが用意されてた!
氷がたっぷり入ったシャンパンクーラー。
中に埋まってる深い緑の瓶にはうっすらと水滴が浮いてて、キンキンに冷えてるのがわかる。
超美味しそう……!
「風呂に入ってからにしようよ。先に呑んだら酔いが回っちゃうから」
「はい!」
お湯を貯めなきゃ。お風呂のドアを開く。と。
予想以上に広いパウダールーム、ドアの向こうに洗面台、そしてようやく広いお風呂が登場した。
うわ……。一泊いくらだったんだろ……。値段を聞くのが怖い。お、オレ、お金足りるかな? ATMあればいいけど。
それにしても広いお風呂だな。
「これだけ広かったら二人で入れますね。一緒に入りましょう」
一刻も早くシャンパンが飲みたい。
「え!? 一緒に!?」
「あ、嫌でしたか? じゃあお先にどうぞ」
「違うよ嫌じゃないよ! 一緒に入るって発想がなかったから驚いただけで……! 一緒に入ろう」
嫌じゃなかったのか。よかった。
二人で一緒に服を脱ぐ。
オレの脇腹には掻き毟った傷がいくつもある。
百瀬さんの腕には手錠でできたような擦過傷がいくつも。
オレの傷を見ても百瀬さんは何も聞かなかった。
それが、嬉しい。この人相手だと何一つ自分を取り繕う必要がなくて楽だ。
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