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<総務部での朝>
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「あぁ。ありがとう。早速だが、第四資料室の鍵を貸してくれ」
「判りました。お待ちください」
首に掛けていたセキュリティカードを使い、鍵の入った金庫を開く。
「どうぞ。資料室の鍵です。――良かったら仕事終わってから呑みに行きませんか? 久しぶりに!」
「俺の仕事は八時までかかるぞ。それでもいいのか?」
「はい!」
やった! 断られなかったー!
叶さんは銀フレームの奥の切れ長の目尻を細めた。
うーん。
毎回顔を合わせるたびに思っちゃうんだけど、ほんっとイケメンだなこの人……。
こんな会社で全部署から嫌われる監査なんかやらなくても、モデルででも食べていけただろうに。
オレより七歳年上の三十歳。
初めて会ったのは、オレが高校一年生で叶さんが二十二歳の頃だ。
その当時もすげー大人でカッコいい人だって思ってたけど、今の方が断然かっこいい。
まさに、今が旬って感じの大人の男だ。
でも、四十になっても五十になっても、今が旬!って感じの渋い男のままなんだろうなぁ。
この会社に結婚したい男ランキングなんてのがあったら、絶対トップはこの人だよ。
この人には、優しいお嫁さんがいるけど。
叶さんは軽く手を上げて挨拶してオフィスを出て行く。
ブンブン手を振ってたオレに、ゴロー先輩が呆れたように言った。
「よく監査部の人と仲良くなれるなぁお前……俺なんか顔見るだけでうんざりしちまうよ」
「叶さんとは昔馴染みなんです! オレが高校の頃から仲良くしてもらってて……」
「高校から?」
「叶さんって今年三十じゃなかった? 七歳も差があるのにどうやって仲良くなったのよ」
真美先輩が不思議そうに尋ねてくる。
う。
その話は……。
できれば、したくない。
真美さんだから話したくないってわけじゃなくて、できれば誰にも話したくない。知られたくない。
なんとか、ごまかさなきゃ。――そうだ!
「実はオレ……高校時代はワルかったんですよ……。叶さんはオレを更生させてくれた恩人なんです」
顎の下に手をやって、ハードボイルドっぽくにやりと笑いながら言う。
「何変な見栄を張ってるのよー」
「それを言うならワルかった、じゃなくてワルだった、だろ。お前みたいなワンコが悪さなんかできるわけねーだろ」
「自分からワル自慢する奴は大したこと無いってのが常識だぞ」
オレの言葉を周りの先輩達が一気に笑い飛ばす。
「判りました。お待ちください」
首に掛けていたセキュリティカードを使い、鍵の入った金庫を開く。
「どうぞ。資料室の鍵です。――良かったら仕事終わってから呑みに行きませんか? 久しぶりに!」
「俺の仕事は八時までかかるぞ。それでもいいのか?」
「はい!」
やった! 断られなかったー!
叶さんは銀フレームの奥の切れ長の目尻を細めた。
うーん。
毎回顔を合わせるたびに思っちゃうんだけど、ほんっとイケメンだなこの人……。
こんな会社で全部署から嫌われる監査なんかやらなくても、モデルででも食べていけただろうに。
オレより七歳年上の三十歳。
初めて会ったのは、オレが高校一年生で叶さんが二十二歳の頃だ。
その当時もすげー大人でカッコいい人だって思ってたけど、今の方が断然かっこいい。
まさに、今が旬って感じの大人の男だ。
でも、四十になっても五十になっても、今が旬!って感じの渋い男のままなんだろうなぁ。
この会社に結婚したい男ランキングなんてのがあったら、絶対トップはこの人だよ。
この人には、優しいお嫁さんがいるけど。
叶さんは軽く手を上げて挨拶してオフィスを出て行く。
ブンブン手を振ってたオレに、ゴロー先輩が呆れたように言った。
「よく監査部の人と仲良くなれるなぁお前……俺なんか顔見るだけでうんざりしちまうよ」
「叶さんとは昔馴染みなんです! オレが高校の頃から仲良くしてもらってて……」
「高校から?」
「叶さんって今年三十じゃなかった? 七歳も差があるのにどうやって仲良くなったのよ」
真美先輩が不思議そうに尋ねてくる。
う。
その話は……。
できれば、したくない。
真美さんだから話したくないってわけじゃなくて、できれば誰にも話したくない。知られたくない。
なんとか、ごまかさなきゃ。――そうだ!
「実はオレ……高校時代はワルかったんですよ……。叶さんはオレを更生させてくれた恩人なんです」
顎の下に手をやって、ハードボイルドっぽくにやりと笑いながら言う。
「何変な見栄を張ってるのよー」
「それを言うならワルかった、じゃなくてワルだった、だろ。お前みたいなワンコが悪さなんかできるわけねーだろ」
「自分からワル自慢する奴は大したこと無いってのが常識だぞ」
オレの言葉を周りの先輩達が一気に笑い飛ばす。
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