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<総務部での朝>
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「はいー! いますー。お早うございます次長!」
立ち上がって駆け寄る。ワンコ、とはオレのあだ名なのだ。
「おぉ、居たか。こないだの代理申請助かったよ。これ、礼のイチゴ大福な。食ってくれ」
「いいんですか!? ありがとうございます! いただきます!」
「あ、渡辺次長ー、凜君にばっかりずるいなあ」
真美先輩が唇を尖らせる。
「こいつはどんな仕事を振っても笑顔で受けてくれるから礼をしとかんとなぁ。お前さんもニコニコ笑顔で厄介事を引き受けてくれるなら、大福ぐらいいくらでも買ってくるぞ」
遠慮しまーす。
真美先輩があっさり断って椅子を反転させた。
「しっかしワンコは可愛いなぁ。俺の息子より年上だとは思えんよ」
次長の大きな掌が頭に乗って、体が揺れるぐらいの勢いで撫でて来る。
先輩も次長も……、オレ、今日叶さんに会うために髪型のセット頑張ったのにすっかり台無しになっちゃったな。
なでられるのは嫌いじゃないからいいんだけど。
「渡辺次長」
そんな中に、低く落ち着いた声が響く。
この声は!
オレの憧れの先輩、叶 直樹(かのう なおき)さんだ!
「いくら鈴森君が嫌がってないとはいえども、そのような呼び方は不適切ですので謹んでください。パワーハラスメントに取られかねません」
「おおっと監査君か。くわばらくわばら」
渡辺次長が肩を竦めて抜き足差し足の足取りで叶さんの横をすり抜けていった。
次長の言う通り、叶さんは内部監査統制部三課という、口に出したら舌を噛みそうなややこしい名前の監査部署に所属している。
昨日まで、関西の支社へ出張していた。
当初一週間の予定の出張だったのに、問題が露見して伸びに伸びて、一ヶ月。
やっと会えた!
もしオレがあだ名どおりの犬だったら、今頃千切れんばかりに尻尾を振っていたよ!
「叶さん、お早うございます! 出張お疲れ様でした!」
立ち上がって駆け寄る。ワンコ、とはオレのあだ名なのだ。
「おぉ、居たか。こないだの代理申請助かったよ。これ、礼のイチゴ大福な。食ってくれ」
「いいんですか!? ありがとうございます! いただきます!」
「あ、渡辺次長ー、凜君にばっかりずるいなあ」
真美先輩が唇を尖らせる。
「こいつはどんな仕事を振っても笑顔で受けてくれるから礼をしとかんとなぁ。お前さんもニコニコ笑顔で厄介事を引き受けてくれるなら、大福ぐらいいくらでも買ってくるぞ」
遠慮しまーす。
真美先輩があっさり断って椅子を反転させた。
「しっかしワンコは可愛いなぁ。俺の息子より年上だとは思えんよ」
次長の大きな掌が頭に乗って、体が揺れるぐらいの勢いで撫でて来る。
先輩も次長も……、オレ、今日叶さんに会うために髪型のセット頑張ったのにすっかり台無しになっちゃったな。
なでられるのは嫌いじゃないからいいんだけど。
「渡辺次長」
そんな中に、低く落ち着いた声が響く。
この声は!
オレの憧れの先輩、叶 直樹(かのう なおき)さんだ!
「いくら鈴森君が嫌がってないとはいえども、そのような呼び方は不適切ですので謹んでください。パワーハラスメントに取られかねません」
「おおっと監査君か。くわばらくわばら」
渡辺次長が肩を竦めて抜き足差し足の足取りで叶さんの横をすり抜けていった。
次長の言う通り、叶さんは内部監査統制部三課という、口に出したら舌を噛みそうなややこしい名前の監査部署に所属している。
昨日まで、関西の支社へ出張していた。
当初一週間の予定の出張だったのに、問題が露見して伸びに伸びて、一ヶ月。
やっと会えた!
もしオレがあだ名どおりの犬だったら、今頃千切れんばかりに尻尾を振っていたよ!
「叶さん、お早うございます! 出張お疲れ様でした!」
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