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第1話 田舎へGO!
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「ケンちゃん、積み込み終わったー?」
「そんなに慌ててたら積荷が、あー、崩れちゃった。」
ガラガラと車のトランクから崩れ落ちた荷物を前に、斎藤健治は深くため息をつく。
今日も真夏の猛暑が容赦なく頭を襲ってくる。
すこしポカリを口に含んで積み込みを再開する。のどに少し冷たさの抜けた、微妙に体になじむ感覚が自然と広がる。
受験を控えた高校最後の夏休みだ。普通の生徒と同じくらいには勉強した。今日から数日間は、息抜きがてらに、お盆ということでご先祖様に線香をあげに行く。
何より楽しみなのは、久々に年が近く、仲良しのいとこ二人と会えることだ。彼らとは自分が小学生のころからよく祖父母の家にしょっちゅう集まっては、ゲームをしたり、買い物や海に繰り出したりして遊んだものだった。最近は何かとお互いに忙しくて会える機会が減っていたので、今回のお盆に向けて以前以上に楽しみにしている自覚がある。
祖母の家は山口県の周防大島というところにある。金魚の可愛い形をしていて、年中温暖な気候のためミカン栽培が有名だ。昔ハワイに移民を多く出したことから、瀬戸内のハワイと呼ばれてもいる。以前日本書紀にもこの島の名前、“屋代島”と載っていたのを見たので、多分住民の歴史は相当古くからあるのだろうか。
スマホでゲームをしたいところだが、車の揺れに酔いやすいので仕方なく外を眺めていた。しばらくして広島から山口県に入ってすぐの岩国市に入ると、まず巨大な工業コンビナートや、賑わいを見せる岩国駅付近の商店街が出迎えてくれる。ふと以前同じような風景を車窓から眺めた記憶がよみがえる。同時に確実に待ち望んだ祖母の家へと近づいていると感じ、緊張と期待感とがない交ぜになった感情に浸ってしまう。岩国を過ぎれば、果てしなく続く線路と瀬戸内の海に挟まれた道が延々と伸びている。頬杖を突きながら若干日の傾いた空を映すまぶしい海を見つめた。5分くらいするともう目がまどろんでしまい、記憶と妄想が、夢のごとく頭の中を徐々に埋め始めた。
「この判定だと、もう前言っていたような志望校は無理だね。」
春休みに実施された全国模試の結果が、望んでもないのに手元に帰ってきたのは夏休みの前だった。春休みの学習が三年生、ひいては受験の結果を左右する大きな分岐点になると言われたことはよく記憶に刻み付けられている。そして得意でもない理系を高2で選んだことで前の年から偏差値を大きく落とした自分が、春休みこそが逆転のチャンス、受験の天王山だと意気込んでいたのも覚えている。しかし理想とは裏腹に、生活リズムは崩れ、すぐに手の届く誘惑にのめりこみ、結果は散々だった。焦って後半から頑張ったものの、前半の遅れをと思うと、ただただ周囲との絶望的なまでの差を感じ、打ちのめされていた。実際まずノートを埋めた。それに出された宿題はこなした。問題集も1周した。参考書もしっかり読んだ。しかし、本番で全く頭に残っていなかった。筆が動かず、ただ周囲のカッカッと反響するシャーペンの打撃音が、ひたすら自身の怠惰を攻め続けていた。もちろん手ごたえは最悪だった。まともに答案を埋めることすらできた気がしなかった。
周りの躍進と比較され、学校にも塾でも腫れもの扱いされるようになった。そして暗記量が増え、だんだんとついていけなくなっていくなってゆく授業を頬杖をついてぼーっと眺めていたら、あっと言う間に高校最後の夏休みを迎えていた。時が過ぎるのを待っていただけ。席に座っていただけ。本当に自分は何をしているのだろうか。ただ机に座って教科書を開いて、先生の話すことを聞いて、板書を映して、問題を解いて、知識を詰め込んで。そもそも自分は何がしたかったのだろうか。テストでいい点を取ること以上に今まで何も考えたことがなかったのだ。
そんな思い悩む自分に声をかけてくれたのは、現在3浪中で、あまりに勉強しない事から、学校や塾で「伝説の先輩」とある意味尊敬されている藤田圭吾だった。
「そこの後輩。」
「なんすか。」
黒髪指定の学校で、この赤みがかった金髪は周囲の注目を集めてしまう。
いつも通りのラブパンチと書かれたキュートなTシャツとチノパンのコーデを飽きることなく身にまとっている藤田はこちらをにらむように見下ろしながらうなった。
「お前、旅とか出たくないか。」
一瞬旅という響きのもたらす解放感に引き込まれてしまったが、何とか踏みとどまる。今まで我慢してきたのは、こんなろくでなしにならないためなんだ。賢い大学、賢い就職先。その先に必ず幸せが待っている。高収入、きれいな奥さん、幸せな家庭。親もきっと喜ぶに違いない。
「すんません先輩。間に合ってます。」
申し訳なさそうにふるまってお引き取りを願う。
しかし最近思い詰めていたからか、どうしても表情だけでは本音は隠しきれなかったようだ。自然とにじみ出る重い空気を圭吾は感じ取ったようだった。
「なんか今もだけどさ、お前、いっつも疲れた顔してんのな。こっちにも疲れがうつるわ。」
「すんません。」
「でさ、多分俺の経験と観察から察するに、前の模試でクソみたいな点とったんだろ。」
「・・・」
全く話したこともない相手に自分の奥底の考えを見抜かれていて驚いた。
「わかるさ。だってお前現役の時の悩める俺とそっくりな表情してるよ。」
「マジですか。」
俺はコイツのように3浪してしまうのか。最悪だ。
「ああ。」
彼は放課後の夕陽がさす教室の窓から、野球部の練習を眺めながら話し始めた。
「なんで受験勉強やってんの?」
「わかりません。多分親や周りの人間が喜ぶからかもしれません。」
「まあ悪くない理由だよな。ほかには?一つじゃないだろ?」
「ほかには何となく将来いい会社に入れたなあ、とか、いい大学には入れたら、あ、社会で勝ち組になれるじゃないですか。」
「俺はさ、その価値観がおかしいと思うんだよ。」
彼はさっきのひょうひょうとした様子とは打って変わってどすの利いた低い声でうなった。
「お前って、自分で何か決めないの?」
「どういうことですか?」
「お前の言っていることってさ、あくまで他人の受け売りとか、他人がどう思うかがベースでさ、自分の意志が全く感じられないんだよ。」
「え。」
突如藤田から放たれた鋭い言葉にしばらく思考が停止してしまう。自分の意志?俺が何をしたいかってことか。
「でも、今自分はやりたいこととかないし。でもそんなこと我慢して勉強しなきゃいけないじゃないですか。春に遊びに溺れてしまったのだから、夏に取り返さなくてどうするんですか。」
「別に遊べばいいじゃない。誰が強制してるんだよ。その勉強とやらをさ。」
何か一理あることを言っている気がする。しかしまだ理解できない。というか俺は今から塾の時間なのに、持論を語って延々引き留めているコイツ、もとい藤田先輩に腹が立ってきた。何より三浪のくせに、上から目線の説教してくることが気に食わない。さっきから自分の成績を上げる秘訣でも教えてくれるのかと思いきや、やっぱり勉強しない仲間の勧誘かよ。本当にろくでなしだ。
「すいません、本当に急いでいるため失礼します。」
「む。まだ認めんか。」
彼は眉間にしわを寄せて、真顔だがかすかないらだちを抑えたようにも見える表情をする。
「本当に何言ってるか理解しかねるっす。」
殴り合いにでも発展しないかと気が気でならず、少し肩に力が入って震えたが、彼の表情はそれまでの緊張しきった真顔から声をかけてきた時と同じ、緩んだ屈託のない顔に戻った。
「ま、気が向いたら旅に出てみろよ。特に瀬戸内の島とかは気がやんだ時は最高だからな。自由ってサイコーだぜ~。」
さっきまで対面していた先輩は、追い越し際にまでしつこく持論を語ってくる。本当に面倒くさい。
家に帰って先輩の言っていた内容を母に告げると、なぜか喜んだ顔になっていた。
「ケンちゃん、お願いがあるの。」
「なんやねーん。」
「おばあちゃん、ケンちゃんにしばらく会えなくて寂しくしてるから、顔を見せに行ってあげて?」
「母さんまで先輩と同じようなことを・・・。あんなクソニートのこと気にしなくていいよ。」
母はなだめるように、
「いや、その人の言ってること間違ってないと思うよ。ケンちゃんは自分の好きなことしてもいいんだよ?」
「ええ・・・、高校受験も頑張ったじゃん。ここまで来たし、学歴しっかりとらないと将来不利じゃないの?だったら夏休みは受験生の天王山だし、忙しいから無理だよ。」
「いやいいからいいから。だまされたと思って行ってみて!何とかなるよ、一日くらい。」
「わかったよ、行くから行くから。」
仕方なしに了承した半面、なぜか不思議なことに楽しみになっている自分がいる。
「それでさ、あの二人もね・・・」
「そんなに慌ててたら積荷が、あー、崩れちゃった。」
ガラガラと車のトランクから崩れ落ちた荷物を前に、斎藤健治は深くため息をつく。
今日も真夏の猛暑が容赦なく頭を襲ってくる。
すこしポカリを口に含んで積み込みを再開する。のどに少し冷たさの抜けた、微妙に体になじむ感覚が自然と広がる。
受験を控えた高校最後の夏休みだ。普通の生徒と同じくらいには勉強した。今日から数日間は、息抜きがてらに、お盆ということでご先祖様に線香をあげに行く。
何より楽しみなのは、久々に年が近く、仲良しのいとこ二人と会えることだ。彼らとは自分が小学生のころからよく祖父母の家にしょっちゅう集まっては、ゲームをしたり、買い物や海に繰り出したりして遊んだものだった。最近は何かとお互いに忙しくて会える機会が減っていたので、今回のお盆に向けて以前以上に楽しみにしている自覚がある。
祖母の家は山口県の周防大島というところにある。金魚の可愛い形をしていて、年中温暖な気候のためミカン栽培が有名だ。昔ハワイに移民を多く出したことから、瀬戸内のハワイと呼ばれてもいる。以前日本書紀にもこの島の名前、“屋代島”と載っていたのを見たので、多分住民の歴史は相当古くからあるのだろうか。
スマホでゲームをしたいところだが、車の揺れに酔いやすいので仕方なく外を眺めていた。しばらくして広島から山口県に入ってすぐの岩国市に入ると、まず巨大な工業コンビナートや、賑わいを見せる岩国駅付近の商店街が出迎えてくれる。ふと以前同じような風景を車窓から眺めた記憶がよみがえる。同時に確実に待ち望んだ祖母の家へと近づいていると感じ、緊張と期待感とがない交ぜになった感情に浸ってしまう。岩国を過ぎれば、果てしなく続く線路と瀬戸内の海に挟まれた道が延々と伸びている。頬杖を突きながら若干日の傾いた空を映すまぶしい海を見つめた。5分くらいするともう目がまどろんでしまい、記憶と妄想が、夢のごとく頭の中を徐々に埋め始めた。
「この判定だと、もう前言っていたような志望校は無理だね。」
春休みに実施された全国模試の結果が、望んでもないのに手元に帰ってきたのは夏休みの前だった。春休みの学習が三年生、ひいては受験の結果を左右する大きな分岐点になると言われたことはよく記憶に刻み付けられている。そして得意でもない理系を高2で選んだことで前の年から偏差値を大きく落とした自分が、春休みこそが逆転のチャンス、受験の天王山だと意気込んでいたのも覚えている。しかし理想とは裏腹に、生活リズムは崩れ、すぐに手の届く誘惑にのめりこみ、結果は散々だった。焦って後半から頑張ったものの、前半の遅れをと思うと、ただただ周囲との絶望的なまでの差を感じ、打ちのめされていた。実際まずノートを埋めた。それに出された宿題はこなした。問題集も1周した。参考書もしっかり読んだ。しかし、本番で全く頭に残っていなかった。筆が動かず、ただ周囲のカッカッと反響するシャーペンの打撃音が、ひたすら自身の怠惰を攻め続けていた。もちろん手ごたえは最悪だった。まともに答案を埋めることすらできた気がしなかった。
周りの躍進と比較され、学校にも塾でも腫れもの扱いされるようになった。そして暗記量が増え、だんだんとついていけなくなっていくなってゆく授業を頬杖をついてぼーっと眺めていたら、あっと言う間に高校最後の夏休みを迎えていた。時が過ぎるのを待っていただけ。席に座っていただけ。本当に自分は何をしているのだろうか。ただ机に座って教科書を開いて、先生の話すことを聞いて、板書を映して、問題を解いて、知識を詰め込んで。そもそも自分は何がしたかったのだろうか。テストでいい点を取ること以上に今まで何も考えたことがなかったのだ。
そんな思い悩む自分に声をかけてくれたのは、現在3浪中で、あまりに勉強しない事から、学校や塾で「伝説の先輩」とある意味尊敬されている藤田圭吾だった。
「そこの後輩。」
「なんすか。」
黒髪指定の学校で、この赤みがかった金髪は周囲の注目を集めてしまう。
いつも通りのラブパンチと書かれたキュートなTシャツとチノパンのコーデを飽きることなく身にまとっている藤田はこちらをにらむように見下ろしながらうなった。
「お前、旅とか出たくないか。」
一瞬旅という響きのもたらす解放感に引き込まれてしまったが、何とか踏みとどまる。今まで我慢してきたのは、こんなろくでなしにならないためなんだ。賢い大学、賢い就職先。その先に必ず幸せが待っている。高収入、きれいな奥さん、幸せな家庭。親もきっと喜ぶに違いない。
「すんません先輩。間に合ってます。」
申し訳なさそうにふるまってお引き取りを願う。
しかし最近思い詰めていたからか、どうしても表情だけでは本音は隠しきれなかったようだ。自然とにじみ出る重い空気を圭吾は感じ取ったようだった。
「なんか今もだけどさ、お前、いっつも疲れた顔してんのな。こっちにも疲れがうつるわ。」
「すんません。」
「でさ、多分俺の経験と観察から察するに、前の模試でクソみたいな点とったんだろ。」
「・・・」
全く話したこともない相手に自分の奥底の考えを見抜かれていて驚いた。
「わかるさ。だってお前現役の時の悩める俺とそっくりな表情してるよ。」
「マジですか。」
俺はコイツのように3浪してしまうのか。最悪だ。
「ああ。」
彼は放課後の夕陽がさす教室の窓から、野球部の練習を眺めながら話し始めた。
「なんで受験勉強やってんの?」
「わかりません。多分親や周りの人間が喜ぶからかもしれません。」
「まあ悪くない理由だよな。ほかには?一つじゃないだろ?」
「ほかには何となく将来いい会社に入れたなあ、とか、いい大学には入れたら、あ、社会で勝ち組になれるじゃないですか。」
「俺はさ、その価値観がおかしいと思うんだよ。」
彼はさっきのひょうひょうとした様子とは打って変わってどすの利いた低い声でうなった。
「お前って、自分で何か決めないの?」
「どういうことですか?」
「お前の言っていることってさ、あくまで他人の受け売りとか、他人がどう思うかがベースでさ、自分の意志が全く感じられないんだよ。」
「え。」
突如藤田から放たれた鋭い言葉にしばらく思考が停止してしまう。自分の意志?俺が何をしたいかってことか。
「でも、今自分はやりたいこととかないし。でもそんなこと我慢して勉強しなきゃいけないじゃないですか。春に遊びに溺れてしまったのだから、夏に取り返さなくてどうするんですか。」
「別に遊べばいいじゃない。誰が強制してるんだよ。その勉強とやらをさ。」
何か一理あることを言っている気がする。しかしまだ理解できない。というか俺は今から塾の時間なのに、持論を語って延々引き留めているコイツ、もとい藤田先輩に腹が立ってきた。何より三浪のくせに、上から目線の説教してくることが気に食わない。さっきから自分の成績を上げる秘訣でも教えてくれるのかと思いきや、やっぱり勉強しない仲間の勧誘かよ。本当にろくでなしだ。
「すいません、本当に急いでいるため失礼します。」
「む。まだ認めんか。」
彼は眉間にしわを寄せて、真顔だがかすかないらだちを抑えたようにも見える表情をする。
「本当に何言ってるか理解しかねるっす。」
殴り合いにでも発展しないかと気が気でならず、少し肩に力が入って震えたが、彼の表情はそれまでの緊張しきった真顔から声をかけてきた時と同じ、緩んだ屈託のない顔に戻った。
「ま、気が向いたら旅に出てみろよ。特に瀬戸内の島とかは気がやんだ時は最高だからな。自由ってサイコーだぜ~。」
さっきまで対面していた先輩は、追い越し際にまでしつこく持論を語ってくる。本当に面倒くさい。
家に帰って先輩の言っていた内容を母に告げると、なぜか喜んだ顔になっていた。
「ケンちゃん、お願いがあるの。」
「なんやねーん。」
「おばあちゃん、ケンちゃんにしばらく会えなくて寂しくしてるから、顔を見せに行ってあげて?」
「母さんまで先輩と同じようなことを・・・。あんなクソニートのこと気にしなくていいよ。」
母はなだめるように、
「いや、その人の言ってること間違ってないと思うよ。ケンちゃんは自分の好きなことしてもいいんだよ?」
「ええ・・・、高校受験も頑張ったじゃん。ここまで来たし、学歴しっかりとらないと将来不利じゃないの?だったら夏休みは受験生の天王山だし、忙しいから無理だよ。」
「いやいいからいいから。だまされたと思って行ってみて!何とかなるよ、一日くらい。」
「わかったよ、行くから行くから。」
仕方なしに了承した半面、なぜか不思議なことに楽しみになっている自分がいる。
「それでさ、あの二人もね・・・」
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