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本編

113 どうしようもない王様2【閑話】

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「・・・ご主人さま」

あまりの恥ずかしさに少し声が震えた。

「もう、がまんできない・・・ので、はしたない、わたし、を、もっと気持ちよくしてください。」

(もうやだっ、思っていたのと違う!)

かわいくメイドさんごっこかと思いきや、まさかの性奴隷プレイ。

わたしは内心動揺しつつも、従順に相手の望むセリフを口にする。だらだらと蜜を流す秘所は、今以上の刺激がほしくて、ひくひくしていた。

罵倒したい気持ちはやまやまだが、彼の征服欲を満たせるのであれば、これくらいはしかたないかというあきらめも半分くらいあるのだ。

泣きそうな顔で続きを強請る性奴隷(わたしのことだ!)に満足したアレクは、懇願を聞くなり風魔法で一瞬にして戒めをほどき去った。そのまま、わたしをぐいと引っ張って立ち上がらせる。

もどかしそうに下穿きを脱ぎ捨てると、そのまま乱暴に壁に押し付ける。そして、無言で、ぬかるんだ秘所に興奮して立ち上がったモノを突き立てた。

「いやああああっ」

突然の質量に、思わず悲鳴が漏れる。

「はは、こんなに締め付けるんだ。無理やりされるのが好きなんだよねー。」

「いやああん、ぐりぐりしないでっ」

「っは、気持ちいい。すごい締め付け、たまんない、ほら、もっと啼いて」

心底楽しそうなアレクの声が嬌声に重なる。キスされ、舐められ、もうやだと泣いても、鬼畜な王様は一晩中やめてくれなかった。





翌朝、カタン、という物音で目が覚めると、すでにアレクは身支度を終えていた。穢れひとつない清廉な立ち姿は、どこから見ても完璧な王子様だ。昨夜の鬼畜な行為が夢だったのかと思えてくる。

でも、全身の疲労と倦怠感が、昨晩の行為が現実だったことを証明していた。

もぞ、と横になったままからだを向けて、申し訳ないと思いつつベッドから声をかける。

「もうお仕事?」

「そうだねー、いつも日中ひとりで申し訳ないけど。その分夜は可愛がってあげるから許してね。」

「う・・・、ほどほどに願いマス。」

ぼそぼそと返事をするわたしの声に、アレクは無意識とも見える笑みを浮かべた。そして悪魔すら魅了するような表情を浮かべ、いたずらっぽく言った。

「気を付けたほうがいいよ。ちゃんと拒否しないと、何でも許されていると思って、どんどんエスカレートするよ。」

「はーいはい、気をつけます。」

役に立たない助言におざなりな返事をして、内心でため息をつく。

(しょうがないなあ・・・まったく)

アレクは、わたしが彼の要求を断れないのを正確に理解している。それにもかかわらず、敢えてこんな発言をするのは、自分をさらけ出して拒絶されるのを恐れているからだ。

表面的には「共犯者」と言いながら、心の奥底では愛情や信頼を疑っている。いつかわたしが裏切ると思っていて。だから、わたしが口にする前に自分から予防線を張ってしまう──本当にどうしようもない王様だ。

(わたしがアレクを拒絶する日なんて来ないのに)

信じてもらえないもどかしさを感じながら、せめてもと思い筋肉痛で起き上がれないまま手招きする。

アレクが「なに?」と気軽に寄ってきたところで、ぐいっとベッドに引っ張った。油断していたのか、意外と簡単に引き寄せられた。

「なに、とつぜ・・・っん・・」

口を開く隙も与えず、わたしからアレクにキスをする。押し倒すような体勢のまま、強引に舌を入れた。時折唇の端をかぷりと甘噛みし、彼が感じるであろう場所をれろれろと舌で刺激する。

「ん、ふっ・・・んんっ」

はじめは抵抗しようとしたアレクは、そのまま観念したのか、キスに没頭しはじめた。

ゆっくりと目を閉じ、わたしの舌を追いかけるように強く絡め、吸い上げる。

わたしは少しでも気持ちが伝わればいいと思いながら、唾液を流し込み、自分が思うなかでいちばんいやらしいキスをした。それに応えるように、アレクもわたしを抱き込み、キスを返す。

舌が絡まる。生暖かい熱が咥内を犯し、触れてもいない下半身が濡れてくる。それはわたしだけじゃなくて、密着しているアレクの下半身も固くなっているのを感じた。

「シア、そろそろ時間・・・んっ」

「や・・・もっと・・・ちょうだい?」

かぷ、と形良い唇を甘噛みし、何度も何度もキスをせがんだ。気づくとけっこうな時間が経っていたが、遅刻するほどではないはずだ。

「えと、どうしたの? 積極的なのはうれしいけどさ。」

アレクは、突然のキスにいささか動揺したように、わたしに尋ねた。

(ぜったい教えてあげない)

このままアレクがわたしに翻弄されればいいと思う。冷静で憶病な彼が愛情に溺れて、溺れて、人の気持ちを信じられるようになってほしいと願う。

──だけど、どうしてもさっきの発言が気になって、ひとつだけ問いただす。

「・・・ところで、エスカレートって?」

「うーん、今度は目隠しとかしてみたいかなあ。あと庭でとか、3人でとかも捨てがたいし。」

独り言みたいな小声でつぶやいた後、アレクはわたしにキスを落としてから部屋を出ていった。

(目隠し・・・)

私は寝起きのぼんやりした頭で、さきほどの不穏なつぶやきは、きっと気のせいだと自分に言い聞かせた。
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