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本編
82 キスは特別1
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「シア、こっちおいで。」
振り返り、わずかに笑みを浮かべてわたしを誘うルーは、ぞくりとするほど美しかった。
見慣れているわたしですら一瞬息を止める。無機質にも見える白皙の美貌の中で、ただ、宝石のような紅い瞳だけが魔力灯の光を受けて鮮やかに輝く。
命令ではないたった一言。なのに、いつもの気安さとも、昼間のよそよそしさとも違う。抗うことができない力を持っていた。
(もう、おこってない、の、かな?)
ふらふらと言われるがまま近づくと、ルーは、書き物をしている手を止めてわたしの腰を右腕で優雅に引き寄せた。そのまま、ぽすりと頭をわたしの身に寄せる。
「ん・・・。」
まるで小動物が甘えるようなしぐさだった。わたしの胸元にぐりぐりと擦りつけるように頭を動かすたびに、ふわふわと銀色の髪が揺れる。きれいだなあと思って指に絡めると、ルーはくすぐったそうに身をよじった。
「・・・あいたかった。」
そう呟いてわたしを見上げる瞳は、血濡れたように妖しく光る。魔に魅入られたように視線を逸らせない。本能的にぞくりと身を震わせた。
「シア、あいたかった。」
もういちど、告げられる。ルーは左腕もわたしの背中に回してから、優雅な姿からは想像できないほどの力を込めた。応えるように、わたしも彼の背中に腕を回す。
「わたしもルーにあいたかった。キスしてほしかった。」
「過去形なんだ?」
ルーは、くすりと口の端だけで笑って、立ち上がった。まるで抱きしめられるような体勢になり、今度はわたしのほうが、逆に彼を見上げた。
「なにか、おこってる?」
「怒ってる? いいや、何も怒っていないよ。でもシアはもう僕とはキスしたくないみたいだ。」
なんでルーが急にそんなことを言い出したのかわからずに、戸惑いながらも尋ねる。
「なんでそんなこと言うの?」
「だって、ラジウスとかいう奴とキスしたでしょ?」
「いや、それは善意で制御方法を教えてくれるって・・・」
「ねえ、気持ちよかった?」
わたしの答えなんて興味がないのか、言葉を途中で遮って尋ねた。
そんなことないと否定したかったが、ラジウスのキスはものすごく気持ちがよかったのを一瞬思い出してしまい即答できなかった。そしてルーは、わたしが言葉に詰まったのを見逃さなかった。
両手でわたしの頬を挟み、心の奥底まで窺うように、じっと覗き込む。
「自分と同じ境遇の人間だからって、ほだされた?」
「ふえ??」
「ああ、聞いてないの? ラジウスは君と同じ世界から10年前に召喚されてるって。」
はじめて聞く情報にぶんぶん頭を振ると、ルーは、ふかく、ふかく溜息をついた。
「なんだ・・・知らなかったのか。」
「知らなかったよ。そんな身近にそんな境遇の人がいるなんて思いもしなかった。」
ラジウスだって、そんなこと一言も言わなかった。
「僕はてっきり、シアはラジウスに気持ちが行っちゃったのかと思った。」
「まさか、それで機嫌が悪かったの?」
ちょっと呆れて聞くと、不貞腐れたように返事をした。
「悪い? だいたいシアも悪いんだからね。知らない男とふたりっきりでキスとかしちゃって。」
そう言ってルーはわたしの手を引き、近くにあるソファーへ向かった。
この部屋は贅沢にも寝室と書斎が分かれていて、広々とした別の部屋には寛げるスペースがある。その広い部屋まで連れてくると、ルーはわたしを抱え込むように抱き込んで深々とソファーに座り直した。
かつてセイがアナスタシアをこうやって抱きしめていたのは記憶にあった。でも、自分で経験するのはまた別の話だ。さすがにこの体勢は初めてで、恥ずかしくい。
おしりの下に硬くなったモノの感触がある。気になってしかたがないのに、ルーは何も気にしないかのように、そのまま後ろから腕を伸ばすとわたしの胸を弄り始めた。
やさしく撫でるように、胸の頂だけをくるくる、くるくる。服の上からなので布地が擦れて気持ちいい。
「ふっ・・・。」
思わず漏れる声に気づいたのか、ルーがひそやかに笑った。
「ねえ、なんでシアってば乳首しか触ってないのにそんなに気持ちよさそうにしているのかなあ?」
そういいながら、きゅっと先端をつまんだり、ぐにぐにと捏ねるように弄る。
「はあ・・っん。」
「知らない間に弄られ慣れちゃったのかなあ。困ったねえ。」
ぜんぜん困っていない声音でつぶやきつつ、ルーはその手を止めずに胸を揉み始めた。
わたしは胸だけで気持ちよくなってしまい、甘い声を上げるばかりだった。
「やあっん、この姿勢、やだ。ルーとキスしたい。から。」
かろうじて訴えると、ルーは目を瞬かせた。数秒、何かを考えているかのように弄る手が止まる。
そして意地悪そうな笑みを浮かべると、無理やり振り返らせてキスをした。
振り返り、わずかに笑みを浮かべてわたしを誘うルーは、ぞくりとするほど美しかった。
見慣れているわたしですら一瞬息を止める。無機質にも見える白皙の美貌の中で、ただ、宝石のような紅い瞳だけが魔力灯の光を受けて鮮やかに輝く。
命令ではないたった一言。なのに、いつもの気安さとも、昼間のよそよそしさとも違う。抗うことができない力を持っていた。
(もう、おこってない、の、かな?)
ふらふらと言われるがまま近づくと、ルーは、書き物をしている手を止めてわたしの腰を右腕で優雅に引き寄せた。そのまま、ぽすりと頭をわたしの身に寄せる。
「ん・・・。」
まるで小動物が甘えるようなしぐさだった。わたしの胸元にぐりぐりと擦りつけるように頭を動かすたびに、ふわふわと銀色の髪が揺れる。きれいだなあと思って指に絡めると、ルーはくすぐったそうに身をよじった。
「・・・あいたかった。」
そう呟いてわたしを見上げる瞳は、血濡れたように妖しく光る。魔に魅入られたように視線を逸らせない。本能的にぞくりと身を震わせた。
「シア、あいたかった。」
もういちど、告げられる。ルーは左腕もわたしの背中に回してから、優雅な姿からは想像できないほどの力を込めた。応えるように、わたしも彼の背中に腕を回す。
「わたしもルーにあいたかった。キスしてほしかった。」
「過去形なんだ?」
ルーは、くすりと口の端だけで笑って、立ち上がった。まるで抱きしめられるような体勢になり、今度はわたしのほうが、逆に彼を見上げた。
「なにか、おこってる?」
「怒ってる? いいや、何も怒っていないよ。でもシアはもう僕とはキスしたくないみたいだ。」
なんでルーが急にそんなことを言い出したのかわからずに、戸惑いながらも尋ねる。
「なんでそんなこと言うの?」
「だって、ラジウスとかいう奴とキスしたでしょ?」
「いや、それは善意で制御方法を教えてくれるって・・・」
「ねえ、気持ちよかった?」
わたしの答えなんて興味がないのか、言葉を途中で遮って尋ねた。
そんなことないと否定したかったが、ラジウスのキスはものすごく気持ちがよかったのを一瞬思い出してしまい即答できなかった。そしてルーは、わたしが言葉に詰まったのを見逃さなかった。
両手でわたしの頬を挟み、心の奥底まで窺うように、じっと覗き込む。
「自分と同じ境遇の人間だからって、ほだされた?」
「ふえ??」
「ああ、聞いてないの? ラジウスは君と同じ世界から10年前に召喚されてるって。」
はじめて聞く情報にぶんぶん頭を振ると、ルーは、ふかく、ふかく溜息をついた。
「なんだ・・・知らなかったのか。」
「知らなかったよ。そんな身近にそんな境遇の人がいるなんて思いもしなかった。」
ラジウスだって、そんなこと一言も言わなかった。
「僕はてっきり、シアはラジウスに気持ちが行っちゃったのかと思った。」
「まさか、それで機嫌が悪かったの?」
ちょっと呆れて聞くと、不貞腐れたように返事をした。
「悪い? だいたいシアも悪いんだからね。知らない男とふたりっきりでキスとかしちゃって。」
そう言ってルーはわたしの手を引き、近くにあるソファーへ向かった。
この部屋は贅沢にも寝室と書斎が分かれていて、広々とした別の部屋には寛げるスペースがある。その広い部屋まで連れてくると、ルーはわたしを抱え込むように抱き込んで深々とソファーに座り直した。
かつてセイがアナスタシアをこうやって抱きしめていたのは記憶にあった。でも、自分で経験するのはまた別の話だ。さすがにこの体勢は初めてで、恥ずかしくい。
おしりの下に硬くなったモノの感触がある。気になってしかたがないのに、ルーは何も気にしないかのように、そのまま後ろから腕を伸ばすとわたしの胸を弄り始めた。
やさしく撫でるように、胸の頂だけをくるくる、くるくる。服の上からなので布地が擦れて気持ちいい。
「ふっ・・・。」
思わず漏れる声に気づいたのか、ルーがひそやかに笑った。
「ねえ、なんでシアってば乳首しか触ってないのにそんなに気持ちよさそうにしているのかなあ?」
そういいながら、きゅっと先端をつまんだり、ぐにぐにと捏ねるように弄る。
「はあ・・っん。」
「知らない間に弄られ慣れちゃったのかなあ。困ったねえ。」
ぜんぜん困っていない声音でつぶやきつつ、ルーはその手を止めずに胸を揉み始めた。
わたしは胸だけで気持ちよくなってしまい、甘い声を上げるばかりだった。
「やあっん、この姿勢、やだ。ルーとキスしたい。から。」
かろうじて訴えると、ルーは目を瞬かせた。数秒、何かを考えているかのように弄る手が止まる。
そして意地悪そうな笑みを浮かべると、無理やり振り返らせてキスをした。
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