37 / 133
本編
37 黎明、または始まりとも言う2
しおりを挟む
これから別の相手と夜を過ごすというのに、こんなこと言うわたしもたいがいだとは思う。
でも、毎日繰り返していたルーティーンだから、と苦しい言い訳を自分で自分にした。
・・・内心、現実逃避だと知っていながら。
「いいの?」
「うん、これから陛下と会って話すのに緊張もしているの。だから、、、して?」
ルーは、猫みたいに目を細めて笑うと、やさしくキスをしてくれた。それ以上の理由も聞かなかった。
はじめは軽く、何回かキスするうちに、そっと唇を割って舌が入ってくる。ためらうことなくわたしの舌を捉え、いたずらするように吸い上げる。そのまま歯茎をなぞり、快感を引き出すように咥内を舐めまわす。
(うわ、、、やっぱりすごくきもちいい)
いやなことも、不安も、全部忘れてしまいそうなキスだった。
うっとりと目を閉じると、彼の手がおしりを撫でた。下着をつけていないのでダイレクトに手の熱と感触が伝わる。いくぶん身体が強張っていることがわかったのだろう、「アレク相手にがんばらなくていいからね」と抱きしめてくれた。
(この世界で一番最初に出会ったのがルーでよかった)
ぎゅっとされると、すごく安心する。純粋な、混じりけのない紅玉の瞳は、はじめに『わたしの味方だ』と言ってくれた。彼のキスはわたしを癒してくれる。
もう一度、今度はわたしからキスをした。
「はあ、、、どうしたの。なんかいつもと違って積極的というか。」
答える代わりに、はむっと下唇を甘噛みした。彼の表情が気持ちよさそうにトロリとする。追いかけるように舌を絡め、ちゅぱっと音を立てて吸い付いた。
ほんとうは言いたい。ルーとのキスが大好きって。キモチイイこともしたいって。
女性にだってちゃんと性欲はあるし、素敵な男性に求められたらうれしい。この世界は1人の相手に添い遂げる文化ではなさそうなので、不貞とかを気にする必要もなさそうだ。
でも美しくない、ほんとうのわたしを知っても、まだ今までみたいにキスしてくれるかわからない。だから、まだ本音は言えない。
今夜だって、ほんとうはこわい。美しいアナスタシアのなかで、美しくないコトネの片鱗が透けてしまったら、失望させてしまうのではないかと不安に思う。
現実逃避して、ゆっくりとキスを味わっていると、控えめなノックの音と同時にアレクセイ陛下が音もなく中に入ってきた。部屋にルーがいることに気づいたようだが、怒っているふうではない。
思ったより来るのが早い。ふたり抱き合った腕を離して、お互い名残惜しそうに唇を離して陛下を見た。
「私も混ぜてもらえるのかな?それともルーに見られながら突っ込まれたほうが、君はひょっとして興奮する?」
邪気のない笑顔でわたしに尋ねる。嫌そうな顔で陛下を見たルーは、「シア、またね」と言って転移でいなくなってしまった。チェシャ猫みたいに、するっと。
「まったく、所有欲が強い子供はこれだから困るね。」
「・・・表現に難があるよりは、ましだと思いますけど。」
まさか面と向かって突っ込むとか言われると思わなかった。わたしの精一杯の皮肉に気にする様子もなく、陛下はわたしの頬を両手で挟んで目を覗き込むようにして尋ねた。透明度が高いアクアマリンみたいな瞳がわたしを捉える。
「ねえ、私が君の初めての相手でいいの?この前はあんなに嫌がっていたのに。」
表情も柔らかく、言っていることもちゃんとしているのに、なぜか裏に何か隠している気がしてならない。いかにも人の上に立つ人っぽい。
自分の心を落ち着かせるため深呼吸して、正直に答えた。
「このからだの初めてはあなたがいい。わたしのこともアナスタシアのことも好きじゃない相手のほうが気が楽。」
わざと敬語は使わなかった。こういう交渉ははじめが肝心だ。あくまでも対等だと主張しないと、あっという間に丸め込まれてしまう。
わたしの意図に気づいたのか、陛下の顔におや、という笑みが浮かぶ。
「陛下の言う通りにするから、わたしがこの世界で生きるための知識をちょうだい。」
「そんなことしなくても、妃として何不自由なく暮らせるのに?」
「そんなの陛下が飽きたら終わりだもの。わたしは平和に幸せに暮らしたい。そのためにはこの世界に元の世界の知識を持ち込んだってかまわない。」
「言うねえ。この国が混乱するかもしれないのに私が許可すると?」
「する。陛下は、今を変えたいと思っているはず。」
虚勢を張ってみたものの、王様相手にこんな偉そうなことを言うのはさすがに怖くて少し声が震えた。でもはったりは最後まで続けないと意味がない。絞り出すように最後まで、言う。
「・・・陛下は、いわばわたしの共犯者。良くするのも悪くするのも陛下次第だから。」
アレクセイ陛下は一瞬驚いた顔をした。そのあと破顔して「もちろん」と、わたしを抱きしめた。
何が気に入ったのか知らないけど、頬ずりせんばかりの勢いだ。抱き上げてくるくるとわたしごと回る。欲に濡れた瞳が、妖しく光った。
「君は私だけのもの。大事な共犯者。満足してもらえるよう、これから君をたっぷり可愛がってあげるからね。」
でも、毎日繰り返していたルーティーンだから、と苦しい言い訳を自分で自分にした。
・・・内心、現実逃避だと知っていながら。
「いいの?」
「うん、これから陛下と会って話すのに緊張もしているの。だから、、、して?」
ルーは、猫みたいに目を細めて笑うと、やさしくキスをしてくれた。それ以上の理由も聞かなかった。
はじめは軽く、何回かキスするうちに、そっと唇を割って舌が入ってくる。ためらうことなくわたしの舌を捉え、いたずらするように吸い上げる。そのまま歯茎をなぞり、快感を引き出すように咥内を舐めまわす。
(うわ、、、やっぱりすごくきもちいい)
いやなことも、不安も、全部忘れてしまいそうなキスだった。
うっとりと目を閉じると、彼の手がおしりを撫でた。下着をつけていないのでダイレクトに手の熱と感触が伝わる。いくぶん身体が強張っていることがわかったのだろう、「アレク相手にがんばらなくていいからね」と抱きしめてくれた。
(この世界で一番最初に出会ったのがルーでよかった)
ぎゅっとされると、すごく安心する。純粋な、混じりけのない紅玉の瞳は、はじめに『わたしの味方だ』と言ってくれた。彼のキスはわたしを癒してくれる。
もう一度、今度はわたしからキスをした。
「はあ、、、どうしたの。なんかいつもと違って積極的というか。」
答える代わりに、はむっと下唇を甘噛みした。彼の表情が気持ちよさそうにトロリとする。追いかけるように舌を絡め、ちゅぱっと音を立てて吸い付いた。
ほんとうは言いたい。ルーとのキスが大好きって。キモチイイこともしたいって。
女性にだってちゃんと性欲はあるし、素敵な男性に求められたらうれしい。この世界は1人の相手に添い遂げる文化ではなさそうなので、不貞とかを気にする必要もなさそうだ。
でも美しくない、ほんとうのわたしを知っても、まだ今までみたいにキスしてくれるかわからない。だから、まだ本音は言えない。
今夜だって、ほんとうはこわい。美しいアナスタシアのなかで、美しくないコトネの片鱗が透けてしまったら、失望させてしまうのではないかと不安に思う。
現実逃避して、ゆっくりとキスを味わっていると、控えめなノックの音と同時にアレクセイ陛下が音もなく中に入ってきた。部屋にルーがいることに気づいたようだが、怒っているふうではない。
思ったより来るのが早い。ふたり抱き合った腕を離して、お互い名残惜しそうに唇を離して陛下を見た。
「私も混ぜてもらえるのかな?それともルーに見られながら突っ込まれたほうが、君はひょっとして興奮する?」
邪気のない笑顔でわたしに尋ねる。嫌そうな顔で陛下を見たルーは、「シア、またね」と言って転移でいなくなってしまった。チェシャ猫みたいに、するっと。
「まったく、所有欲が強い子供はこれだから困るね。」
「・・・表現に難があるよりは、ましだと思いますけど。」
まさか面と向かって突っ込むとか言われると思わなかった。わたしの精一杯の皮肉に気にする様子もなく、陛下はわたしの頬を両手で挟んで目を覗き込むようにして尋ねた。透明度が高いアクアマリンみたいな瞳がわたしを捉える。
「ねえ、私が君の初めての相手でいいの?この前はあんなに嫌がっていたのに。」
表情も柔らかく、言っていることもちゃんとしているのに、なぜか裏に何か隠している気がしてならない。いかにも人の上に立つ人っぽい。
自分の心を落ち着かせるため深呼吸して、正直に答えた。
「このからだの初めてはあなたがいい。わたしのこともアナスタシアのことも好きじゃない相手のほうが気が楽。」
わざと敬語は使わなかった。こういう交渉ははじめが肝心だ。あくまでも対等だと主張しないと、あっという間に丸め込まれてしまう。
わたしの意図に気づいたのか、陛下の顔におや、という笑みが浮かぶ。
「陛下の言う通りにするから、わたしがこの世界で生きるための知識をちょうだい。」
「そんなことしなくても、妃として何不自由なく暮らせるのに?」
「そんなの陛下が飽きたら終わりだもの。わたしは平和に幸せに暮らしたい。そのためにはこの世界に元の世界の知識を持ち込んだってかまわない。」
「言うねえ。この国が混乱するかもしれないのに私が許可すると?」
「する。陛下は、今を変えたいと思っているはず。」
虚勢を張ってみたものの、王様相手にこんな偉そうなことを言うのはさすがに怖くて少し声が震えた。でもはったりは最後まで続けないと意味がない。絞り出すように最後まで、言う。
「・・・陛下は、いわばわたしの共犯者。良くするのも悪くするのも陛下次第だから。」
アレクセイ陛下は一瞬驚いた顔をした。そのあと破顔して「もちろん」と、わたしを抱きしめた。
何が気に入ったのか知らないけど、頬ずりせんばかりの勢いだ。抱き上げてくるくるとわたしごと回る。欲に濡れた瞳が、妖しく光った。
「君は私だけのもの。大事な共犯者。満足してもらえるよう、これから君をたっぷり可愛がってあげるからね。」
0
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
転生お姫様の困ったお家事情
meimei
恋愛
前世は地球の日本国、念願の大学に入れてとても充実した日を送っていたのに、目が覚めたら
異世界のお姫様に転生していたみたい…。
しかも……この世界、 近親婚当たり前。
え!成人は15歳なの!?私あと数日で成人じゃない?!姫に生まれたら兄弟に嫁ぐ事が慣習ってなに?!
主人公の姫 ララマリーアが兄弟達に囲い込まれているのに奮闘する話です。
男女比率がおかしい世界
男100人生まれたら女が1人生まれるくらいの
比率です。
作者の妄想による、想像の産物です。
登場する人物、物、食べ物、全ての物が
フィクションであり、作者のご都合主義なので
宜しくお願い致します。
Hなシーンなどには*Rをつけます。
苦手な方は回避してくださいm(_ _)m
エールありがとうございます!!
励みになります(*^^*)
私の愛する夫たちへ
エトカ
恋愛
日高真希(ひだかまき)は、両親の墓参りの帰りに見知らぬ世界に迷い込んでしまう。そこは女児ばかりが命を落とす病が蔓延する世界だった。そのため男女の比率は崩壊し、生き残った女性たちは複数の夫を持たねばならなかった。真希は一妻多夫制度に戸惑いを隠せない。そんな彼女が男たちに愛され、幸せになっていく物語。
*Rシーンは予告なく入ります。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる