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本編
23 月に叢雲、花に風5 【side アレクセイ】
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なぜいまさら婚約破棄なぞしなきゃならんのだ、とにかく理由を説明しろ、とイヴァンがうるさく迫るせいで、わざわざ説明する羽目になってしまった。
「・・・で、お前は本当にそれで円満に解決すると、そう思っているんだよな?」
呆れたような顔でイヴァンが念押しした。
「一応考えた中では最善なはずだよ。というか、他の選択肢が考え付かない。」
私が考えた計画は、「アナスタシア嬢を側妃として私が娶り、裏でセイとルーが彼女を共有する」というものだった。私が娶るのは、2人のどちらかに渡すと独占したがると考えたからだ。
大神官を姻戚にするのは政治的に問題があるが、寵愛のない側妃として子を為さなければ抑えはきくだろう。
あとは、言いたくないけど、彼女の身体を開くことが必要だ。「王家へ嫁ぐには純潔が必須」という古い考えを持っているセイのこと、このままだと決して手を出さないのは目に見えている。
私がアナスタシア嬢と契ってしまえば、こういっちゃなんだけど、後ろめたさなくセイは彼女と愛し合えるってわけだ。魂だけ呼ばれた彼女には申し訳ないけれど、協力してもらわなくてはいけない。
「まあ、やるだけやってみな。」と投げやりな同意を受けて、粛々と計画を実行に移す。
「自分のいないところで密会されるのは嫌だ!」とごねるルーを説き伏せ、なんとかシア嬢と2人きりで会えるよう手配した。
ちなみに「アナスタシア嬢だと紛らわしいので、私もシアと呼びたい」と言ったら、ものすごーく嫌な顔をされた。まったく本当に心が狭い。
古くから私に仕えており気心が知れた女官を選び、シア嬢を連れてきてもらう。
ドアを閉めると未婚の男女が密室状態になるので嫌な顔をしたが、気にしないことにした。だってこれから人に言えないようなことをしようとしているからね。防音はしっかりされているから、結界は不要だろう。
部屋へ入ってきた彼女は、相変わらず美しかった。光の加減で金色に輝く瞳は、まるで妖精のようだ。落ち着いた色味のワンピースでややもすれば地味に見える装いなのに、逆に本人の美しさを引き立てている。
胸を強調しているわけではないけれど、無意識に豊かなそれに目が向いてしまうのは男の本能として仕方がないと思う。
密室で、彼女と2人きりという状況に、少なからず気持ちが騒ぐ。
「こちらへおいで。」と声をかけると、素直に私のそばに近寄ってきた。少し緊張しているのか、不安そうだ。造作はアナスタシア嬢以外の何物でもないが、表情やしぐさが違うだけで別人のように見える。警戒心が薄く、隙だらけだ。
何より、今まで感じていた鎧のような拒絶感がない。
魂の一部に別人が混じっただけで、こうまで無防備なのかと驚くほかない。眠っている間、あの壊れた魔術師に、何をされているのか知ったらどんな顔をするんだろう。
ぶしつけに見つめてしまったのか、彼女が不審な表情をした。懐柔するため隣に座らせる。自分で言うのもなんだが私の容姿は女性受けする。誘惑するようにじっと見つめると、照れるでもなく居心地が悪そうな顔をしていた。
魔力がないという世界の話は興味深く、もっと詳しく聞きたかった。魔力の量や質は、個人の資質に依存するという最大の問題がある。組織として国として安定的に活用するのはなかなか難しい。彼女が言う異なるエネルギー源について研究することで、我が国に益が生まれる可能性が高い。
いやいや、そんなことを考えている場合ではなかった。まじめにやらなくては。
抱き上げて、ベッドに連れていく。「君の純潔が、欲しいんだ。」と率直に伝えると、全力で拒絶された。
気持ちよくさせれば、させてくれるかなあと思って身体を一生懸命弄ってみた。いつもは私の寵を求めて進んで抱かれに来る女性ばかり相手にしていたから、無理やり弄るのはとっても興奮した。これはくせになりそうだ。
ふわり、と甘い香りが鼻をかすめる。
バニラみたいな、いや、もっと濃厚で淫靡な香り。アタマがおかしくなりそうだ。彼女の喘ぎ声を聞くと、何も考えられなくなる。自制心を総動員しなくては、持っていかれる。
これはクるなあ。このまま嫌がる彼女の腕を縛って強引に突っ込みたいなあと考えていたら、「自分の正義を人に押し付けんな!!」と、怒鳴られた。まさか王である私が怒鳴られるとは思わないからさすがにびっくりした。
あんなふわふわした女性から、こんなに怒られるなんて。私が彼女を激怒させたと思うと興奮する。油断したすきに、部屋の外に逃げられてしまった。
追いかけようと思ったけど、すぐにルーに捕獲されたようで厚い結界の中へ連れ込まれてしまった。宮廷内での私的な結界は規則違反だが、まあ大目にみよう。
部屋で唯一の明かりだったランプを消す。真っ暗になった寝室は、光も、音もない。無駄に広いベッドに1人、ごろりと寝転んだ。
しかし良いとか悪いとかじゃなくて、権力者が言うことが正義なんだけど。異世界からの姫君には通じなかったらしい。
困ったなあ、うまくいくと思ったのに。
「・・・で、お前は本当にそれで円満に解決すると、そう思っているんだよな?」
呆れたような顔でイヴァンが念押しした。
「一応考えた中では最善なはずだよ。というか、他の選択肢が考え付かない。」
私が考えた計画は、「アナスタシア嬢を側妃として私が娶り、裏でセイとルーが彼女を共有する」というものだった。私が娶るのは、2人のどちらかに渡すと独占したがると考えたからだ。
大神官を姻戚にするのは政治的に問題があるが、寵愛のない側妃として子を為さなければ抑えはきくだろう。
あとは、言いたくないけど、彼女の身体を開くことが必要だ。「王家へ嫁ぐには純潔が必須」という古い考えを持っているセイのこと、このままだと決して手を出さないのは目に見えている。
私がアナスタシア嬢と契ってしまえば、こういっちゃなんだけど、後ろめたさなくセイは彼女と愛し合えるってわけだ。魂だけ呼ばれた彼女には申し訳ないけれど、協力してもらわなくてはいけない。
「まあ、やるだけやってみな。」と投げやりな同意を受けて、粛々と計画を実行に移す。
「自分のいないところで密会されるのは嫌だ!」とごねるルーを説き伏せ、なんとかシア嬢と2人きりで会えるよう手配した。
ちなみに「アナスタシア嬢だと紛らわしいので、私もシアと呼びたい」と言ったら、ものすごーく嫌な顔をされた。まったく本当に心が狭い。
古くから私に仕えており気心が知れた女官を選び、シア嬢を連れてきてもらう。
ドアを閉めると未婚の男女が密室状態になるので嫌な顔をしたが、気にしないことにした。だってこれから人に言えないようなことをしようとしているからね。防音はしっかりされているから、結界は不要だろう。
部屋へ入ってきた彼女は、相変わらず美しかった。光の加減で金色に輝く瞳は、まるで妖精のようだ。落ち着いた色味のワンピースでややもすれば地味に見える装いなのに、逆に本人の美しさを引き立てている。
胸を強調しているわけではないけれど、無意識に豊かなそれに目が向いてしまうのは男の本能として仕方がないと思う。
密室で、彼女と2人きりという状況に、少なからず気持ちが騒ぐ。
「こちらへおいで。」と声をかけると、素直に私のそばに近寄ってきた。少し緊張しているのか、不安そうだ。造作はアナスタシア嬢以外の何物でもないが、表情やしぐさが違うだけで別人のように見える。警戒心が薄く、隙だらけだ。
何より、今まで感じていた鎧のような拒絶感がない。
魂の一部に別人が混じっただけで、こうまで無防備なのかと驚くほかない。眠っている間、あの壊れた魔術師に、何をされているのか知ったらどんな顔をするんだろう。
ぶしつけに見つめてしまったのか、彼女が不審な表情をした。懐柔するため隣に座らせる。自分で言うのもなんだが私の容姿は女性受けする。誘惑するようにじっと見つめると、照れるでもなく居心地が悪そうな顔をしていた。
魔力がないという世界の話は興味深く、もっと詳しく聞きたかった。魔力の量や質は、個人の資質に依存するという最大の問題がある。組織として国として安定的に活用するのはなかなか難しい。彼女が言う異なるエネルギー源について研究することで、我が国に益が生まれる可能性が高い。
いやいや、そんなことを考えている場合ではなかった。まじめにやらなくては。
抱き上げて、ベッドに連れていく。「君の純潔が、欲しいんだ。」と率直に伝えると、全力で拒絶された。
気持ちよくさせれば、させてくれるかなあと思って身体を一生懸命弄ってみた。いつもは私の寵を求めて進んで抱かれに来る女性ばかり相手にしていたから、無理やり弄るのはとっても興奮した。これはくせになりそうだ。
ふわり、と甘い香りが鼻をかすめる。
バニラみたいな、いや、もっと濃厚で淫靡な香り。アタマがおかしくなりそうだ。彼女の喘ぎ声を聞くと、何も考えられなくなる。自制心を総動員しなくては、持っていかれる。
これはクるなあ。このまま嫌がる彼女の腕を縛って強引に突っ込みたいなあと考えていたら、「自分の正義を人に押し付けんな!!」と、怒鳴られた。まさか王である私が怒鳴られるとは思わないからさすがにびっくりした。
あんなふわふわした女性から、こんなに怒られるなんて。私が彼女を激怒させたと思うと興奮する。油断したすきに、部屋の外に逃げられてしまった。
追いかけようと思ったけど、すぐにルーに捕獲されたようで厚い結界の中へ連れ込まれてしまった。宮廷内での私的な結界は規則違反だが、まあ大目にみよう。
部屋で唯一の明かりだったランプを消す。真っ暗になった寝室は、光も、音もない。無駄に広いベッドに1人、ごろりと寝転んだ。
しかし良いとか悪いとかじゃなくて、権力者が言うことが正義なんだけど。異世界からの姫君には通じなかったらしい。
困ったなあ、うまくいくと思ったのに。
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