19 / 40
19 安兵衛殿
しおりを挟む
「親方、いかがでしょうか?」
「安兵衛だ。あんたはウチのもんじゃあねえ。親方なんて呼ぶ必要はねえ」
俺と金堀衆の親方、安兵衛さんは早速、俺の懸案である取水口付近、5kmに渡る岩盤の状態を実際に現地で確認してもらっている。
「これは、花崗岩だな。確かに、あんたら素人ではどうにもなんめえな。でもな、俺達はこんな岩を相手にする商売だ。岩の気持ちは十分に分かっている。安心しな、悪いようにはしねえからよ」
安兵衛さんは不愛想な表情を見せるが、語り口は穏やかで、出てくる言葉は、暗中模索の俺の心に明るい光を示してくれた。
「ありがとうございます。ものすごく心強いです。まったく俺達は工事の事が素人なので……
「おいおい、気にすんな。その為に俺がやってやるって言ってんだよ。あんたの心意気に面白いと思ったから、やるって言ってるだけだ。それにな、雅の頼み事だ。とても、無下には出来ねえわな」
俺は安兵衛さんの言葉に救われた。
「安兵衛さん、15kmの水路を作るとなったらどのくらいかかりますか?」
「ああ、道中、見ながら来たんだが、上流の5kmを堀割り通すところが一番厄介だろうな。後は、あんたらだけでもなんとかなるだろうよ。何人くらい人工《にんく》はかけられそうなんだい?」
「大体、200人くらいです」
「200人なあ、下の方は粘土っぽい土だったからな、まあ、それなりに時間はかかるだろうが、人工は掛けたらかけただけ時間は縮まるよ。200人を10kmに割り振れば、俺の掘割と同じくらいに出来るんじゃあねえかな。俺は、この岩盤程度なら半年でやっつけてみせるぜ」
不愛想な安兵衛さんが少し口角を上げて、笑ったような気がした。
「安兵衛だ。あんたはウチのもんじゃあねえ。親方なんて呼ぶ必要はねえ」
俺と金堀衆の親方、安兵衛さんは早速、俺の懸案である取水口付近、5kmに渡る岩盤の状態を実際に現地で確認してもらっている。
「これは、花崗岩だな。確かに、あんたら素人ではどうにもなんめえな。でもな、俺達はこんな岩を相手にする商売だ。岩の気持ちは十分に分かっている。安心しな、悪いようにはしねえからよ」
安兵衛さんは不愛想な表情を見せるが、語り口は穏やかで、出てくる言葉は、暗中模索の俺の心に明るい光を示してくれた。
「ありがとうございます。ものすごく心強いです。まったく俺達は工事の事が素人なので……
「おいおい、気にすんな。その為に俺がやってやるって言ってんだよ。あんたの心意気に面白いと思ったから、やるって言ってるだけだ。それにな、雅の頼み事だ。とても、無下には出来ねえわな」
俺は安兵衛さんの言葉に救われた。
「安兵衛さん、15kmの水路を作るとなったらどのくらいかかりますか?」
「ああ、道中、見ながら来たんだが、上流の5kmを堀割り通すところが一番厄介だろうな。後は、あんたらだけでもなんとかなるだろうよ。何人くらい人工《にんく》はかけられそうなんだい?」
「大体、200人くらいです」
「200人なあ、下の方は粘土っぽい土だったからな、まあ、それなりに時間はかかるだろうが、人工は掛けたらかけただけ時間は縮まるよ。200人を10kmに割り振れば、俺の掘割と同じくらいに出来るんじゃあねえかな。俺は、この岩盤程度なら半年でやっつけてみせるぜ」
不愛想な安兵衛さんが少し口角を上げて、笑ったような気がした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す
矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。
はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき……
メイドと主の織りなす官能の世界です。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
【18禁】「胡瓜と美僧と未亡人」 ~古典とエロの禁断のコラボ~
糺ノ杜 胡瓜堂
歴史・時代
古典×エロ小説という無謀な試み。
「耳嚢」や「甲子夜話(かっしやわ)」「兎園小説」等、江戸時代の随筆をご紹介している連載中のエッセイ「雲母虫漫筆」
実は江戸時代に書かれた書物を読んでいると、面白いとは思いながら一般向けの方ではちょっと書けないような18禁ネタや、エロくはないけれど色々と妄想が膨らむ話などに出会うことがあります。
そんな面白い江戸時代のストーリーをエロ小説風に翻案してみました。
今回は、貞享四(1687)年開板の著者不詳の怪談本「奇異雑談集」(きいぞうだんしゅう)の中に収録されている、
「糺の森の里、胡瓜堂由来の事」
・・・というお話。
この貞享四年という年は、あの教科書でも有名な五代将軍・徳川綱吉の「生類憐みの令」が発布された年でもあります。
令和の時代を生きている我々も「怪談」や「妖怪」は大好きですが、江戸時代には空前の「怪談ブーム」が起こりました。
この「奇異雑談集」は、それまで伝承的に伝えられていた怪談話を集めて編纂した内容で、仏教的価値観がベースの因果応報を説くお説教的な話から、まさに「怪談」というような怪奇的な話までその内容はバラエティに富んでいます。
その中でも、この「糺の森の里、胡瓜堂由来の事」というお話はストーリー的には、色欲に囚われた女性が大蛇となる、というシンプルなものですが、個人的には「未亡人が僧侶を誘惑する」という部分にそそられるものがあります・・・・あくまで個人的にはですが(原話はちっともエロくないです)
激しく余談になりますが、私のペンネームの「糺ノ杜 胡瓜堂」も、このお話から拝借しています。
三話構成の短編です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる