佚語を生きる! -いつがたりをいきる-  竜の一族 中巻 偽りの残滓編 

Shigeru_Kimoto

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伍場 三

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 暖かい日が続いている。時折、暑いという表現がピッタリの日が続くこともある。
霞たちが吉右衛門の屋敷に来てから1か月が過ぎていた。

今夜は吉右衛門が何やら用事があると弁慶を伴って夕餉のあと早々に居なくなった。そして、吉右衛門は出しなに、

「ああ、そうだ。今夜、二人で精退治に行ってくれな。今夜までだったんだ忘れてたよ」

そう言って居なくなった。

二人とは、霞と九郎である。

霞は静華から精の退治についてひと月かけて教わっている。九郎も吉右衛門や弁慶の指南で剣術修行をしている。二人にとっての始めての実戦だ。

「ねぇ、九郎。あんた、一か月前はただのお荷物だったけど少しは出来るようになったんでしょうね?」

弱いものに厳しい霞が明らかに不機嫌な態度を隠すことなく見せている。

「はぁ。そうおっしゃられると、あれなのですが……」

なんとも頼りない返事をする九郎に一つため息をついて

「……行くよ」

きつめの視線を向けたまま霞は九郎を伴って館を出た。
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